短編
「由紀くんは猫が好きなの?」
皐月さんの愛猫、しらたまさんと遊んでいたら唐突にそう問われた。
「別に好きとか嫌いとかないけど……」
「でも、しらたまさんはいつも由紀くんに撫でられていると凄く気持ちよさそうだよ?由紀くんもしらたまさんも僕を無視しすぎじゃない?」
「……まさかとは思うけど、皐月さん妬いてるの?」
「うん」
にっこりと柔らかな笑みを浮かべる皐月さんはどう見ても妬いている風には見えない。
むしろ楽しんでいるようにも見える。
「しらたまさん。皐月さんが構って欲しそうだよ」
白い毛並みを撫でながらそう言えば、金と青の目をオレに向けるとにゃぁんと鳴いた。
どうやら皐月さんの元に行く気はないらしい。
「フラれちゃったね」
「うぅ……しらたまさん相変わらず僕には辛辣だね」
「猫は気紛れって言うし、仕方ないよね」
「由紀くんまで辛辣……僕そろそろ拗ねそう」
「何言ってんの」
ふふ、っとオレは笑ってしらたまさんを抱えながら皐月さんの傍に近寄った。
「とっくに拗ねてるくせに」
「……なんだ、バレてたのか」
「皐月さんは分かりやすいんだよ」
「由紀くんは可愛いくせに可愛げがないよね。そこがすごーく可愛いんだけど」
「そのすぐにオレのこと『可愛い』って言うのやめてくれない」
「照れてる由紀くんも可愛い」
「真顔で何言ってんの、もう」
オレはしらたまさんの白くてふわふわな身体に顔を埋めて、赤くなっているだろう頬を隠した。
「由紀くん、僕ね。だいぶしらたまさんにメロメロなんだよ?」
「あ、えっと、ごめ……」
「なのに、しらたまさんに嫉妬してる。僕だって由紀くんに擦り寄られたい!」
「……皐月さん。真顔でナニ言ってんの」
「ふふ、だから、ね?」
はいっと言われながら皐月さんはオレに向けて腕を広げる。
オレはそれに少しだけ戸惑って、それでもそっと皐月さんの胸の中に擦り寄った。
「あったかいね、由紀くん」
「そうかな」
「うん。由紀くんはあったかい」
「……オレ、体温低いから良くひやこいって言われるんだけど」
「良いんだよ」
「え、」
「僕にとったら由紀くんはあったかいから、だから良いんだよ」
暖かな言葉が頭上から降ってくるような気がした。
皐月さんの声が、オレの頭を撫でる皐月さんの大きな手が、オレの心を溶かすように暖かくて。
だけど、つい。視てしまう。
皐月さんの小指に赤い糸が繋がっていないかと。
それでも良いんだよ、と皐月さんはやっぱり優しく言ってくれたけれども。
きっといつか、アイツみたいにオレの傍から居なくなってしまうと思いながら皐月さんの隣に居るのは……きっと裏切りなんだろうな。
「皐月さん」
「なぁに、由紀くん」
「……すきだよ」
「……っ、由紀くんから好きって!これは誕生日と盆と正月とクリスマスプレゼントが一気に来たのかな!?」
「ふはっ、そんなにたくさんかよ」
「そうだよ。由紀くんったらなかなか言葉に出してくれないんだもの。でも、嬉しいよ。僕も由紀くんが大好きだからね」
そう言って皐月さんはオレの頭を殊更優しく撫でてくれた。
嗚呼、この幸せがずっと、ずっと、長く続けばいいのになぁ。
皐月さんの胸に頭を預けながら、しらたまさんを撫でる。
きっとこの時間はとてつもなく貴重な時間になるのだろう。
いつか壊れてしまっても。きっと生きていけるくらいには。
皐月さんの愛猫、しらたまさんと遊んでいたら唐突にそう問われた。
「別に好きとか嫌いとかないけど……」
「でも、しらたまさんはいつも由紀くんに撫でられていると凄く気持ちよさそうだよ?由紀くんもしらたまさんも僕を無視しすぎじゃない?」
「……まさかとは思うけど、皐月さん妬いてるの?」
「うん」
にっこりと柔らかな笑みを浮かべる皐月さんはどう見ても妬いている風には見えない。
むしろ楽しんでいるようにも見える。
「しらたまさん。皐月さんが構って欲しそうだよ」
白い毛並みを撫でながらそう言えば、金と青の目をオレに向けるとにゃぁんと鳴いた。
どうやら皐月さんの元に行く気はないらしい。
「フラれちゃったね」
「うぅ……しらたまさん相変わらず僕には辛辣だね」
「猫は気紛れって言うし、仕方ないよね」
「由紀くんまで辛辣……僕そろそろ拗ねそう」
「何言ってんの」
ふふ、っとオレは笑ってしらたまさんを抱えながら皐月さんの傍に近寄った。
「とっくに拗ねてるくせに」
「……なんだ、バレてたのか」
「皐月さんは分かりやすいんだよ」
「由紀くんは可愛いくせに可愛げがないよね。そこがすごーく可愛いんだけど」
「そのすぐにオレのこと『可愛い』って言うのやめてくれない」
「照れてる由紀くんも可愛い」
「真顔で何言ってんの、もう」
オレはしらたまさんの白くてふわふわな身体に顔を埋めて、赤くなっているだろう頬を隠した。
「由紀くん、僕ね。だいぶしらたまさんにメロメロなんだよ?」
「あ、えっと、ごめ……」
「なのに、しらたまさんに嫉妬してる。僕だって由紀くんに擦り寄られたい!」
「……皐月さん。真顔でナニ言ってんの」
「ふふ、だから、ね?」
はいっと言われながら皐月さんはオレに向けて腕を広げる。
オレはそれに少しだけ戸惑って、それでもそっと皐月さんの胸の中に擦り寄った。
「あったかいね、由紀くん」
「そうかな」
「うん。由紀くんはあったかい」
「……オレ、体温低いから良くひやこいって言われるんだけど」
「良いんだよ」
「え、」
「僕にとったら由紀くんはあったかいから、だから良いんだよ」
暖かな言葉が頭上から降ってくるような気がした。
皐月さんの声が、オレの頭を撫でる皐月さんの大きな手が、オレの心を溶かすように暖かくて。
だけど、つい。視てしまう。
皐月さんの小指に赤い糸が繋がっていないかと。
それでも良いんだよ、と皐月さんはやっぱり優しく言ってくれたけれども。
きっといつか、アイツみたいにオレの傍から居なくなってしまうと思いながら皐月さんの隣に居るのは……きっと裏切りなんだろうな。
「皐月さん」
「なぁに、由紀くん」
「……すきだよ」
「……っ、由紀くんから好きって!これは誕生日と盆と正月とクリスマスプレゼントが一気に来たのかな!?」
「ふはっ、そんなにたくさんかよ」
「そうだよ。由紀くんったらなかなか言葉に出してくれないんだもの。でも、嬉しいよ。僕も由紀くんが大好きだからね」
そう言って皐月さんはオレの頭を殊更優しく撫でてくれた。
嗚呼、この幸せがずっと、ずっと、長く続けばいいのになぁ。
皐月さんの胸に頭を預けながら、しらたまさんを撫でる。
きっとこの時間はとてつもなく貴重な時間になるのだろう。
いつか壊れてしまっても。きっと生きていけるくらいには。
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