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小説企画『ライト』さまに参加させていただきました!
お題:日差し
**
「例えばさ、今日で世界が終わるとしたなら私はアイスが食べたいです。ゴリゴリくん」
「いや、世界が終わらなくても食えよアイスくらい」
「否!このカンカン照りの太陽が生命を主張するが如く輝く日差しの中、外に出るなど言語道断!」
「大仰に言ってるけどつまりは『暑いから外出たくない』ってだけだろ」
「買ってきてダーリン☆」
「断る」
気だるげにそう言えば、そんな殺生なぁぁぁと恨めしい声が狭い部屋に響いた。
「そもそも今日、うちに来た理由は勉強する為だろ。勉強しろ受験生。俺のベッドで寝るな」
「彼女が彼氏のベッドに寝て誘ってるのにその言い草はないでしょ~」
「誘ってるならもっと色気出してきてから言ってください」
「え~、これでも全開なんだけどな~」
ふむむ~、とアホな声を出す馬鹿の頭を丸めた教科書で殴る。
いったぁい、と涙目を浮かべられたが、そんな嘘泣きなんてしらん。と小さな机に向き直る。
背後には未だにゴロゴロと俺のベッドで寝ている馬鹿。
はあ、と溜息を吐く。
空調を効かせたこの部屋から出るのは本気で嫌だけれど仕方がない。
「素直に勉強するなら後でアイスくらい買ってやる」
だから勉強しろ、と伝えれば、バッと勢いよく起き上がる音。
「本当に!?」
「本当に」
その勢いに少し驚きながらもそう言ってやれば、現金なもので彼女はすぐさまベッドから降りて小さな机の向かい、つまりは俺の前に座った。
「まっつん!私、ハーゲン様食べたい!」
「さっきゴリゴリくんって言ってなかったか?」
「まっつんが奢ってくれるなら話は別だよぉ」
「お前な、ただの高校生の懐事情をなんだと思ってるんだ」
「まあまあ、少しは別けてあげるから」
「そういうこっちゃねぇんだよ」
というか、こいつは受験勉強を教えてくれと俺の元に来たんじゃなかったのか?
なんでこうもやる気がないんだ。
「お前……、本当に俺と同じ高校に受かる気があんの?俺の通ってるとこ、偏差値かなり高いんだけど」
少なくとも、この時期に笑ってアイスがどうのこうの言ってられるほど優しい学校じゃない。
俺は付いていける頭があるからなんてことないが、勉強の教えを乞う程度の頭だときついんじゃないだろうか。
「大丈夫だよぉ」
「根拠は?」
「まっつんがカテキョーしてくれるから」
「お前な……」
本日何度目の頭が痛い、だ。
こいつ本当に大丈夫か?
「そんなことよりアイスだよアイス!アイスの為に頑張ろう!おー!」
そんな馬鹿なことを言いながら、こいつは教科書に向かい始めたけれど、本当に大丈夫なのかという、これも本日何度目かの疑問。
「ま、やる気が出たんならいいわ……」
やる気のない人間に勉強を教えても何の意味もない。
俺も自分の宿題に直りつつ、時たまわからなぁい、という声に応えて教えてやった。
「あっつい…詐欺だ…」
「何が?」
夕方の沈みゆく太陽を背に、俺はゴリゴリくんソーダ味を口に含み問う。
「買ってきてくれるって言ったじゃん~!」
「買ってやるとは言ったが、買ってきてやるとは言ってない」
「詐欺だ…」
そんなことを言いながらも、こいつもゴリゴリくん梨味をしゃくしゃくと齧っていた。
ハーゲン様がどうのとか言っていたが、実際に買ってと強請られたのはゴリゴリくんで良かった。
バイトをしていない高校生の懐事情を鑑みてくれたらしい。
彼女に対して良いところを見せるとか、こいつに対しては今更だから本当に良かった。
そもそもアイスで良いところを見せるも何もない気がする。
と、いうか。
「詐欺なのはお前だろ」
「ん~?何がぁ?」
夕方とはいえ夏。
まだ頑張っている太陽から受ける暑さで足取りがふらふらとしているこいつはぼうっと答える。
「お前、勉強教わるほど馬鹿じゃねぇじゃん」
むしろかなり良い。
あの成績なら俺の必要性はなかったんじゃないかと言えば、彼女はへらりと笑って一言。
「それはまっつんと一緒に居たい口実ってもんでしょ」
にゃはは~と気の抜けたような声を出すこいつの頭を、馬鹿かと叩く。
痛い~と頭を擦るこいつに見られないようにスタスタと先を歩く。
顔の熱が上がった気がするけれど、全部夏の日差しのせいだと悪態を吐いた。
「もう夕方だから日差しも何もないような気がするんだけど~」
「うるさい黙れ」
「まっつんは恥ずかしがり屋だねぇ」
「うるさいって言ってるだろ。てか、心を読むな」
「ええ~。まっつんが声に出して言ってたんじゃん」
「そうか悪かったな黙れ」
「むぅ。理不尽だなぁ。仕方がない。まっつんの顔が熱いのは日差しのせいってことにしてあげよう!」
