此のこころ、桔梗に帰す【歌さに】

 その時まであたしは、ただの審神者だった。


「わーん! 歌仙が怒ったぁ!」
「きみね! ヒトが真剣に話している時にふざけるものではないよ!」
「でもー……」
「でもも、だってでも。仕事は終わらないよ。主」

 歌仙が指差した先には書類の山。それはあたしが仕事もせずに遊んでいた確かな証拠だ。
 うぐぐ、とあたしは唸る。仕方ない、理由はあったにしろ仕事をしなかったのはあたしのせいだ。甘んじて片付けようじゃないか。

「歌仙……」
「……なんだい?」
「手伝って?」
「……はあ、仕方がない子だね。まったく」

 そう言って。でも手伝ってくれる歌仙は優しい。鬼のように怖い時はあれども、本質は優しい神様なのだ。

「ありがとう! 歌仙!」
「今回キリだからね」
「分かってるよ。今度からはこんなに溜める前にやるよ」
「そもそも溜めないように」

 歌仙は溜め息を吐きながら書類の山に手を付け始めた。あたしもそれに倣って手を付ける。
 カリカリと言うペンで紙を削る音が聞こえる。あたしは案外この音が好きだ。
 仕事自体が好きかと問われるとあまり色好い返事は出来ないけれども。
 どれくらい書類にペンを走らせていただろうか。
 不意に「主、歌仙くん。入るよ」という声が聞こえた。

「みっちゃん!」

 障子が開けられる前にその名を呼べば苦笑する声。そうしてスッと障子が開くと同時に彼は現れた。

「今日のおやつはなぁに? みっちゃん」
「こら、主。まだキリが悪いんじゃないかい?」
「でも、折角みっちゃんが持って来てくれたんだよ?」
「……っう」

 訴えかけるように歌仙を見つめれば、眉間に皺を寄せながら歌仙はみっちゃんこと燭台切光忠を見て、また溜め息を吐いた。ふふ、とみっちゃんは笑う。

「歌仙くんも疲れたでしょ? 今日はふたりの好きなあんみつだよ」
「わぁい! みっちゃんのあんみつだぁ!」
「主。そんなにがっつくものではないよ。もっと品位を持って……」
「だって、歌仙は嫌いなの? みっちゃんのあんみつ」
「……嫌いではない、というかそんな話をしていなかっただろう。僕は品位の話をしていたんだよ?」
「まあまあ、歌仙くん。お茶は楽しく、ね?」
「きみも主を甘やかしすぎないように」
「はいはい」

 みっちゃんは笑顔のまま歌仙の話を聞き流しているように見えた。
 歌仙もそれが分かったのか仕方がないとばかりにまた溜め息を吐く。

「かせーん。そんな溜め息ばかり吐いてたら幸せが逃げちゃうよ?」
「きみがそれを言うのかい?」
「あはは、確かに」
「確かに、じゃないんだよ」

 まったく、と言いながらみっちゃんから渡されたあんみつに手を付ける。
 プルプルと震える寒天はほのかに白く、きっとみっちゃんが手作りで作ってくれたのだろう。添えられたフルーツは定番のさくらんぼ、ではなく柿だ。

「柿なんて珍しいね?」
「ああ、小夜ちゃんがね。ふたりに食べて欲しいって分けてくれたんだよ」
「そうなんだ! あとでお礼しないとね」
「お小夜が僕の為に……っ」
「違うよ、歌仙。あたしの為にだよ」

 言い合えばみっちゃんが再度「ふたりで仲良く食べてね」と言い残す。

「はぁい」

 みっちゃんは本丸の二大お母さんのようなもので、あたしはあまり逆らえないのだ。もちろん主従の契約的にはあたしの方が上なのだが。
 もうひとりのお母さん枠と言えば、隣で美味しそうに柿を食べていた。

