黒バス【名前有り固定夢主】
※夢主の名前有ります。
※どんなものでも食べれます!という方のみどうぞお進みください。
天帝で暴虐無人で何れ天下なんかを治めるような。
そんな赤司征十郎の姉たるわたし――赤司紅緒は今現在。
恋人である笠松幸男の前で正座をしている。
何故こんなことになったのだろうか?
幸男さんのことを下から真っ直ぐ見上げられるこの体勢に関してはまったく困らないが、それすらも彼に怒りの感情を抱かせている原因になっている気がするんだよなぁ。
「あの、幸男さん……、わたし何かしましたか?」
お伺いを立てるかのようにビクビクとしながらそう言えば、幸男さんはその眉間に深く深く、それはもう、刻まれ過ぎていっそそういう顏なのでは? と思いたくなるほどには深く皺を刻んだ。
「あの、」
「お前は、何も分かってねぇな」
「え、何がですか?」
幸男さんのお家の部屋に来て数十分。ようやく幸男さんは口を開いた。
その間、わたしは正座をしていたのでめちゃくちゃ足が痺れているが、そんなことなど気にならないくらい嬉しかった。
こう言ってはなんだが、わたしは幸男さんにべた惚れだ。それはもう、弟の用語で言うなら『幸男さんが居ない世界なんて滅ぼす』レベルだろう。征ちゃんは未だに厨二拗らせているからね。まあ、それも青春ってものだろう。
いや、今は征ちゃんのことは良いとして。
「何が分かってないんですか? わたし、幸男さんに嫌われるようなこと何かしました?」
自分で言っておいてなんだが、幸男さんに嫌われたら死ぬしかない。死んでも付き纏う気しかないが。
どんなに嫌われても、憎まれても、わたしは幸男さんの傍に居ない自分というのを想像できないから。
「お前は、馬鹿か」
「え?」
「今日の、一年の」
「……? ああ、アレはだって、選手生命に関わることじゃないですか」
幸男さんに言われてわたしは思い出す。
たまたま(というか時間の空いた時のルーティンだが)海常高校に足を延ばした際に、見付けたのだ。
海常高校一年のマネージャーが同じく海常高校の制服を着た男子生徒に囲まれているところを。
それは一見すれば甘酸っぱい場面だったのかも知れない。
でも、明らかにマネージャーの女の子は泣きそうだった。
ただでさえマネージャーという立場は何故だか舐められやすい。
どう見ても大人しい女の子です! でいう子が務まるかと言われると、少しだけ言いよどむくらいには。
けれどもバスケに関してあの子は確か異様に熱を持っていた気がした。
いつもどのマネージャーよりも早く来ては仕事をこなしているような子だ。
まあ、その点は少しだけ協調性にかけるかも? なんて思わないわけでもないけれども。
それでも彼女はバスケが好きで、海常高校バスケ部のマネージャーになった子だ。
それを知っているわたしが、そこに首を突っ込まないわけがなかったんだよなぁ。
「そんなわけで、海常の三年生をギッタンバッコンにしちゃったのはわたしですけどー」
でも、仕方なくないですか?
「泣いてる女の子を見過ごすなんてわたしには出来ません」
「なら! お前が殴られる理由もねぇだろ!」
「ああ、だって、」
「だっても何もねぇ!」
「……幸男さん」
「お前、俺がどれだけ心配したと……っ」
眉を八の字にして幸男さんを見上げれば、幸男さんは苦しそうな顔をしながらわたしの頬に手を宛がった。
少しだけピリリとした熱が走る。そこには男子生徒に一発だけ喰らった痣がある。
「大丈夫ですよ。傷は何れ治ります」
「そういうことじゃねぇ……分かってんだろ」
「うーん。わたしね、嬉しいんですよ」
「何がだよ、人をこんなに心配させておきながら」
「わたしを心配してくれる人が居るのって、すごくすごく嬉しいですね」
「……お前、まじで……」
ふふ、と笑えって見せれば、幸男さんは凄く難しい顔をしながらわたしの頭をガシガシと撫でる。
「わー! やめてくださいよー!」
「まったくそう思ってないクセに、んなこと言ってんな」
「だって、幸男さんに触られるの、大好きなんですもん」
「……ホント、お前変な奴だよな」
「幸男さん限定です」
「そんな限定は要らねぇ」
ああ、でも。と幸男さんは呟いた。
「ここは、俺のだからな」
そう言って目線を合わせると、わたしの左手の薬指をソッと撫でる。
「ゆ、幸男さんがプロポーズしてくれたぁぁぁぁぁ」
「うるっせぇ!!」
こんなに人生幸せで良いのだろうかという程に、わたしは幸男さんと出逢ってから幸せだ。
幸男さんがどうかは、まったくもって分からないけれども。
少しでも同じ気持ちだといいな。そうだと嬉しいな。
「ナニ、にやけてんだよ」
「えへへ、なんででしょーか」
それはそうと幸男さん。
「正座、崩してもいいですか?」
「ああ、……いや、」
「どっちなんですか!?」
