不幸体質と霊感少女

「涼也さん。きっとこれは運命なんだって思いませんか?」

「あ? いきなりなんだ」

「ふふ。内緒です」

「いきなり本当になんなんだ……」

でもねぇ、思うんですよ。これが運命だと。
終わりのない私たちが迎える運命なのだと。

紅羽。神嫁の私と呪いを取り込んだ涼也さんの間に生まれた愛の結晶。
どうか彼女の行く道が幸せなものでありますように。

「願いますよ、母親ですからね」

ふふ、ともう一度笑って。私は涼也さんに抱き着いた。
この人の傍は心地好い。ずっと一緒に居られたらいいのにな。ずっと一緒に居たいのにな。まあ、居るんですけど。

「なんだなんだ、いきなり」

困ったように笑う涼也さんは、昔ほど怒らなくなった。丸くなったというより、私の奇行に慣れ切ったというべきなのかな。
それはそれで面白くないような、愛を感じるような。
うーん、と唸って。
でも涼也さんだからすべて許せちゃうんですよねぇ、と頷いた。

「大方、ロクなこと考えてねぇだろ」

「え、どうして分かったんですか?」

「お前と何年一緒に居ると思ってるんだ」

「愛ですねぇ……」

「はいはい。それで、そのロクでもない考えは紅羽も関わることなのか」

「いやまあ、それは紅羽次第でしょうねぇ」

「珍しく歯切れが悪いな」

「これでもね、考えているんです。紅羽が生まれてから今まで、ずっと」

考えて、考えて、そうして未だ答えは出ない。
きっと涼也さんが聞いたら怒るようなことなんでしょうねぇ。
紅羽にももしかしたら怒られてしまうかも知れない。
でも、私は紅羽の幸せを願ってあげたいんです。

この選択肢が吉と出るか凶と出るかは分からないけれども。
でもなぁ。

(涼也さんと離れるの、少しだけ寂しいなぁ)

どこまで行っても、私の世界の中心は涼也さんだから。
ちょっとだけ寂しい。

それを埋めるように、私は涼也さんの肩口に顔を埋めた。
涼也さんは何も知らないのに、何も言わずに私を抱き寄せてくれた。

ああ、もう。こういう思い出があれば充分なのかも知れない。
こんなにも幸せなら、本当に――終わらせてもいいのかも知れない。
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