アイリス
「アイリス」
「あ?」
「お前は町のチンピラか何かか?」
「んなわけねけぇだろ」
「お前は少しは人狼帝の妻という自覚を持て」
「式典や催事ではちゃんとしてるだろ」
「一応、な」
「ライト、お前には私の頑張りが見えないのか」
「ああ、私の目には見えないな。この前の催事でもドレスの裾を踏んでいた」
「……っう。あ、アレはドレスの裾が何故か私の身体に合ってなかったんだよ!」
「前日まで合っていたドレスが合わないということはないだろう?」
「良いから!お前は早く仕事に行け、ライト」
「まだ話は終わっていない。あと、今日は二人で陛下に謁見の日だが?」
「……そんなの、私は知らないけど」
「……どういうことだ。昨日、メイドに知らせた筈だが」
「……っ、」
「……まさか、」
ライトが何かを察したようにマントを翻す。
私は縋るようにそのマントを引っ張った。
思ったよりも強い力で引けたらしく、二人して転んでしまった。
ふかふかの絨毯の上だから痛くはいけれども。
というよりも、倒れた時に私を腕の中に抱き込んでくれたから例えば硬い大理石の上でも痛くはなかっただろうけれど。
「アイリス。怪我はないか」
「ない、けど……」
「良かった……」
「ライト……私は、お前の妻として相応しく在れないかも知れない」
「……どういうことだ?」
「だって、こんな。家臣に舐められるような女。人狼帝の妻として相応しくはないだろ」
「……アイリス」
ギュッと唇を噛み締めて、私はライトの胸に顏を埋める。
ライトは優しくその大きな手で私の頭を撫でてくれた。
「お前は、そんな難しいことを考えなくても良い」
「え、」
「ただ、私の傍で馬鹿みたいに笑っていてくれれば良い」
優しくそう囁かれて、少し身体を離すと、ちゅっと耳にキスをされた。
擽ったくて身を捩れば「逃げるな」と言い、ライトは私の顔中にキスを落としていく。
ひとしきり満足したのか、最後に唇にキスを落とすともう一度抱き締められた。
「私の妻の心を哀しみで揺れ動かすモノは、この城には要らない」
そう小さく呟くと、ライトは私と視線を合わせた。
「異論はないな」
「……聞いてねぇだろ、それ」
「ああ、聞いてない」
「……最近入って来た、可愛い顔立ちのメイド」
「誰だ。それは」
「お前な。自分が雇ったヤツくらいは覚えろよ」
「私は正直言って、アイリス以外に興味がない」
「お前良く人狼帝務まってんな!」
「まあ、でも。処理はする。私の妻を苛めて良いのは、私だけだからな」
そう誇らしげに言ったライトは、もう一度私にキスをすると立ち会がる。
そうして座ったままだった私の身体を抱き上げて、横抱きにすると靴音を鳴らして何処かに向かって歩いて行く。
「お、おい。何処に行くんだよ」
「そんなの決まっている。寝室だ」
「は?何しに……」
「メイドの処理はする。その前に私はお前と子作りがしたい」
「直球な物言いだな」
「ああ、まあ。夫婦間で隠し事は無駄だろう?」
「分かった。お前怒ってんな?」
「さあ、その身体で分かれば良い」
「めちゃくちゃ怒ってんな、ヤバイな。私の命日今日か」
「明日かも知れないなぁ」
「今、昼間だぞ!?」
そんな私の叫びなんて知ったことかとばかりに、無情にも私は寝室に運ばれていったのだった。
ちなみに私が解放されたのは次の日の深夜だった。
死にかけの私を心配してくれたらしいが、その心配すらその時の私には恐怖だったし、何より夫たるコイツが一番怖いとこの日思い知った。
「あ?」
「お前は町のチンピラか何かか?」
「んなわけねけぇだろ」
「お前は少しは人狼帝の妻という自覚を持て」
「式典や催事ではちゃんとしてるだろ」
「一応、な」
「ライト、お前には私の頑張りが見えないのか」
「ああ、私の目には見えないな。この前の催事でもドレスの裾を踏んでいた」
「……っう。あ、アレはドレスの裾が何故か私の身体に合ってなかったんだよ!」
「前日まで合っていたドレスが合わないということはないだろう?」
「良いから!お前は早く仕事に行け、ライト」
「まだ話は終わっていない。あと、今日は二人で陛下に謁見の日だが?」
「……そんなの、私は知らないけど」
「……どういうことだ。昨日、メイドに知らせた筈だが」
「……っ、」
「……まさか、」
ライトが何かを察したようにマントを翻す。
私は縋るようにそのマントを引っ張った。
思ったよりも強い力で引けたらしく、二人して転んでしまった。
ふかふかの絨毯の上だから痛くはいけれども。
というよりも、倒れた時に私を腕の中に抱き込んでくれたから例えば硬い大理石の上でも痛くはなかっただろうけれど。
「アイリス。怪我はないか」
「ない、けど……」
「良かった……」
「ライト……私は、お前の妻として相応しく在れないかも知れない」
「……どういうことだ?」
「だって、こんな。家臣に舐められるような女。人狼帝の妻として相応しくはないだろ」
「……アイリス」
ギュッと唇を噛み締めて、私はライトの胸に顏を埋める。
ライトは優しくその大きな手で私の頭を撫でてくれた。
「お前は、そんな難しいことを考えなくても良い」
「え、」
「ただ、私の傍で馬鹿みたいに笑っていてくれれば良い」
優しくそう囁かれて、少し身体を離すと、ちゅっと耳にキスをされた。
擽ったくて身を捩れば「逃げるな」と言い、ライトは私の顔中にキスを落としていく。
ひとしきり満足したのか、最後に唇にキスを落とすともう一度抱き締められた。
「私の妻の心を哀しみで揺れ動かすモノは、この城には要らない」
そう小さく呟くと、ライトは私と視線を合わせた。
「異論はないな」
「……聞いてねぇだろ、それ」
「ああ、聞いてない」
「……最近入って来た、可愛い顔立ちのメイド」
「誰だ。それは」
「お前な。自分が雇ったヤツくらいは覚えろよ」
「私は正直言って、アイリス以外に興味がない」
「お前良く人狼帝務まってんな!」
「まあ、でも。処理はする。私の妻を苛めて良いのは、私だけだからな」
そう誇らしげに言ったライトは、もう一度私にキスをすると立ち会がる。
そうして座ったままだった私の身体を抱き上げて、横抱きにすると靴音を鳴らして何処かに向かって歩いて行く。
「お、おい。何処に行くんだよ」
「そんなの決まっている。寝室だ」
「は?何しに……」
「メイドの処理はする。その前に私はお前と子作りがしたい」
「直球な物言いだな」
「ああ、まあ。夫婦間で隠し事は無駄だろう?」
「分かった。お前怒ってんな?」
「さあ、その身体で分かれば良い」
「めちゃくちゃ怒ってんな、ヤバイな。私の命日今日か」
「明日かも知れないなぁ」
「今、昼間だぞ!?」
そんな私の叫びなんて知ったことかとばかりに、無情にも私は寝室に運ばれていったのだった。
ちなみに私が解放されたのは次の日の深夜だった。
死にかけの私を心配してくれたらしいが、その心配すらその時の私には恐怖だったし、何より夫たるコイツが一番怖いとこの日思い知った。
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