「お前がそうやって騒いでるの見るの、結構好きなんだよな」
涙目で叫べば、幸男さんは加虐的な発言をする。
そう言えばこの人、わりとサディスティックなんだよなぁ。なんの時とは言わないけれども。
「今度から俺を必ず呼ぶこと。俺が居なかったら他のやつに助けを求めること。いいな?」
「えー、でもそんなことして待ってたら何か重大な事件になっちゃたらどうするんですかー」
「……紅緒」
「っう。……努力します」
「努力だぁ?」
「うぅ、だってぇ……」
本格的に泣きそうだ。
だってわたしにはあんなどう頑張っても『助けを求めてます』という顏をする子を見放すことはどうしたって出来ないのだ。
どうして怒られているのか。どうして心配されているのかくらいはさすがのわたしでも分かるが。
「確約しねぇなら、……その薬指。今すぐ解約するけどな」
「そ、それは酷いです……! 婚約してすぐ解消された気分!」
「そうなりたくなけりゃあ、助けを呼ぶことを覚えろ」
「……はぁい」
「返事は?」
「はい!」
よし、とそこでようやくいつもの幸男さんの眼差しが戻ってきた。
厳しいけどでも優しくて、少し頑固で心配性で。でもそんなところに惚れたんだよなぁ。
(先に惚れた方が負けっていうけど、あれはリアルにそうだわ)
だって、このわたしが。
傍若無人を地で行く女が、こんな年下の男の子に良いように手のひらの上で転がされているのだもの。
「恋って怖い」
ボソッと呟いた言葉は、幸か不幸か幸男さんの耳には入らなかったらしい。きょとりと首を傾げて「何か言ったか?」と問い返された。
「幸男さんが好きですよー、って言いました」
「……そぉかよ」
「ホント幸男さん……可愛い!好き!」
「可愛いなんて男に言うもんじゃねぇ!」
食われても知らねぇぞ!
そう叫んだ幸男さんに再度「可愛い!」と叫んだら、本当に襲われた。
※どんなものでも食べれます!という方のみどうぞお進みください。
天帝で暴虐無人で何れ天下なんかを治めるような。
そんな赤司征十郎の姉たるわたし――赤司紅緒は今現在。
恋人である笠松幸男の前で正座をしている。
何故こんなことになったのだろうか?
幸男さんのことを下から真っ直ぐ見上げられるこの体勢に関してはまったく困らないが、それすらも彼に怒りの感情を抱かせている原因になっている気がするんだよなぁ。
「あの、幸男さん……、わたし何かしましたか?」
お伺いを立てるかのようにビクビクとしながらそう言えば、幸男さんはその眉間に深く深く、それはもう、刻まれ過ぎていっそそういう顏なのでは? と思いたくなるほどには深く皺を刻んだ。
「あの、」
「お前は、何も分かってねぇな」
「え、何がですか?」
幸男さんのお家の部屋に来て数十分。ようやく幸男さんは口を開いた。
その間、わたしは正座をしていたのでめちゃくちゃ足が痺れているが、そんなことなど気にならないくらい嬉しかった。
こう言ってはなんだが、わたしは幸男さんにべた惚れだ。それはもう、弟の用語で言うなら『幸男さんが居ない世界なんて滅ぼす』レベルだろう。征ちゃんは未だに厨二拗らせているからね。まあ、それも青春ってものだろう。
いや、今は征ちゃんのことは良いとして。
「何が分かってないんですか? わたし、幸男さんに嫌われるようなこと何かしました?」
自分で言っておいてなんだが、幸男さんに嫌われたら死ぬしかない。死んでも付き纏う気しかないが。
どんなに嫌われても、憎まれても、わたしは幸男さんの傍に居ない自分というのを想像できないから。
「お前は、馬鹿か」
「え?」
「今日の、一年の」
「……? ああ、アレはだって、選手生命に関わることじゃないですか」
幸男さんに言われてわたしは思い出す。
たまたま(というか時間の空いた時のルーティンだが)海常高校に足を延ばした際に、見付けたのだ。
海常高校一年のマネージャーが同じく海常高校の制服を着た男子生徒に囲まれているところを。
それは一見すれば甘酸っぱい場面だったのかも知れない。
でも、明らかにマネージャーの女の子は泣きそうだった。
ただでさえマネージャーという立場は何故だか舐められやすい。
どう見ても大人しい女の子です! でいう子が務まるかと言われると、少しだけ言いよどむくらいには。
けれどもバスケに関してあの子は確か異様に熱を持っていた気がした。
いつもどのマネージャーよりも早く来ては仕事をこなしているような子だ。
まあ、その点は少しだけ協調性にかけるかも? なんて思わないわけでもないけれども。
それでも彼女はバスケが好きで、海常高校バスケ部のマネージャーになった子だ。
それを知っているわたしが、そこに首を突っ込まないわけがなかったんだよなぁ。
「そんなわけで、海常の三年生をギッタンバッコンにしちゃったのはわたしですけどー」
でも、仕方なくないですか?
