過去拍手お礼文

※事後表現あります。



朝起きて、ベッドからのそりと身体を起こす。
瞬間、腰に確かな痛みを感じて「ああ…」と呟いた。


「ヤりすぎですよー」


隣で心地よさそうに眠っている男の鼻を摘まみながらそう言えば「う、ん」と呻く恋人。
全く。すっきりとした顔をしてくれてますねー。
こっちは全身疲労でしょうがないのに。
はあ、と溜め息を吐きながらどっこいしょと清潔なものに取り換えられているシーツに手を付きながら、ベッドから降りる。
んー、と身体を伸ばせば、背中にも痛みを感じた。


「ええ…」


もしかしなくても背中に噛み痕でもあるのだろうか。
蕩けるような行為の最中、何度か思いっきり噛まれた覚えがあるから自分の身体を見るのが怖い。
どうか制服で隠れる場所でありますように、と願いながらバスルームに向かう。
粗方綺麗にされているけれど、流石に行為を行った後そのままというのは気持ちが悪い。舐めまくられているわけだし。


裸のままだからそのままバスルームに入り、キュッと捻った蛇口。
頭上から降り注ぐ冷たい水は徐々に暖かくなっていく。


(今日は一限から体育だったけ…)


仮病を使いたい疲労感だ。
セックスしたから疲れて体育できませんー。なんて言えるわけもないのでちゃんとやるけれど。
出来れば適当に流せるのがいいなぁと思いながら髪と身体を清める。


「あー、さっぱりした」


そう言いながら髪をタオルで拭きながらバスルームを出る。
そのままリビングに行けば、そこにはきちんと服を着込んだ男。


「おはよう。具合はどうだ?」

「おはようございます。そうですね。すこぶるいいですよ」


ニヤリとした顔に口端を引き攣らせながら、嫌味に嫌味で返す。


「メシ、何にする?」

「あれ?珍しいですね。作ってくれるんですか?」

「たまにはな」

「……今日は雪ですか」

「お前、またベッドに行きたいのか」

「エンリョシマス」

「なら口は慎め。あと服を着ろ」

「せんせぇはお母さんですか」


せんせぇ。そう、先生。
私とそういうことをしちゃってる恋人は、教育者だ。
世も末だね、と思いながらきちんと畳まれている下着に手を伸ばす。
するりと足に通した下着の感触に、ぶるりと震える。
たった数時間前には身に着けていたものだというのに、こんなとこまで敏感にならなくてもいいんじゃないだろうか。
確実に開発されている気がする。


「せんせぇのえっち」

「男は誰でもえっちなんだよ」


聞こえてたか。
失敗失敗とべぇっと舌を出して、さっさと制服を身に着ける。
服を着たらやることはもうない。
今日の授業に使う教科書は確認してもう鞄に入っているし、体操服も持ってきている。
お泊りとはいえ、そこのところは完璧だ。


「生徒会長サマ。卵はスクランブルでいいですか」

「いいですよ。食べられるものなら構いません」

「炭って食えるんだよな」

「せんせぇは発達途上の生徒に炭を食べさせるんですか」

「あー、お前胸でかくなってきたよな」

「発達から胸にいかないでくださいよ」


確かに大きくなってきたけど。
ああ、そろそろ新しい下着を買いに行かないと。


「あ、せんせぇ。勉強してもいいですか」

「生徒会長サマは大変だな」

「そう思うなら少しは宿題減らしてくださいよ」

「お前物理得意だろ」

「私基準の問題とか作ったら偏差値あがりそうですよね」

「自分で言うか」

「言いますよ。当たり前じゃないですか」


ソファーの上に放られている鞄の中から、今日の宿題を取り出す。
かなり難しく作られているけれど、こんなの私にとってはどうということもない。
それに難しく、といっても、普通に考えればというだけで、特進クラスにとっては普通だ。
うん。10分あれば解けるかな。


「今度のテスト、お前基準で一回作ってみるかな」


フライパンを操りながらそんなことをいう先生に「やめてあげてください」とすかさず突っ込む。


「クラス平均下がると面倒になるのはせんせぇですよ」

「お前レベルになれば様々だろ」


そんなことを言いながらも、そんなことは絶対にしないだろうとわかっているので、呆れたように肩を竦める。


「もー、なんでもいいんで早く朝ごはん作ってください。お腹空きました」

「はいはい」


先生はおざなりな返事を返すと、料理に集中したようだ。
私も勉強に集中しようとテーブルに向かった。







「あ、そういえばせんせぇ。今日の小テスト、一部の生徒にはバレてますよ」


朝ごはんも食べ終わり、少しのまったりとした時間。
思い出したようにそういえば、先生は極悪人のような顔をする。


「へぇ。じゃあそれに見合った点数を出してくれるんだろうなぁ」

「……ヒトが悪い」

「そんな俺が好きなんだろ?」


自身満々の先生に、「まあ、そうですね」となんてことないように返す。


「可愛くねぇ」

「私にそんなもの求めないでください」

「冗談。お前、結構可愛いよ」

「……そういうせんせぇも可愛くて、私大好きです」


私の身体に独占欲の噛み痕を残すかわいらしい先生が、大好きです。


にやりと先生を真似して笑えば、先生は私の頭をくしゃくしゃと掻き雑ぜた。
照れ隠しだとわかっているので更ににやける。


「っと、じゃれてる暇もうねぇな。ほら、もうそろそろ学校行け」

「はいはい。わかってますよー」


時間差で部屋を出なければいけない関係というのも、なかなかにスリリングで楽しい。
これはゲームではないし、ちゃんとした恋愛ではあるけれど、そういう感覚でいないとこんな関係は耐えられないだろうなぁとも思う。


「早く卒業しろよ」

「無茶言いますね」

「事実だろ。早く結婚したい」


私の身体を抱きしめて、肩に顔を埋めながらそんなことを言う先生に苦笑する。


「まだ独身生活楽しんでください。浮気し放題ですよ」

「いってきます」

「お前も。浮気するなら相手はどうなってもいいやつにしろよ」


途端にひやりと空気が冷たくなった。
「はあ。何する気ですか」と言えば、先生は妖艶に微笑みながら「なんでもするな」と囁いた。


「怖いですねぇ」

「そう思うなら大人しくしとけよ」

「はぁい」


元より、そのつもりだ。


「じゃあまた学校でな」

「…ん、…はい」


頭を大きな掌で包まれて、唇を奪われる。
軽めの接触に、珍しいと思いながらも、もう本当に時間もないので余韻も程々に鞄を手に玄関へ。


「おう。いってらっしゃい」


ああ、うん。
たぶんこれが幸せだ。
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