「お前は黙るって言葉を知らないのか!?」
お題:日差し
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「例えばさ、今日で世界が終わるとしたなら私はアイスが食べたいです。ゴリゴリくん」
「いや、世界が終わらなくても食えよアイスくらい」
「否!このカンカン照りの太陽が生命を主張するが如く輝く日差しの中、外に出るなど言語道断!」
「大仰に言ってるけどつまりは『暑いから外出たくない』ってだけだろ」
「買ってきてダーリン☆」
「断る」
気だるげにそう言えば、そんな殺生なぁぁぁと恨めしい声が狭い部屋に響いた。
「そもそも今日、うちに来た理由は勉強する為だろ。勉強しろ受験生。俺のベッドで寝るな」
「彼女が彼氏のベッドに寝て誘ってるのにその言い草はないでしょ~」
「誘ってるならもっと色気出してきてから言ってください」
「え~、これでも全開なんだけどな~」
ふむむ~、とアホな声を出す馬鹿の頭を丸めた教科書で殴る。
いったぁい、と涙目を浮かべられたが、そんな嘘泣きなんてしらん。と小さな机に向き直る。
背後には未だにゴロゴロと俺のベッドで寝ている馬鹿。
はあ、と溜息を吐く。
空調を効かせたこの部屋から出るのは本気で嫌だけれど仕方がない。
「素直に勉強するなら後でアイスくらい買ってやる」
だから勉強しろ、と伝えれば、バッと勢いよく起き上がる音。
「本当に!?」
「本当に」
その勢いに少し驚きながらもそう言ってやれば、現金なもので彼女はすぐさまベッドから降りて小さな机の向かい、つまりは俺の前に座った。
「まっつん!私、ハーゲン様食べたい!」
「さっきゴリゴリくんって言ってなかったか?」
「まっつんが奢ってくれるなら話は別だよぉ」
「お前な、ただの高校生の懐事情をなんだと思ってるんだ」
「まあまあ、少しは別けてあげるから」
「そういうこっちゃねぇんだよ」
というか、こいつは受験勉強を教えてくれと俺の元に来たんじゃなかったのか?
なんでこうもやる気がないんだ。
「お前……、本当に俺と同じ高校に受かる気があんの?俺の通ってるとこ、偏差値かなり高いんだけど」
少なくとも、この時期に笑ってアイスがどうのこうの言ってられるほど優しい学校じゃない。
俺は付いていける頭があるからなんてことないが、勉強の教えを乞う程度の頭だときついんじゃないだろうか。
「大丈夫だよぉ」
「根拠は?」
「まっつんがカテキョーしてくれるから」
「お前な……」
本日何度目の頭が痛い、だ。
こいつ本当に大丈夫か?
「そんなことよりアイスだよアイス!アイスの為に頑張ろう!おー!」
そんな馬鹿なことを言いながら、こいつは教科書に向かい始めたけれど、本当に大丈夫なのかという、これも本日何度目かの疑問。
「ま、やる気が出たんならいいわ……」
やる気のない人間に勉強を教えても何の意味もない。
俺も自分の宿題に直りつつ、時たまわからなぁい、という声に応えて教えてやった。
「あっつい…詐欺だ…」
「何が?」
夕方の沈みゆく太陽を背に、俺はゴリゴリくんソーダ味を口に含み問う。
「買ってきてくれるって言ったじゃん~!」
「買ってやるとは言ったが、買ってきてやるとは言ってない」
「詐欺だ…」
そんなことを言いながらも、こいつもゴリゴリくん梨味をしゃくしゃくと齧っていた。
ハーゲン様がどうのとか言っていたが、実際に買ってと強請られたのはゴリゴリくんで良かった。
バイトをしていない高校生の懐事情を鑑みてくれたらしい。
彼女に対して良いところを見せるとか、こいつに対しては今更だから本当に良かった。
そもそもアイスで良いところを見せるも何もない気がする。
と、いうか。
「詐欺なのはお前だろ」
「ん~?何がぁ?」
夕方とはいえ夏。
まだ頑張っている太陽から受ける暑さで足取りがふらふらとしているこいつはぼうっと答える。
「お前、勉強教わるほど馬鹿じゃねぇじゃん」
むしろかなり良い。
あの成績なら俺の必要性はなかったんじゃないかと言えば、彼女はへらりと笑って一言。
「それはまっつんと一緒に居たい口実ってもんでしょ」
にゃはは~と気の抜けたような声を出すこいつの頭を、馬鹿かと叩く。
痛い~と頭を擦るこいつに見られないようにスタスタと先を歩く。
顔の熱が上がった気がするけれど、全部夏の日差しのせいだと悪態を吐いた。
「もう夕方だから日差しも何もないような気がするんだけど~」
「うるさい黙れ」
「まっつんは恥ずかしがり屋だねぇ」
「うるさいって言ってるだろ。てか、心を読むな」
「ええ~。まっつんが声に出して言ってたんじゃん」
「そうか悪かったな黙れ」
「むぅ。理不尽だなぁ。仕方がない。まっつんの顔が熱いのは日差しのせいってことにしてあげよう!」
「お前は黙るって言葉を知らないのか!?」