二周年リクエスト企画(過去サイト)
>>『ともちゃん』様より
◆◇◆
「本当にともちゃんは可愛いなぁ」
「あはは、それはそれはどうもありがとうございます」
「あれ?本気にされてない?」
「そりゃあ、こんな平凡顔の女に対して可愛いなんて言われても冗談かお世辞にしか聞こえませんから」
「彼女を可愛いと思うのは普通のことでしょ」
「生憎お付き合いはハジメテなので解りかねます」
そう言ってそっぽを向いた可愛くて堪らない恋人。
でも俺は知っている。
彼女が照れていることも、可愛くないことを言ってしまったと後悔していることも。
そんな所も最高に可愛くて。
ああ、逸そ閉じ込めて二人きりで生きていきたいと願うくらいには愛している。
大体ともちゃんは平凡顔だと言うがそれは間違いだ。
肌理の細かい肌は透けるように白く、零れ落ちそうな程大きな黒い瞳はいつだって潤んでいるし。
ふっくらとした唇はいつも美味しそう桃色で、理性を保っていなければ今すぐにでも奪ってしまいたいと思う。
つまりはとても可愛いのだ。
では何故ともちゃんが自分を「普通」だと言うのか。
それはともちゃんを妬んだ女の醜い嫉妬から。
純粋であまり自分に自信がないタイプであったともちゃんはそんな女達の言葉を鵜呑みにしてしまった。
初めてその事を知った日は、どうしてやろうかとさえ思ったけれど。
良く良く考えれば、ともちゃんの容姿を褒める男の言葉を信じないということでもあって。
彼女を溺愛してるといっても過言ではない俺としては自動的に恋敵が消えていく現状は正に願ったり叶ったりな状況なのだ。
ともちゃんが自分の魅力に気付かず、俺の言葉も信じてくれないのはとても哀しいが。
そこは俺の溢れんばかりの愛情でカバーすればいいだけの話。
俺の言葉だけを信じて貰えるように日夜努力を重ねているというわけだ。
「あ、そう言えばともちゃん」
「なんですか?」
「今日ちょっと来るの遅かったよね?俺が迎えに行けなかったのも悪かったけど、さ」
「誰と、何してたの?」
出来るだけ優しい笑顔を心掛ける。
怖い印象なんてマイナスなイメージをともちゃんに焼き付けたくはないから。
ともちゃんはお昼ご飯のお弁当から視線を外して、少し視線を空にさ迷わせる。
「昼休み、は、普通に隣のクラスの子と話してましたよ」
「本当に?」
「はい。というか嘘つく理由もないでしょう」
「それはそうだけど、俺は君が大好きだから何かあったんじゃないかと、とてもとても心配なんです」
そう言い切れば「なんですか、それ」と、ともちゃんは目尻を下げる。
ああ、そんな顔を誰か俺以外も見たことがあるのだろうかと考えるだけで胃の辺りがもやつく。
出来るなら、出来る限り、ともちゃんの笑顔を他の誰かに見せたくはない。
いや、笑顔だけじゃなく、どんな顔だって。
彼女を鎖に繋いで誰の目にも触れさせたくはないと強く強く願うんだ。
まあ、そんな感情を彼女に見せる気はまだないからグッと堪えるけれど。
「大好きな恋人を心配して何か悪いのかな?」
だから軽い感じに見えるような言葉を吐く。
彼女は飲み込まれた感情に気付くことなく、「私の恋人は口が達者だから困ります」と困ったように笑って言った。
気付いた様子はない。
気付かなくていい。
まだ、『その時』ではないから。
優しい恋人を演じるよ。
君が俺に完全に心を許せるようになるまで。
俺を完璧に信頼するまで。
でも、
(そうなったら、もう我慢はしない)
沢山の君への愛が溢れて止まらないんだ。
だから、もしかしたら悲しませるかも知れないけれど。
そんなことさえ思えないくらい俺に依存させれば良いだけの話。
とりあえず、愛して止まない彼女との時間を削いだ隣のクラスの子とやらと話をしようか。
きっと、ともちゃんに気のある、俺にとっての脅威であろうから。
「ともちゃん」
「なんですかー?というか先輩も早くお昼ご飯食べちゃわないと。昼休み終わっちゃいますよ?」
「ともちゃんを見てるだけで俺の胃は満たされるから大丈夫」
「いや、何も大丈夫なことないですから。ほら、私のご飯少し分けてあげますから食べましょう?」
そう言って弁当の中身を一つ箸で摘まんで俺に差し出すともちゃん。
そんな可愛いことするなら襲うけどいい?
