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【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加させて頂きました!
お題:ヤンデレ、小説の最後を「どうしてこうなった」で終わらせる、かき氷
**
「殺したいくらい愛しているんですけど、どうしたらいいですかね」
学校終わり、お気に入りのふわっふわのかき氷を出す店に入り、宇治金時の抹茶と小豆、そしてもちもちの白玉に幸せを感じていた時に問われた質問?に「はい?」と間抜けな声を出す。
問われた言葉の意図が解らず、とりあえず私は口の中に入っていた白玉を飲み込んだ。
うん。やっぱり小豆には白玉が良くあうなぁ。
で、だ。
「ええと、キミは誰かな?」
私の記憶違いでなければ、私は一人で店にやって来て、一人で席に座り、一人で注文をし、一人で宇治金時のかき氷を楽しんでいた筈だ。
それがどうしてか今目の前の空いた席には誰だか分からない――制服のネクタイの色から恐らく後輩であろう男の子――が居て、良く分からない言葉を発してきた。
……うん。状況を整理しても意味が分からないや。
「先輩が好きで好きで、いとおしすぎて、監禁して二人だけの世界で生きていきたいくらい、本当に好きで、堪らないんです」
どうしたらいいですか?
なんて、仔犬のような目で不穏な発言をするやはり後輩だった男の子に、はあ、と気のない返事を返す。
実際突然身も知らない後輩くんからそんな言葉を投げられて、何て返すのが正解か何て分からない。
「じゃあ二人だけの世界で生きる?」なんて冗談を言うような空気でもないし。
つまりは彼は本気でそう思って、そう感じて、私を好きで、監禁してしまいたくなる程度には愛されているという。
そういうことか。
……なんでだろう。
恋人居ない歴=年齢な私だが何にも嬉しくない。
だって監禁ルートが待ってそうですし?
その前に開口一番に「殺したい」なんて言われてますし?
これがもし私も後輩くんを好きだったなら、ギリギリ喜べたかも知れないけれど。
何度も言う通り初対面だ。
あっちは私を知っていても私が後輩くんを知らない今の状態で、私にとっての後輩くんは殺人予告をしてくる不穏な存在でしかない。
(なんだかなー。私が何をしたって言うんだい)
今日はただただ少ないお小遣いで夏の定番でもある大好きなかき氷を食べに来ただけなのに。
はあ、と思わず溜め息を零しながら、スプーンを置いて後輩くんに意識を向ける。
「キミはそう言うけど、結局のところ私にどうして欲しいのかな?」
「え」
「私を好きになってくれたのは、まあ、色々思うところはあるけれど嬉しいよ?でも、じゃあ、どうして欲しいのかな?」
私の質問に後輩くんは驚いたように目を見開いて、囁くような声でぽつりと言葉を落とす。
「……そんなこと、考えたこともなかったです」
「それはつまり、付き合いたいとかも?」
「はい。ただただ先輩が好きで大好きで、それを知って貰いたいってずっと思っていて」
それだけしか考えてませんでした。
「でも先輩。先輩は引かないんですか?気持ち悪いとかないんですか?」
「うん?何に対してかな?」
「いや、だって。俺は先輩を純粋に好きなだけじゃなくて、独り占めしたくて、誰にも見せたくなくて、好きで好きで、どうしようもないくらい大好きで」
怖くないんですか?