「なんだい? 食べないのかい?」
「ふふ、食べるよー」
「なんなんだい、まったく。落ち着きがないったらありゃしない」
「歌仙はあたしにそんなお上品になって欲しいの?」
「それは、……当たり前だよ」
「むー、何か隠した言い方ぁ」
「まずその語尾を伸ばすのをやめないか」

 言い合いをしながらあんみつを一口、また一口と食べて行く。みっちゃんの作ったあんみつは本当に美味しいなぁ。幸せの味がするなぁ、と思いながら食べていたら視線を感じた。

「どーしたの? 歌仙」
「……いや、」

 良い淀む歌仙は普段とは違う雰囲気だ。普段の歌仙はズバッとなんでも言う。だから少しだけ怖くなって、でも何かを言うことは出来なかった。

「今度の出陣が終わったら、一緒に万屋へ行かないかい」
「え?」
「今月、僕は誉を十回取っただろう」
「あ、ああ。そうだったねぇ」

 うちの本丸は誉を十回取ると審神者に出来る範囲のお願いが出来るシステムなのだ。一緒にご飯を食べて、だとか、買い物に行きたい、だとか。そういうの。
 何かと気にしいな初期刀の歌仙は大所帯になってから久し振りの誉十回目だ。
 きっと他の子達に譲っていたのだろう。やっぱり歌仙は優しい神様だ。

「買い物だけでいいの?」
「なら、ついでに茶屋にでも行きたいね」
「いいよぉ! 歌仙の久し振りのお願いだもん。主なんでも聞いちゃう!」

 歌仙と出掛けられることが嬉しくて、なんだか心が浮足立つ。
 嬉しい、という感情の他にも何か違う感情がある気がする。
 でもそれが何なのかは分からない。
 分からないけれど、幸せな気持ちになる。
 不思議だなぁ。と思いながら、歌仙と一緒にあんみつを食べた。





 だからこれはきっとね?
 幸せ過ぎたあたしへの罰だと、そう思っているの。





『……審神者様! 審神者様!』
「ん、こんのすけ? なぁに?」
『緊急事態です! 速やかに迎撃準備を!』

 深夜、眠っていたあたしの部屋に現れたこんのすけは大きな声で怖いことを言う。

「迎撃って、ナニ? どうしたの?」
『時間遡行軍がそこまでやって来ています!』
「え! でも、本丸の位置情報は複雑にパスワード化されていて早々特定されないんじゃ……!」
『それが、……政府の中に間者が居たらしく……』
「間者って、裏切り者ってこと……!?」

 どうして……? なんて、こんのすけの様子を見ている限り考えている暇はないようだ。

「そーちゃん! 聞いてた!?」

 部屋の前で寝ずの番として控えていた宗左左文字を呼べば、彼はやれやれというように現れる。

「聞いていましたよ、鐘を鳴らします」
「お願い」

 そーちゃんは足早に鐘のある場所へ走って行く。各本丸にある敵襲用に作られた鐘だ。練習では何度か鳴らしたことのある鐘が、本来の役目を全うする形で鳴るのは初めてだ。でも、これで眠っている子達も起き出してくることだろう。
 あたしも、もしもの為に用意された小刀を枕元から腕の中へ抱え込む。
 これは敵に向ける為の刀ではない。もしも敵に生け捕られた時に政府側の情報を話さない為に本丸着任時に用意される——自害用の小刀だ。

『審神者様! 敵襲、来ます!』
「……っ」

 ギュッと唇を引き結ぶ。大丈夫、大丈夫。と震える手のひらで刀を抱えながら言い聞かせる。
 あたしの刀剣男士達が、あたしの大事な神様達が、そんな簡単に負ける筈がない。傷付く筈がない。
 どんな強敵にも勝ってきた。だから今回も大丈夫。また明日はやってきて。笑って過ごせる日々が来る。
 きっとそれはあたしの心の中に確かに在った慢心で、信じたかった未来でもあった。
 けれどもそれは夢幻のようなお話で、これが現実だと言わんばかりに戦況は悪く。
 ――気が付けば目の前は火の海だった。
 夜の闇が際立つような、赤い赤い炎が本丸中に広がっていく。
 奇襲に際して右目は炎で焼かれ、あたしはただ本丸の中を歩き続けた。
 焼けている建物の一部に身体を預けながら、まだ戦っている筈のみんなを探し続ける。

