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【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加させて頂きました!
お題:見えない鎖
注意:弟→姉
**
「良く似合ってるよ」
そう言ってにこりと笑った男に、唾を吐き捨てたくなった。
いや、見も知らない人間だったならしていたかもしれない。
けれど今、私の目の前に立っているのは何かの間違いでなければ私の弟だ。
何かの間違いであって欲しいと願いながらも、18年間過ごしてきた中ではそうそう見間違うことも出来ないだろう。
「なんでこんなことするの?」
だからとりあえず私は、弟に着けられたばかりの首の異物を指に引っ掛けながら問い掛ける。
弟は笑顔を崩さないままに「姉さんに似合うと思ったから」と答えやがった。
ふざけて言っているのかと笑いたくなるが、弟の顔は本気でそう思っているから言ったのだと分かる。
「その首輪、気に入らない?」
「気に入ったら私は大層なドMね」
「気に入ると思ったのに」
残念だな、と弟は言う。
まったくそうは思っていないのだろうし、万が一にも私が気に入るだなんてことも思っていないのだろう。
そもそも何で首輪なんて着けられなければいけないのか。
そこが疑問だ。
家に帰ってすぐの出来事に私は未だに対応出来ていない。
むしろ突然同意なしに首輪を着けられて喜んだりなんて出来ないけれど。
だから、どうしてこうなったのか。
脳みそが鈍く動きながら考える。
考えて、当然ながら解らなくて、私の首に首輪を嵌めた張本人である弟に再度聞いてみることにする。
「で?これは何なの?何かの遊び?」
「遊びじゃないよ」
「じゃあなんなのよっ」
答えの見えない問答に半ば疲れながら投げやりに言葉を発した。
「だってこうしたら姉さんが僕のモノみたいでしょ?」
「はあ?」
「誰のモノでもない。僕のモノの姉さんが欲しいと思ったから沢山悩んで買ったんだよ」
本当に良く似合ってる。
満足そうに頷く弟の言語を、私は一ミリも理解できそうにない。
首輪を嵌めたら私は弟のモノになるというのか。
馬鹿らしいと一笑する。
「私は誰のモノでもないけど、あんたの姉である自覚はあるのよ?それじゃあ駄目なの?」
「ダメ。もうそれだけじゃ我慢できなくなっちゃったんだもん」
恍惚とした笑みを見せる弟の目はどこか暗く淀んでいて。
とてもじゃないが「冗談でしたー」で済むような話では無さそうだ。
それを理解した瞬間、ぞわりと背筋が寒くなり途端に目の前に居る弟が怖くなった。
まるで知らない誰かを見ているような気分だ。
弟はそんな私の様子など気にせず更に驚くようなことを言う。
「鎖もね、本当は用意したかったんだけど中々良いのが見付からなくて」
ごめんね、と謝る弟に謝られる意味が分からない。
第一、鎖なんてなくったって――
(もう繋がれてるようなもんじゃない)
首輪を嵌められ、自分のモノにしたいと言われた時点で、私は弟に見えない鎖を着けられたような錯覚さえ覚えたのだから。
きっと私の全てを握られるのも近いのではないかと、乾いた笑いが漏れ出た。
お題:見えない鎖
注意:弟→姉
**
「良く似合ってるよ」
そう言ってにこりと笑った男に、唾を吐き捨てたくなった。
いや、見も知らない人間だったならしていたかもしれない。
けれど今、私の目の前に立っているのは何かの間違いでなければ私の弟だ。
何かの間違いであって欲しいと願いながらも、18年間過ごしてきた中ではそうそう見間違うことも出来ないだろう。
「なんでこんなことするの?」
だからとりあえず私は、弟に着けられたばかりの首の異物を指に引っ掛けながら問い掛ける。
弟は笑顔を崩さないままに「姉さんに似合うと思ったから」と答えやがった。
ふざけて言っているのかと笑いたくなるが、弟の顔は本気でそう思っているから言ったのだと分かる。
「その首輪、気に入らない?」
「気に入ったら私は大層なドMね」
「気に入ると思ったのに」
残念だな、と弟は言う。
まったくそうは思っていないのだろうし、万が一にも私が気に入るだなんてことも思っていないのだろう。
そもそも何で首輪なんて着けられなければいけないのか。
そこが疑問だ。
家に帰ってすぐの出来事に私は未だに対応出来ていない。
むしろ突然同意なしに首輪を着けられて喜んだりなんて出来ないけれど。
だから、どうしてこうなったのか。
脳みそが鈍く動きながら考える。
考えて、当然ながら解らなくて、私の首に首輪を嵌めた張本人である弟に再度聞いてみることにする。
「で?これは何なの?何かの遊び?」
「遊びじゃないよ」
「じゃあなんなのよっ」
答えの見えない問答に半ば疲れながら投げやりに言葉を発した。
「だってこうしたら姉さんが僕のモノみたいでしょ?」
「はあ?」
「誰のモノでもない。僕のモノの姉さんが欲しいと思ったから沢山悩んで買ったんだよ」
本当に良く似合ってる。
満足そうに頷く弟の言語を、私は一ミリも理解できそうにない。
首輪を嵌めたら私は弟のモノになるというのか。
馬鹿らしいと一笑する。
「私は誰のモノでもないけど、あんたの姉である自覚はあるのよ?それじゃあ駄目なの?」
「ダメ。もうそれだけじゃ我慢できなくなっちゃったんだもん」
恍惚とした笑みを見せる弟の目はどこか暗く淀んでいて。
とてもじゃないが「冗談でしたー」で済むような話では無さそうだ。
それを理解した瞬間、ぞわりと背筋が寒くなり途端に目の前に居る弟が怖くなった。
まるで知らない誰かを見ているような気分だ。
弟はそんな私の様子など気にせず更に驚くようなことを言う。
「鎖もね、本当は用意したかったんだけど中々良いのが見付からなくて」
ごめんね、と謝る弟に謝られる意味が分からない。
第一、鎖なんてなくったって――
(もう繋がれてるようなもんじゃない)
首輪を嵌められ、自分のモノにしたいと言われた時点で、私は弟に見えない鎖を着けられたような錯覚さえ覚えたのだから。
きっと私の全てを握られるのも近いのではないかと、乾いた笑いが漏れ出た。