そう伺うように問われて、私は「んー」と宙を見る。
「別に怖くはないし、引く要素もないと思ったなぁ」
確かに発言は物騒で、一歩間違えたなら多分本当に実現してしまう程度には愛されているのだと数分話しただけでも解る。
それでもそれに対して「怖い」とか「気持ち悪い」とかの負の感情は湧いてこなかった。
「キミの気持ちがとても危ない要素を孕んでいたとしても、私は単純に嬉しいなぁ、って思ったよ」
ふにゃりと良く友人からは「間抜け顔」とか言われる笑みを向ければ、後輩くんはグッと何かを堪えるような顔をした後、じゃあ!とテーブルの上に両手を付いて食い気味に顔を近付けてきた。
「じゃあ先輩は俺と付き合ってくれますか!?俺のモノになってくれますか!?俺と一生一緒に生きて、俺の手で死んでくれますか!?」
顔を真っ赤に染めながら言われた言葉に、ううん?と目をぱちくりとさせる。
どさくさに紛れてプロポーズ紛いの言葉を言われた挙げ句に、聞き間違いでなければ聞き逃してはいけない、受け流してはいけない、とてもじゃないがマトモとは言えないような言葉を聞いた気がした。
「ええと、とりあえず、うん。一生一緒に生きるとか云々はまだ早いんじゃないかな?」
何せ初対面。
初めて存在を知った相手にそこまでの約束は出来はしない。
けれど後輩くんは何を解釈したのか、鼻息荒く口を開いた。
「じゃあ、これから知っていってくれるって事ですね!!」
「いやいやいやいやいや?」
「俺、先輩を全身全霊で愛します!先輩にも俺と同じくらい俺を好きになってくれるように頑張ります!」
「あれ?可笑しいな?もしかしたら意思の疎通が出来てないのかな?」
「先輩!」
「うん。何だろう」
「愛してます」
うっとりとした顔で頬を赤らめながら微笑んだ後輩くんの顔は、それはそれは幸せそうで。
流されている。これは完璧に流されているぞー、と思いながらも。
多分私の言葉は興奮しきって私とのデートプランを一人でペラペラと喋っている後輩くんには聞こえないんだろうな、と後輩くんを見ながら引き攣った笑みを浮かべる。
【大好きな宇治金時のかき氷を食べに来たら物騒なことを言う恋人が出来たようです】
なんて、意味が分からないわ。
半分以上溶けてしまった抹茶色のかき氷を見つめながら思わず呟いた。
「どうしてこうなった」
お題:ヤンデレ、小説の最後を「どうしてこうなった」で終わらせる、かき氷
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「殺したいくらい愛しているんですけど、どうしたらいいですかね」
学校終わり、お気に入りのふわっふわのかき氷を出す店に入り、宇治金時の抹茶と小豆、そしてもちもちの白玉に幸せを感じていた時に問われた質問?に「はい?」と間抜けな声を出す。
問われた言葉の意図が解らず、とりあえず私は口の中に入っていた白玉を飲み込んだ。
うん。やっぱり小豆には白玉が良くあうなぁ。
で、だ。
「ええと、キミは誰かな?」
私の記憶違いでなければ、私は一人で店にやって来て、一人で席に座り、一人で注文をし、一人で宇治金時のかき氷を楽しんでいた筈だ。
それがどうしてか今目の前の空いた席には誰だか分からない――制服のネクタイの色から恐らく後輩であろう男の子――が居て、良く分からない言葉を発してきた。
……うん。状況を整理しても意味が分からないや。
「先輩が好きで好きで、いとおしすぎて、監禁して二人だけの世界で生きていきたいくらい、本当に好きで、堪らないんです」
どうしたらいいですか?
なんて、仔犬のような目で不穏な発言をするやはり後輩だった男の子に、はあ、と気のない返事を返す。
実際突然身も知らない後輩くんからそんな言葉を投げられて、何て返すのが正解か何て分からない。
「じゃあ二人だけの世界で生きる?」なんて冗談を言うような空気でもないし。
つまりは彼は本気でそう思って、そう感じて、私を好きで、監禁してしまいたくなる程度には愛されているという。
そういうことか。
……なんでだろう。
恋人居ない歴=年齢な私だが何にも嬉しくない。
だって監禁ルートが待ってそうですし?
その前に開口一番に「殺したい」なんて言われてますし?