「だ、れか……みんな……」

 身体が燃えるように熱くて痛い。呻くような声に反応してくれるあたしの家族の声も聞こえず、どうして……、と不安で泣き出してしまいたくなりそうな気持ちを抱え、痛む足を引き摺りながら本丸のみんなをただ探していた。

「主! 無事かい!?」
「か、歌仙……っ!? 歌仙……!」

 突然歌仙が目の前に現れた。焦ったようなその顔はあたしの無事を願うもので。
 歌仙の姿を見た瞬間、決壊したかのように涙が溢れて止まらなくなった。
 歪む視界の中、涙の隙間から歌仙を見れば彼はかなりの重傷で、ああ、早く手入れをしなくては。
 そう思って口を開こうとした瞬間、歌仙は何も言わずにあたしの身体を抱き寄せた。

「……ずっと、言おうか迷っていたんだ」
「か、せん……?」
「でも僕は、自分で思っていた以上に臆病だったから。きっとこんな時でなければ言えなかったんだろうね?」

 はは、と遣る瀬無さそうに笑った歌仙は不意にあたしを抱き上げた。宙に浮かぶ足が微かにバタつくのに歌仙は「お上品じゃない」と咎めなかった。
 それどころか大切なものにでも向けるような、大事にしたいものを見つけたような。そんな柔らかで、それでいて今まで見たこともない程に強い眼差しをあたしに向け、そうしてあたしを見つめながら口を開いた。

「な、ナニ? 歌仙? どうしたの?」
「……きみは、生きて。生きて、生きて。そうして幸せになっていくんだよ」
「何言って、……ねえ! 歌仙!? どういうこと!?」
「お上品でもなく、語尾を伸ばして喋る、そんなきみを僕はずっと――尊いと思っていた」
「か、せん……?」
「きみが居なくなる未来は要らない。僕は、きみが笑って生きていてくれる。そんな未来をただひたすらに願っているよ」
「ま、って。それ、歌仙もだよねぇ!? 歌仙も一緒にあたしと生きてくれるんだよねぇ⁉」
「大丈夫。大丈夫だよ、主」

 歌仙はもうそれしか言わなかった。もうとっくの昔に重傷で、歌仙の頬にはひび割れたような傷が生まれていた。もう何もかもが手遅れなのを感じて涙が滲む。
 でもそんなことを信じたくはなくて、こんなさよならは嫌だと子供みたいに泣き喚いてしまいたくて。

「歌仙、……やだ、いやだよぉ……!」
「大丈夫だよ、主」
「何が大丈夫なの!? 歌仙今にも折れちゃいそうなのに! どうしてそんなことが言えるの!?」

 駄々を捏ねる子供のように叫んでも、歌仙はあたしを安心させるように笑うのみ。
 その笑顔を見て、今よりも小さい本丸だった頃。初めて歌仙と進軍した時のことを思い出した。
 あの時も歌仙は傷だらけで、手入れ部屋で泣き喚くあたしに向かって「大したことないさ」と安心させるように笑ったのだ。
 今もそう。歌仙はあたしを心配させまいと笑ってる。

「主。僕に、刀の本懐を果たさせておくれ」
「……っ」

 歌仙は柔らかな声でそんな言葉を放った。
 ひゅっと喉が鳴る。サァッと顔面から血の気が失せていく音が聞こえた。

「ああ、いいところに」

 歌仙はそんなあたしを気にすることはなく、誰かを見付けたような声を発する。
 あたしも歌仙に釣られてそちらを見やった。
 そこには左文字の三人が居て。みんな重傷だったけれども、折れずに居てくれた。
 ホッと胸を撫で下ろすかのように息を吐けば、そーちゃんが微かに眉根を寄せる。

