不幸体質と霊感少女
あるところに神様に愛された少女が居ました。
その少女は死後、その神様に嫁ぐ約束を交わしておりましたが、なんやかんやあってとある男性と結ばれました。
「愛の力って偉大ですよねぇ」
「急になんですか?紅羽」
はい、あーん。とチョコレートケーキホイップマシマシが乗ったフォークを全力で嫌がる父親の口にねじ込む母親を見ながらそんな言葉をついうっかり紡いでいた。
「……別に。なんでもないんですけどね」
「それはそれは。――恋でもしちゃいましたか」
「ぶっ!ごほっ、ゴホッ、おっまえ!そんな!心臓に悪いこと言うな!?」
「えー、でもでも。一人娘に浮いた話ひとつないのもどうかと思いますよ?」
「……別に、いいだろ。どうせ俺達はこのままでも……」
「そんなこと言ってぇ、紅羽が嫁いじゃうのが悲しいんですね。可哀想な涼也さん。そんな涼也さんに若葉さんが人肌脱いで……」
「娘の前でナニ言ってんのお前!?」
「あ、いだッ!」
拳骨が母親の頭の上に落ちた。「DVです!」と訴えている母親は、けれども楽しそうだ。
この光景を見るのも何度目か。いや、何十回目か。
わたし達は死なない。死ねない。
正確に言うと、いつかは死ねるけれども、比較的霊的なモノ。いっそ神に近しいモノ達と言っても過言ではない。
特に母親は元神嫁だ。その影響を色濃く受けている。
父親は凄く強い霊的な……いっそ邪神レベルのモノに何故か取り憑かれているし。
そんな二人の間に生まれたわたしも、もれなく、人間を捨てた人生を送っているわけだが。
「あ、そう言えば。お母さん。この前空海がそのうちお墓参りに来てねって言ってたよ」
「あー……凛空と海華、何回忌だったっけな」
「そんな時期か。確か三回忌だな」
考えるような母親にすかさず応える父親。
息ピッタリである。
おじさんとおばさんが居なくなってから、そんなに経っていないのか。と空海の若い姿を見たら納得した。
「化けて出られても困りますから、近々神域から出てお参りしてあげますかねぇ」
「相変わらず素直じゃねぇなァ、お前は」
「知ってますか涼也さん」
「なんか嫌な予感しかないが、なんだ?」
「私は涼也さんと紅羽しか興味がありません」
「知ってたけど、くだらないことにシリアスムード出すなアホ」
二人のじゃれ合いを見ながら、少しだけ脳裏にちらついたのはただ一人。
不幸体質なくせに笑顔は幸福オーラしか出していない、男性。
「広也さん……」
自分で言っておいて驚いた。
どうして。どうしてあの人の名前が、零れ出たのだろうか。
願ったって。祈ったって。
「馬鹿だなァ……」
――どうせ叶わぬ、夢なのに。
その少女は死後、その神様に嫁ぐ約束を交わしておりましたが、なんやかんやあってとある男性と結ばれました。
「愛の力って偉大ですよねぇ」
「急になんですか?紅羽」
はい、あーん。とチョコレートケーキホイップマシマシが乗ったフォークを全力で嫌がる父親の口にねじ込む母親を見ながらそんな言葉をついうっかり紡いでいた。
「……別に。なんでもないんですけどね」
「それはそれは。――恋でもしちゃいましたか」
「ぶっ!ごほっ、ゴホッ、おっまえ!そんな!心臓に悪いこと言うな!?」
「えー、でもでも。一人娘に浮いた話ひとつないのもどうかと思いますよ?」
「……別に、いいだろ。どうせ俺達はこのままでも……」
「そんなこと言ってぇ、紅羽が嫁いじゃうのが悲しいんですね。可哀想な涼也さん。そんな涼也さんに若葉さんが人肌脱いで……」
「娘の前でナニ言ってんのお前!?」
「あ、いだッ!」
拳骨が母親の頭の上に落ちた。「DVです!」と訴えている母親は、けれども楽しそうだ。
この光景を見るのも何度目か。いや、何十回目か。
わたし達は死なない。死ねない。
正確に言うと、いつかは死ねるけれども、比較的霊的なモノ。いっそ神に近しいモノ達と言っても過言ではない。
特に母親は元神嫁だ。その影響を色濃く受けている。
父親は凄く強い霊的な……いっそ邪神レベルのモノに何故か取り憑かれているし。
そんな二人の間に生まれたわたしも、もれなく、人間を捨てた人生を送っているわけだが。
「あ、そう言えば。お母さん。この前空海がそのうちお墓参りに来てねって言ってたよ」
「あー……凛空と海華、何回忌だったっけな」
「そんな時期か。確か三回忌だな」
考えるような母親にすかさず応える父親。
息ピッタリである。
おじさんとおばさんが居なくなってから、そんなに経っていないのか。と空海の若い姿を見たら納得した。
「化けて出られても困りますから、近々神域から出てお参りしてあげますかねぇ」
「相変わらず素直じゃねぇなァ、お前は」
「知ってますか涼也さん」
「なんか嫌な予感しかないが、なんだ?」
「私は涼也さんと紅羽しか興味がありません」
「知ってたけど、くだらないことにシリアスムード出すなアホ」
二人のじゃれ合いを見ながら、少しだけ脳裏にちらついたのはただ一人。
不幸体質なくせに笑顔は幸福オーラしか出していない、男性。
「広也さん……」
自分で言っておいて驚いた。
どうして。どうしてあの人の名前が、零れ出たのだろうか。
願ったって。祈ったって。
「馬鹿だなァ……」
――どうせ叶わぬ、夢なのに。