2013年バレンタイン
「は?ふざけんな。ブス」
ああ、また言ってしまった。
内心での何度目になるかも分からない後悔に、思わず眉間に皺が寄る。
こんな事を言う気は更々ないのに、いつだって口を突いて出てくるのは正反対の言葉ばかり。
こんな事ではいつか愛想を尽かされかねない。
それでも素直に言うなんて出来なくて、結局いつもの通り。
「ふざけるなって事はないと思うんだけど」
「ハッ。それ以外になんて言えって?大体お前からチョコが欲しいとか微塵も思ってねぇんだよ」
嘘だ。
本当は欲しくて堪らない。
くれるのかなとか考え出したら夜も眠れなかったくらい。
なのになんで俺はこんな言葉しか言えないんだよ!
「バレンタインなんだから貰ってくれてもいいんじゃない?」
「いらねぇ。わざわざブスから貰わなくても足りてるし」
「……はぁ。分かった。もういい」
諦めたようにため息を吐いて、踵を返した彼女になんて言っていいのか分からずソッポを向く。
なんだこれ。なんでこんなことにならなきゃいけないんだ?
悩んだ所で俺が素直じゃないからとしか言い様がないのだけど。
「……あぁー」
顔を手で覆ってしゃがみ込む。
(マジで愛想尽かされたらどうしよう)
嫌われても可笑しくない事ばかり言ってる癖に、嫌われたくないとかホント俺バカじゃねぇ?
素直になりたい。
格好悪いとこばかり見せてる気がする。
むしろアイツが何で今まで付き合ってくれてんのかが意味わかんねぇ。
俺だったらこんな性格の奴すぐ別れてる。
「なんで素直になれねぇかなぁ……」
言った所で理由なんて分かるわけもないのだけど。
**
その頃の彼女。
(今頃は後悔の念で一杯とみた)
綺麗に包装したチョコレートの箱を持ちながら、恋人の今の状態を予測する。
ちなみにその予測が外れた事が無かったりするのを彼女は知らない。
(全く。後悔するくらいなら言わなきゃいいのになー)
そして全くもって堪えていない。
恋人に冷たくあしらわれるのはもう慣れたし。
それに冷たいばかりじゃない事を知っている。
例えば一緒に歩く時、遅いだの鈍いだの言うくせに普段の歩幅よりも余程ゆったりと歩いてくれるし。
毎日だるいだの面倒だの言いながら登下校は一緒でいつも車道側に居てくれる。
お昼はだるそうにしながら迎えに来てくれるし、お弁当を作ればいらないとか不味いとか言いながら残された事はない。
素直じゃないだけなのだ。
それが分かってしまえばなんてことはない。
これっぽっちも傷付かないというのは嘘になるけれど、言われた私より言った相手の方が傷付いた顔をしていたらそりゃあねぇ?
馬鹿らしくてほんと。
(かわいいなぁ)
にやにやと緩む頬を隠しきれない。
嫌いだったらとっくに別れている。
だけど今もまだ付き合っているのは純粋に好きだからだ。
「さて、鞄にでも入れとけばいいかなー」
そうすれば受け取って、来月辺りにでも真っ赤に染まった顔でツンデレながら何かを渡してくれるのだろう。
(楽しみだなぁ)
きっとその時まではそわそわとしている恋人の姿を思い浮かべて。
ふふ。と笑いを零した。
ああ、また言ってしまった。
内心での何度目になるかも分からない後悔に、思わず眉間に皺が寄る。
こんな事を言う気は更々ないのに、いつだって口を突いて出てくるのは正反対の言葉ばかり。
こんな事ではいつか愛想を尽かされかねない。
それでも素直に言うなんて出来なくて、結局いつもの通り。
「ふざけるなって事はないと思うんだけど」
「ハッ。それ以外になんて言えって?大体お前からチョコが欲しいとか微塵も思ってねぇんだよ」
嘘だ。
本当は欲しくて堪らない。
くれるのかなとか考え出したら夜も眠れなかったくらい。
なのになんで俺はこんな言葉しか言えないんだよ!
「バレンタインなんだから貰ってくれてもいいんじゃない?」
「いらねぇ。わざわざブスから貰わなくても足りてるし」
「……はぁ。分かった。もういい」
諦めたようにため息を吐いて、踵を返した彼女になんて言っていいのか分からずソッポを向く。
なんだこれ。なんでこんなことにならなきゃいけないんだ?
悩んだ所で俺が素直じゃないからとしか言い様がないのだけど。
「……あぁー」
顔を手で覆ってしゃがみ込む。
(マジで愛想尽かされたらどうしよう)
嫌われても可笑しくない事ばかり言ってる癖に、嫌われたくないとかホント俺バカじゃねぇ?
素直になりたい。
格好悪いとこばかり見せてる気がする。
むしろアイツが何で今まで付き合ってくれてんのかが意味わかんねぇ。
俺だったらこんな性格の奴すぐ別れてる。
「なんで素直になれねぇかなぁ……」
言った所で理由なんて分かるわけもないのだけど。
**
その頃の彼女。
(今頃は後悔の念で一杯とみた)
綺麗に包装したチョコレートの箱を持ちながら、恋人の今の状態を予測する。
ちなみにその予測が外れた事が無かったりするのを彼女は知らない。
(全く。後悔するくらいなら言わなきゃいいのになー)
そして全くもって堪えていない。
恋人に冷たくあしらわれるのはもう慣れたし。
それに冷たいばかりじゃない事を知っている。
例えば一緒に歩く時、遅いだの鈍いだの言うくせに普段の歩幅よりも余程ゆったりと歩いてくれるし。
毎日だるいだの面倒だの言いながら登下校は一緒でいつも車道側に居てくれる。
お昼はだるそうにしながら迎えに来てくれるし、お弁当を作ればいらないとか不味いとか言いながら残された事はない。
素直じゃないだけなのだ。
それが分かってしまえばなんてことはない。
これっぽっちも傷付かないというのは嘘になるけれど、言われた私より言った相手の方が傷付いた顔をしていたらそりゃあねぇ?
馬鹿らしくてほんと。
(かわいいなぁ)
にやにやと緩む頬を隠しきれない。
嫌いだったらとっくに別れている。
だけど今もまだ付き合っているのは純粋に好きだからだ。
「さて、鞄にでも入れとけばいいかなー」
そうすれば受け取って、来月辺りにでも真っ赤に染まった顔でツンデレながら何かを渡してくれるのだろう。
(楽しみだなぁ)
きっとその時まではそわそわとしている恋人の姿を思い浮かべて。
ふふ。と笑いを零した。