一周年リクエスト企画(過去サイト)

>>『行』様より


◆◇◆


幸せの青い鳥を探した。
探せと言われたからだ。
妹のミチルと共に色々な夢を渡り歩いた。
一人ではきっと根を上げていたかも知れない。
けれどミチルが居たから踏ん張れた。
お兄ちゃんとして頑張れた。

そうして見付けた青い鳥は皮肉なのか何なのか。
我が家の鳥籠の中に居た。

「本当に。人は身近な事には気付きにくい生き物なのだと身に染みたよ」

「そうですね兄様」

「俺達も身近な幸せには出来るだけ気付ける人間になりたいな」

「そうですね兄様」

「ん?どうしたミチル?そんな気のない返事ばかりで。反抗期か?」

「いや、反抗したくなる気持ちも分かって欲しいのですが」

「どういう意味だミチル?」

「……兄様にこんなことを言うのはなんなのですが、スカートの中から出てください」

「ん?」

「いやそんな『何を言っているんだお前は』みたいな声を出されても困ります」

「良く分かったなミチル!兄さんはミチルの愛が嬉しいぞ!」

「愛なんてこれっぽっちも含んでません。そしてもぞもぞと動かないで下さい。妹に何か仕出かした兄なんて私は持ちたくありませんので」

「ハッハッハ!兄さんはミチルに対して兄さん以上の気持ちを持っているから大丈夫だ!」

「なんですかそれ。何にも大丈夫なことがないんですけど」

ミチルの呆れた声が頭上から降ってくる。
そんな声も変わらず可愛らしいぞミチル!
出来るなら今すぐ襲いたい程度にはムラッときた!

「兄様。声に出てます」

「おお、そうか!悪かった!」

「悪いと少しでも思っていらっしゃるならスカートの中から出て下さい。さもなくば兄様と言えどもぶっ飛ばしますよ」

「随分熱烈な愛情表現だな!大丈夫だ!俺はそんなミチルでも愛してるぞ!」

「貴方には言葉が通じないのですか。そうですか」

はあ、と悩まし気に溜め息を吐くミチル。
ああ、そんなミチルも可愛い。というかミチルの存在そのものが可愛い。
はあ、とチルチルもミチルとは違う熱を含んだ溜め息を吐き出す。
そんな熱を誤魔化すようにチルチルはミチルに話し掛けた。
もちろん当然のようにスカートの中に潜り込んだまま。
蹴り出されないのが全く不思議な程だ。
いや、そんな兄の態度が既に日常化しているせいだろいか。
ミチルの兄を見る眼差しは既に変質者を見る眼差しではあるが。

「青い鳥を探す為に夢を渡り歩いたな」

「そうですね。そのせいで兄様が変質者に成り果ててしまいましたが」

「幸せは身近にあった。それだけの話だった」

「とても良い話のように語ろうとしていますが、ミチルはちっとも幸せじゃありません。どちらかと言うと兄から堂々たるセクハラを受ける日々に不幸せを感じています」

「そうか!でも兄さんは幸せだ!」

「そうですか。全くこれっぽっちも意見が合いませんね」

もう面倒くさい。
そんな感情が込められたミチルの声をチルチルは敢えて無視をした。
そうしながらチルチルの白く滑らかな生足に抱きつ、

「いい加減にしろと言いましたよねこの変態兄様」

ける訳もなく。
いい加減兄の言動に限界が来たミチルがブチッと理性的な何かを契って、兄の身体の主に中心部分を蹴り上げた。
兄から変質的な視線で見られるようになってから習い始めた護身術は中々に役に立っている。
……出来ることなら役に立たない日が来て欲しいものだ。

「青い鳥は不幸を呼ぶ鳥だと思います」

兄様がこんな変態に成り果てた原因である青い鳥。
私の大切な家族を悪く言いたくはないが、それでも『青い鳥』が居なければこんな日常は送らなくても済んだ筈だ。

ゴロンゴロンと主に身体の中心部分を抑えながらのたうち回っている兄を見下ろしながら。
ミチルはなんだかやる瀬ないとばかりに本日幾度目かの溜め息を吐き出した。


【青い鳥は変態を運んできました】
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