なんて反射的に言いそうになった。
言わなくて良かった。
まだキスまでしかしていないのに引かれたら俺は死ねる。
冗談でなく本気で。
先程まであった顔も知らない人間に対する敵対心はスッパリ抜けて。
これ何かのご褒美?俺今日死ぬんだろうかと思いながらともちゃんから差し出されたおかずを食べる。
今なら死んでもいい……!
「美味しいですか?実はそれ私が作ったおかずなんですよねー」
前言撤回。
今すぐにでも俺は死ねる。
ともちゃんの手作りのおかずを、しかもあーんして貰えるなんて今日が俺の命日か!
「先輩?もしかして不味かったですか?」
「いや、凄く美味しくて感動してただけ。こんな美味しいおかずを作れるなんていつでも俺のお嫁さんになれるね」
「ふふ。お嫁さんは流石に気が早くないですか」
「そうかな?でも何れそうなるから特に可笑しなことはないだろう?」
「先輩ってたまに強引ですよね」
「そう?こんな俺は嫌い?」
ここで「嫌い」なんて言われたら彼女を道ずれに死ぬしかないと思いながらともちゃんの言葉を待つ。
ともちゃんは少しだけ悩むような素振りを見せた後、口許を綻ばせながら言った。
「考えてみましたが、どうやらどんな先輩でも好きみたいですね」
「それは良かった」
ともちゃんの言葉が嬉しすぎて踊り出しそうになる身体を拳を握って征する。
ああ、本当に。彼女はどこまで好きにさせれば気が済むのだろう。
いい加減、どうしてくれようかと邪な考えが浮かんでしまうというものだ。
「ほんと……ともちゃんのことが好きすぎて死にそう……」
「それはそれは。大変ですね」
本気の言葉なのに本気にされていないのには若干哀しいものがあるが、そんなともちゃんも大好きだ。
「――と、言うわけで今日はとてもとても気分がいいから、忠告だけで済ませてあげるね?」
でも、もしまたともちゃんに下心で近付いたら、
「今度は容赦しないから」
覚えておいてね?
と、青褪めた顔をして校舎に沿うようにへたり込んだ男子生徒に向けて笑顔を浮かべた。
◆◇◆
「本当にともちゃんは可愛いなぁ」
「あはは、それはそれはどうもありがとうございます」
「あれ?本気にされてない?」
「そりゃあ、こんな平凡顔の女に対して可愛いなんて言われても冗談かお世辞にしか聞こえませんから」
「彼女を可愛いと思うのは普通のことでしょ」
「生憎お付き合いはハジメテなので解りかねます」
そう言ってそっぽを向いた可愛くて堪らない恋人。
でも俺は知っている。
彼女が照れていることも、可愛くないことを言ってしまったと後悔していることも。
そんな所も最高に可愛くて。
ああ、逸そ閉じ込めて二人きりで生きていきたいと願うくらいには愛している。
大体ともちゃんは平凡顔だと言うがそれは間違いだ。
肌理の細かい肌は透けるように白く、零れ落ちそうな程大きな黒い瞳はいつだって潤んでいるし。
ふっくらとした唇はいつも美味しそう桃色で、理性を保っていなければ今すぐにでも奪ってしまいたいと思う。
つまりはとても可愛いのだ。
では何故ともちゃんが自分を「普通」だと言うのか。
それはともちゃんを妬んだ女の醜い嫉妬から。
純粋であまり自分に自信がないタイプであったともちゃんはそんな女達の言葉を鵜呑みにしてしまった。
初めてその事を知った日は、どうしてやろうかとさえ思ったけれど。
良く良く考えれば、ともちゃんの容姿を褒める男の言葉を信じないということでもあって。
彼女を溺愛してるといっても過言ではない俺としては自動的に恋敵が消えていく現状は正に願ったり叶ったりな状況なのだ。
ともちゃんが自分の魅力に気付かず、俺の言葉も信じてくれないのはとても哀しいが。
そこは俺の溢れんばかりの愛情でカバーすればいいだけの話。
俺の言葉だけを信じて貰えるように日夜努力を重ねているというわけだ。
「あ、そう言えばともちゃん」
「なんですか?」
「今日ちょっと来るの遅かったよね?俺が迎えに行けなかったのも悪かったけど、さ」
「誰と、何してたの?」
出来るだけ優しい笑顔を心掛ける。
怖い印象なんてマイナスなイメージをともちゃんに焼き付けたくはないから。