「泣いてる女の子を見過ごすなんてわたしには出来ません」
「なら! お前が殴られる理由もねぇだろ!」
「ああ、だって、」
「だっても何もねぇ!」
「……幸男さん」
「お前、俺がどれだけ心配したと……っ」
眉を八の字にして幸男さんを見上げれば、幸男さんは苦しそうな顔をしながらわたしの頬に手を宛がった。
少しだけピリリとした熱が走る。そこには男子生徒に一発だけ喰らった痣がある。
「大丈夫ですよ。傷は何れ治ります」
「そういうことじゃねぇ……分かってんだろ」
「うーん。わたしね、嬉しいんですよ」
「何がだよ、人をこんなに心配させておきながら」
「わたしを心配してくれる人が居るのって、すごくすごく嬉しいですね」
「……お前、まじで……」
ふふ、と笑えって見せれば、幸男さんは凄く難しい顔をしながらわたしの頭をガシガシと撫でる。
「わー! やめてくださいよー!」
「まったくそう思ってないクセに、んなこと言ってんな」
「だって、幸男さんに触られるの、大好きなんですもん」
「……ホント、お前変な奴だよな」
「幸男さん限定です」
「そんな限定は要らねぇ」
ああ、でも。と幸男さんは呟いた。
「ここは、俺のだからな」
そう言って目線を合わせると、わたしの左手の薬指をソッと撫でる。
「ゆ、幸男さんがプロポーズしてくれたぁぁぁぁぁ」
「うるっせぇ!!」
こんなに人生幸せで良いのだろうかという程に、わたしは幸男さんと出逢ってから幸せだ。
幸男さんがどうかは、まったくもって分からないけれども。
少しでも同じ気持ちだといいな。そうだと嬉しいな。
「ナニ、にやけてんだよ」
「えへへ、なんででしょーか」
それはそうと幸男さん。
「正座、崩してもいいですか?」
「ああ、……いや、」
「どっちなんですか!?」
「お前がそうやって騒いでるの見るの、結構好きなんだよな」
涙目で叫べば、幸男さんは加虐的な発言をする。
そう言えばこの人、わりとサディスティックなんだよなぁ。なんの時とは言わないけれども。
「今度から俺を必ず呼ぶこと。俺が居なかったら他のやつに助けを求めること。いいな?」
「えー、でもそんなことして待ってたら何か重大な事件になっちゃたらどうするんですかー」
「……紅緒」
「っう。……努力します」
「努力だぁ?」
「うぅ、だってぇ……」
本格的に泣きそうだ。
だってわたしにはあんなどう頑張っても『助けを求めてます』という顏をする子を見放すことはどうしたって出来ないのだ。
どうして怒られているのか。どうして心配されているのかくらいはさすがのわたしでも分かるが。
「確約しねぇなら、……その薬指。今すぐ解約するけどな」
「そ、それは酷いです……! 婚約してすぐ解消された気分!」
「そうなりたくなけりゃあ、助けを呼ぶことを覚えろ」
「……はぁい」
「返事は?」
「はい!」
よし、とそこでようやくいつもの幸男さんの眼差しが戻ってきた。
厳しいけどでも優しくて、少し頑固で心配性で。でもそんなところに惚れたんだよなぁ。
(先に惚れた方が負けっていうけど、あれはリアルにそうだわ)
だって、このわたしが。
傍若無人を地で行く女が、こんな年下の男の子に良いように手のひらの上で転がされているのだもの。
「恋って怖い」
ボソッと呟いた言葉は、幸か不幸か幸男さんの耳には入らなかったらしい。きょとりと首を傾げて「何か言ったか?」と問い返された。
「幸男さんが好きですよー、って言いました」
「……そぉかよ」
「ホント幸男さん……可愛い!好き!」
「可愛いなんて男に言うもんじゃねぇ!」
食われても知らねぇぞ!
そう叫んだ幸男さんに再度「可愛い!」と叫んだら、本当に襲われた。
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