これがもし私も後輩くんを好きだったなら、ギリギリ喜べたかも知れないけれど。
何度も言う通り初対面だ。
あっちは私を知っていても私が後輩くんを知らない今の状態で、私にとっての後輩くんは殺人予告をしてくる不穏な存在でしかない。
(なんだかなー。私が何をしたって言うんだい)
今日はただただ少ないお小遣いで夏の定番でもある大好きなかき氷を食べに来ただけなのに。
はあ、と思わず溜め息を零しながら、スプーンを置いて後輩くんに意識を向ける。
「キミはそう言うけど、結局のところ私にどうして欲しいのかな?」
「え」
「私を好きになってくれたのは、まあ、色々思うところはあるけれど嬉しいよ?でも、じゃあ、どうして欲しいのかな?」
私の質問に後輩くんは驚いたように目を見開いて、囁くような声でぽつりと言葉を落とす。
「……そんなこと、考えたこともなかったです」
「それはつまり、付き合いたいとかも?」
「はい。ただただ先輩が好きで大好きで、それを知って貰いたいってずっと思っていて」
それだけしか考えてませんでした。
「でも先輩。先輩は引かないんですか?気持ち悪いとかないんですか?」
「うん?何に対してかな?」
「いや、だって。俺は先輩を純粋に好きなだけじゃなくて、独り占めしたくて、誰にも見せたくなくて、好きで好きで、どうしようもないくらい大好きで」
怖くないんですか?
そう伺うように問われて、私は「んー」と宙を見る。
「別に怖くはないし、引く要素もないと思ったなぁ」
確かに発言は物騒で、一歩間違えたなら多分本当に実現してしまう程度には愛されているのだと数分話しただけでも解る。
それでもそれに対して「怖い」とか「気持ち悪い」とかの負の感情は湧いてこなかった。
「キミの気持ちがとても危ない要素を孕んでいたとしても、私は単純に嬉しいなぁ、って思ったよ」
ふにゃりと良く友人からは「間抜け顔」とか言われる笑みを向ければ、後輩くんはグッと何かを堪えるような顔をした後、じゃあ!とテーブルの上に両手を付いて食い気味に顔を近付けてきた。
「じゃあ先輩は俺と付き合ってくれますか!?俺のモノになってくれますか!?俺と一生一緒に生きて、俺の手で死んでくれますか!?」
顔を真っ赤に染めながら言われた言葉に、ううん?と目をぱちくりとさせる。
どさくさに紛れてプロポーズ紛いの言葉を言われた挙げ句に、聞き間違いでなければ聞き逃してはいけない、受け流してはいけない、とてもじゃないがマトモとは言えないような言葉を聞いた気がした。
「ええと、とりあえず、うん。一生一緒に生きるとか云々はまだ早いんじゃないかな?」
何せ初対面。
初めて存在を知った相手にそこまでの約束は出来はしない。
けれど後輩くんは何を解釈したのか、鼻息荒く口を開いた。
「じゃあ、これから知っていってくれるって事ですね!!」
「いやいやいやいやいや?」
「俺、先輩を全身全霊で愛します!先輩にも俺と同じくらい俺を好きになってくれるように頑張ります!」
「あれ?可笑しいな?もしかしたら意思の疎通が出来てないのかな?」
「先輩!」
「うん。何だろう」
「愛してます」
うっとりとした顔で頬を赤らめながら微笑んだ後輩くんの顔は、それはそれは幸せそうで。
流されている。これは完璧に流されているぞー、と思いながらも。
多分私の言葉は興奮しきって私とのデートプランを一人でペラペラと喋っている後輩くんには聞こえないんだろうな、と後輩くんを見ながら引き攣った笑みを浮かべる。
【大好きな宇治金時のかき氷を食べに来たら物騒なことを言う恋人が出来たようです】
なんて、意味が分からないわ。
半分以上溶けてしまった抹茶色のかき氷を見つめながら思わず呟いた。
「どうしてこうなった」