ともちゃんはお昼ご飯のお弁当から視線を外して、少し視線を空にさ迷わせる。
「昼休み、は、普通に隣のクラスの子と話してましたよ」
「本当に?」
「はい。というか嘘つく理由もないでしょう」
「それはそうだけど、俺は君が大好きだから何かあったんじゃないかと、とてもとても心配なんです」
そう言い切れば「なんですか、それ」と、ともちゃんは目尻を下げる。
ああ、そんな顔を誰か俺以外も見たことがあるのだろうかと考えるだけで胃の辺りがもやつく。
出来るなら、出来る限り、ともちゃんの笑顔を他の誰かに見せたくはない。
いや、笑顔だけじゃなく、どんな顔だって。
彼女を鎖に繋いで誰の目にも触れさせたくはないと強く強く願うんだ。
まあ、そんな感情を彼女に見せる気はまだないからグッと堪えるけれど。
「大好きな恋人を心配して何か悪いのかな?」
だから軽い感じに見えるような言葉を吐く。
彼女は飲み込まれた感情に気付くことなく、「私の恋人は口が達者だから困ります」と困ったように笑って言った。
気付いた様子はない。
気付かなくていい。
まだ、『その時』ではないから。
優しい恋人を演じるよ。
君が俺に完全に心を許せるようになるまで。
俺を完璧に信頼するまで。
でも、
(そうなったら、もう我慢はしない)
沢山の君への愛が溢れて止まらないんだ。
だから、もしかしたら悲しませるかも知れないけれど。
そんなことさえ思えないくらい俺に依存させれば良いだけの話。
とりあえず、愛して止まない彼女との時間を削いだ隣のクラスの子とやらと話をしようか。
きっと、ともちゃんに気のある、俺にとっての脅威であろうから。
「ともちゃん」
「なんですかー?というか先輩も早くお昼ご飯食べちゃわないと。昼休み終わっちゃいますよ?」
「ともちゃんを見てるだけで俺の胃は満たされるから大丈夫」
「いや、何も大丈夫なことないですから。ほら、私のご飯少し分けてあげますから食べましょう?」
そう言って弁当の中身を一つ箸で摘まんで俺に差し出すともちゃん。
そんな可愛いことするなら襲うけどいい?
なんて反射的に言いそうになった。
言わなくて良かった。
まだキスまでしかしていないのに引かれたら俺は死ねる。
冗談でなく本気で。
先程まであった顔も知らない人間に対する敵対心はスッパリ抜けて。
これ何かのご褒美?俺今日死ぬんだろうかと思いながらともちゃんから差し出されたおかずを食べる。
今なら死んでもいい……!
「美味しいですか?実はそれ私が作ったおかずなんですよねー」
前言撤回。
今すぐにでも俺は死ねる。
ともちゃんの手作りのおかずを、しかもあーんして貰えるなんて今日が俺の命日か!
「先輩?もしかして不味かったですか?」
「いや、凄く美味しくて感動してただけ。こんな美味しいおかずを作れるなんていつでも俺のお嫁さんになれるね」
「ふふ。お嫁さんは流石に気が早くないですか」
「そうかな?でも何れそうなるから特に可笑しなことはないだろう?」
「先輩ってたまに強引ですよね」
「そう?こんな俺は嫌い?」
ここで「嫌い」なんて言われたら彼女を道ずれに死ぬしかないと思いながらともちゃんの言葉を待つ。
ともちゃんは少しだけ悩むような素振りを見せた後、口許を綻ばせながら言った。
「考えてみましたが、どうやらどんな先輩でも好きみたいですね」
「それは良かった」
ともちゃんの言葉が嬉しすぎて踊り出しそうになる身体を拳を握って征する。
ああ、本当に。彼女はどこまで好きにさせれば気が済むのだろう。
いい加減、どうしてくれようかと邪な考えが浮かんでしまうというものだ。
「ほんと……ともちゃんのことが好きすぎて死にそう……」
「それはそれは。大変ですね」
本気の言葉なのに本気にされていないのには若干哀しいものがあるが、そんなともちゃんも大好きだ。
「――と、言うわけで今日はとてもとても気分がいいから、忠告だけで済ませてあげるね?」
でも、もしまたともちゃんに下心で近付いたら、
「今度は容赦しないから」
覚えておいてね?
と、青褪めた顔をして校舎に沿うようにへたり込んだ男子生徒に向けて笑顔を浮かべた。