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聖夜と嗤う猫/嘘つきが吐いた嘘
この世界に神様が居たとして、アタシは決してその神様を許しはしないだろう。
アタシという存在を生んだ――神様を。
「セシル、何か考え事?」
「目の前に素敵な男が居るのにそんなことはしないわよ」
「嘘つきだなぁ」
「あら?本当よ?」
「そうやってオレ達を手のひらの上で転がすんだもの。本当にセシルは狡いや」
「んふふ、なんのことやら、というやつね」
そう言ってアタシは隣に眠る愛人の男に擦り寄った。
優しく頭を撫でるこの愛人は、何が楽しいのか性行為を求めない。
アタシをただ猫可愛りするだけ。
アタシは別に不満はなかった。これはこれで楽しいもの。
肌を求めない時にこの愛人の元にやって来ては猫のように撫でられる。
アタシはいつから飼い猫になっていたのかしらね?
「セシルは神様を信じる?」
「あら?アタシにその質問をするのね」
「まあ、なんとなくね」
「そうねぇ……」
少し逡巡して、そうして答えた。
「アタシはアタシという存在を生み出した神を許さないわ」
「信じるか信じないかの話をしていたんだけどなぁ」
そう言って残念そうに肩を竦める愛人に、アタシは笑って。
「まともに応えたりなんてしないわよ」
「どうして?」
「アタシは嘘つき。嘘つきな――腐っても情報屋よ?そんな女を買い殺しに出来ていたつもりだったかしら?」
「……なぁんだ。バレてたのか」
「んふふ。アタシ、クスリをする人間は嫌いなの」
アナタからはその嫌いな匂いがプンプンしたわよ。
「猫じゃなくて犬みたいだね」
「売人のアナタに言われたくはないけれどもね」
「オレを殺す?」
「いいえ」
「殺さないの?」
「ええ、アタシの手では殺さないわよ。大元の情報を吐くまで、じっくりと拷問部に回してあげるわ」
「酷いね、セシルは。オレが拒否しないの知ってるくせに」
「そうよ。酷い女なの、アタシ」
この男が情報を吐かないことも分かっていたけれども。
それでもアタシはそうすることでしかアタシの愛人として生きてくれたこの男を救う方法を知らない。
クスリに手を染めたらもう戻れない。本人の意思なんて関係なく、例外もなく。
アタシはクスリを使わされた愛人を助けてやることも出来ない。
精々殺してあげる程度しか、アタシには出来ない。
一時でもアタシを癒してくれた、これはただの傲慢な慈悲だ。
「アタシは、アナタのこと結構気に入っていたのよ」
「最後にそれが聞けて、オレは満足だ」
その言葉が最後。別離の言葉。
「ばいばい、オレの可愛い人」
「ええ、永遠に、サヨウナラ」
きっともう。彼の存在自体アタシは忘れてしまうのだろう。
それがアタシの生きる道。
この聖夜という時。
神様という存在がいるのなら聞いてみたいわ。
こんな魔女みたいな存在を生み出して、何がしたかったの?とでもね。
この世界に神様が居たとして、アタシは決してその神様を許しはしないだろう。
アタシという存在を生んだ――神様を。
「セシル、何か考え事?」
「目の前に素敵な男が居るのにそんなことはしないわよ」
「嘘つきだなぁ」
「あら?本当よ?」
「そうやってオレ達を手のひらの上で転がすんだもの。本当にセシルは狡いや」
「んふふ、なんのことやら、というやつね」
そう言ってアタシは隣に眠る愛人の男に擦り寄った。
優しく頭を撫でるこの愛人は、何が楽しいのか性行為を求めない。
アタシをただ猫可愛りするだけ。
アタシは別に不満はなかった。これはこれで楽しいもの。
肌を求めない時にこの愛人の元にやって来ては猫のように撫でられる。
アタシはいつから飼い猫になっていたのかしらね?
「セシルは神様を信じる?」
「あら?アタシにその質問をするのね」
「まあ、なんとなくね」
「そうねぇ……」
少し逡巡して、そうして答えた。
「アタシはアタシという存在を生み出した神を許さないわ」
「信じるか信じないかの話をしていたんだけどなぁ」
そう言って残念そうに肩を竦める愛人に、アタシは笑って。
「まともに応えたりなんてしないわよ」
「どうして?」
「アタシは嘘つき。嘘つきな――腐っても情報屋よ?そんな女を買い殺しに出来ていたつもりだったかしら?」
「……なぁんだ。バレてたのか」
「んふふ。アタシ、クスリをする人間は嫌いなの」
アナタからはその嫌いな匂いがプンプンしたわよ。
「猫じゃなくて犬みたいだね」
「売人のアナタに言われたくはないけれどもね」
「オレを殺す?」
「いいえ」
「殺さないの?」
「ええ、アタシの手では殺さないわよ。大元の情報を吐くまで、じっくりと拷問部に回してあげるわ」
「酷いね、セシルは。オレが拒否しないの知ってるくせに」
「そうよ。酷い女なの、アタシ」
この男が情報を吐かないことも分かっていたけれども。
それでもアタシはそうすることでしかアタシの愛人として生きてくれたこの男を救う方法を知らない。
クスリに手を染めたらもう戻れない。本人の意思なんて関係なく、例外もなく。
アタシはクスリを使わされた愛人を助けてやることも出来ない。
精々殺してあげる程度しか、アタシには出来ない。
一時でもアタシを癒してくれた、これはただの傲慢な慈悲だ。
「アタシは、アナタのこと結構気に入っていたのよ」
「最後にそれが聞けて、オレは満足だ」
その言葉が最後。別離の言葉。
「ばいばい、オレの可愛い人」
「ええ、永遠に、サヨウナラ」
きっともう。彼の存在自体アタシは忘れてしまうのだろう。
それがアタシの生きる道。
この聖夜という時。
神様という存在がいるのなら聞いてみたいわ。
こんな魔女みたいな存在を生み出して、何がしたかったの?とでもね。
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