「歌仙。あなた……」
「主を頼む。江雪左文字」
「……分かりました」
「こーちゃん!? なんで! 待って、歌仙!」

 力の限り叫んでも、あたしを比較的無事な江雪左文字に任せ、歌仙はあたし達から背を向けると鞘に納めていた刀を抜いた。刃毀れの酷い鉄の塊は、確かに殺意を持って今にも襲い掛かろうとしている時間遡行軍に対して向けられた。

「主、僕は……」

 歌仙が何かを発したその瞬間。辺りに熱風が吹く。何も聞こえない。大事な言葉を言われたような気がしたのに。歌仙の言葉なのに。

「……何言ったの? 歌仙? 歌仙!」
「――生きるんだよ、主」

 背を向けた歌仙はそれだけを言うと微かに口角を上げる。

「……い、やだ! 歌仙! あたしも連れて行って!」

 その言葉に対して、歌仙は何も返さなかった。それ以上は何も言わずにあたし達に背を向けたまま時間遡行軍に向けて刃を向けたまま。
 叫ぶように歌仙の名をひたすら呼んで、あたしを抱きかかえるこーちゃんの身体を叩いて反抗する。それでもこーちゃんはそんなあたしを見捨てることも、離そうとすることも決してなかった。そして歌仙があたしを見ることも最後までなかった。
 こーちゃんにしっかりと抱えられながら、あたしは限界が来たのだろう。不意に視界が真っ白になった。
 白く染まっていく視界が最後に映したのは。
 歌仙の大きくて、あたしにとってもこの本丸の誰にとっても頼りがいがある。
 あたしが始めに選んだ――大好きな初期刀の背中だった。


*****


 これはそーちゃんに聞いた話だが。
 本丸を脱出したあたし達をまるで待って居たかのような政府お抱えの医者達があたし達を囲むと、そのまま政府が管理している病院に運び入れ治療を施したそうだ。
 一時は命の危機に瀕した程の怪我だったらしい。
 けれども生きている。歌仙の言葉通り、あたしは確かに生きている。いや、違うか。歌仙に、本丸のみんなにあたしは生かされたんだ。
 怪我が不完全ながら治り、本丸があった場所に行く許可が一度だけ降りた。
 焼け野原のような本丸と散らばる刀の破片。心臓がギュッと痛むのを唇を噛み締めながら堪えた。口内に血が滲むのを感じて拳を握り締める。目敏くさよっちが気付いたことには気付いていたけれども、さよっちは何も言わなかった。
 一緒に来た政府職員は「この場所は時間遡行軍に見つかった為、本丸再建は不可能です」と無機質な声で告げられるが、その言葉は何処かうわの空で心の中には入って来なかった。
 元々この場所で本丸を立て直す気はなかったけれども、はいそうですか、と言えるほど心が回復していなかったのだ。
 生き残った刀剣男士は、江雪左文字、宗左左文字、小夜左文字の三振りだけ。
 それ以外の刀剣男士達は未確認――折れたのだろうと政府側は判断を下した。
 あたしがもっとしっかりしていれば。あたしがもっと頑張っていれば。
 この場所でまだ、今日もみんなと笑えていたのだろうか?

