2015年クリスマス

「ごっしゅじーん!」

「……朝っぱらからなんですか……シルヴィアさん?」

「わぁお、お怒りですかご主人」

「こんな朝早くから起こされたらな……」


俺の上に乗って何やらキラキラとした目をしているシルヴィアはとりあえず放っておいて、ふあっと欠伸をする。
ああ、今日は久しぶりの休みだっていうのに、こいつは寝かせる気がないらしい。
そもそも今日の休みだってシルヴィアがどうしてもと言うから忙しい中、もぎ取ったというのに。


「で?シルキー。今日なんかあるのか」

「うふふふ。今日はクリスマスですよ!恋人達の祭典ですよ!」

「……で?」

「夫婦仲を深める為にも、今日は一日まったりベタベタしましょう!」

「くだらなっ」

「むぅ。くだらないとはなんですかぁ!」

「そんなことしなくても、もう十分仲は良いだろ」

「ご、ご主人…!」

「そういうことだから寝かせてくれ」

「もう!ご主人!」

「後で幾らでも相手してやるから……おやすみ」


シルヴィアの声を無視してさっさと布団の中に潜り込めば、シルヴィアは怒ったような声を発していたけれど、それでも起こそうとはしなかった。
こういうところで変な気遣いをする女だ。いや、吸血鬼か?どちらでも同じか。シルヴィアがシルヴィアである以上、それに拘ることはない。


「……もう。本当に後で相手して貰いますからね!」


その声を最後に、シルヴィアは寝室から出て行ったようだ。
俺の意識も深く沈んでいくように闇の中へと落ちていった。







「……重い」

「『後で幾らでも相手してやる』って言ったのはご主人ですよ?」

「だからって、ずっと膝の上に居ることはないだろ」

「私はご主人に構われてHappyなので問題ないです」

「俺は重いけどな」

「重い重い連呼しないでくださいよ!」

「いやでも、お前、ちょっと太ったんじゃないのか?」

「っひゃあ!お腹摘ままないでください!ご主人のえっち!」

「えっちって……仲良くしたいんだろ?」

「そういう雰囲気じゃなかったのに……」

「はいはい。愛してるよ。俺の吸血鬼」

「……騙されてる感半端ないですが、騙されてあげます。私もご主人のことだぁい好きですから!」

「……俺が言うのもなんだが、お前ちょろいな」

「ご主人にだけです」
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