「みんな、戦って逝っちゃったんだね……」
「……刀の本懐を果たしたまでです」
「こーちゃんは、」

 悲しくないの? だなんて、何を言おうとしたのだろうか。
 仲間を失って悲しくないなんて、そんなわけがない神様に、あたしはなんてことを言おうとしたのだろう。
 自己嫌悪に駆られそうになったその瞬間、そーちゃんが口を開いた。

「主、あなたはこれからどうされるのですか?」
「そーちゃん……これからなんて、そんなこと急に言われても……」
「生きろ、と。あの時、歌仙は言いました」
「……っ!」

 そーちゃんの言葉に思わずギュッと唇を噛み締める。あの日の熱風が頬を撫でたような、そんな気がした。
 こーちゃんは心配そうに。そーちゃんは見極めるように。さよっちは今立って居るのは炎の中ではないと証明するようにあたしの手をしかと繋ぎながら。
 さよっちの温もりに、そーちゃんの意思の強い瞳に、こーちゃんの優しい色にあたしは今生かされている。
 生かされている。そう。あたしはあの日、生きろと願われた。
 他の誰でもない。大好きで大切なあたしが自分の手で選んで顕現させた、この世でたった一振りのあたしの初期刀に。

「歌仙……、みんな……、ごめん、ごめんね。……ごめんね……っ」

 今は今だけは泣いてもいいかな? こんな弱い主だと、みんなもう慕ってはくれないかなぁ?
 きっと優しいみんなのことだから何も言わずに見守ってくれていることだろう。
 そう思った瞬間、もうダメだった。
 涙腺が決壊したかのようにわんわんと声を上げて泣きじゃくれば、さよっちは更に手に込める力を更に強く、ただ寄り添うように手を握り締め続けてくれた。
 泣いて、泣いて、もう涙が枯れてもいいのではないのかという程に泣きじゃくった時、不意に何かに呼ばれた気がして、空を見上げるように顔を上げる。
 そこにはあの日、歌仙と見たのと同じ澄んだ青空が広がっていた。
 ――けれども違うのだ。
 あの日、歌仙と見上げた空は二度と来ない。同じ色を浮かべない。
 何よりもう二度とあたしの歌仙は傍で笑ってはくれないのだ。

「歌仙、あの時……」

 なんて言ったのかな? なんて、言いたくても。聞きたくても、歌仙はもう何も答えてはくれない。
 びしょびしょの顔で何を言っても、きっと歌仙は「雅じゃない」と言って嫌がるのだ。そんな歌仙が、あたしは好きだ。だったじゃない。今でも大好きなのだ。
 日常を壊され、家族を壊され。それでもあたしは生きなくてはいけない。
 歌仙が言った「生きろ」という言葉も勿論ある。
 何よりあたしには残された家族が居るから。
 だから、生きよう。
 生きて生きて、白髪の生えたおばあちゃんになれば、そうしたらきっと歌仙が迎えに来てくれるから。
 だからそれまでは――生き続けよう。

「こーちゃん、そーちゃん、さよっち」

 三振りの名をいつものように呼ぶ。
 彼らはあたしの顔をジッと見つめて、あたしの言葉をただ待っていた。
 彼らの視線はあたしを見定めるかのような視線だったが、怖くはない。
 あたしのことを、言葉を意思を、決して彼らは拒絶しないと分かっているから。
 だから、その言葉はするりと喉から発せられた。

「生きよう」

 たった一言。それでも彼らには確かに伝わったようだ。
 三振りは一度頷くと、あたしの手を包み込むように、守るように、ただ柔らかに握り締めた。
 だからあたしも決意を込めてその手のひらの上に自身の手のひらを重ねた。
 あなた達だけは絶対にあたしが守ると誓った。
 もう二度とあんな悲劇が起こらないよう、あたしは本丸を構える審神者には戻らず、政府所属の審神者になった。
 裏切りを無くすために。政府の中に蔓延る膿を摘まみ出し、無くすために。
 その過程で刀剣男士による審神者の神隠し事件も本丸襲撃に起因する事案だと分かったことから、そちらも探るようになった。
 幾つもの本丸の悲劇を見て来た。
 救えた本丸。救えなかった本丸。
 それはこの数年だけで数えきれない程だったけれども。
 あたしは今日も、まるでそれが自然なことのように笑みを浮かべ、息をする。
 いつかあの柔らかな笑みを浮かべる初期刀に逢える日を心待ちにしながら。
 ただ、ただ。その日の為に。
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