2015年クリスマス
「さてさてやって来ましたクリスマス!」
「……ああ、今年も来たのか……」
「なんですかその顔。こぉんな可愛い女の子が傍に居てそんな遣る瀬無さそうな顔しますか普通」
「……この異次元空間で元気溌剌としてられるお前が変なんだよ」
「そうですかね?普通じゃありません?」
「日本人形と西洋人形が刃物持って追っかけてくるのが普通なら、そんな日常とはおさらばしたいわ!」
「先輩。騒ぐと見つかりますよー」
ハッとして口を両手で抑える。
今現在、何故か俺と神山は日本人形と西洋人形に追われるという現象に陥っていた。
「いやぁ、まさかクリスマスにひとりかくれんぼをした生徒の近くに居たせいで、亜種のひとり鬼ごっこに巻き込まれるとは思いませんでしたねー」
「その生徒は目の前で消えたけどな……」
「心霊現象に生半可な気持ちで手を出した報いですよ」
「助けようとは思わねぇの?」
「自業自得なことを?私がですか?」
まさかそんなことをする訳がないだろうと、そう言うように神山は笑った。
神山がそんな風に言うだなんて思わなくて、少し驚く。
神山は俺が何かに巻き込まれたら何も言わずに助けてくれる。
だから、他もそうなのだとばかり思っていた。
けれどどうやら違ったようだ。
「お前は俺だから助けてくれんの?」
訊いたのは無意識。
神山はその大きな黒い瞳を更に大きく見開きながら、口をぽかんと開けていた。
「……そんなことを訊かれるとは思いませんでした」
二体の人形から隠れている状態だから声は小さく。
身を寄せ合った俺たちの距離はとても近い。
「そうですよ」
神山はぽつりと言葉を紡ぐ。
「私は、先輩だから助けるんです」
「神や」
『見ぃツケタ』
「うわっ」
「おやまぁ」
突然目の前に刃物を持った日本人形が現れて、思わず悲鳴をあげる。
神山はしげしげとその日本人形を見ていた。
「赤」
「っへ」
「いえいえーなんでもないですよ」
なんでもない。そう言われても気になるものは気になると言うか、この極限状態だと逃避行動をしたくなるというか。
それが仇となった。
日本人形が着ている赤い着物に、明らかにシミのような黒いものが見えたのだ。
まさか。っと神山を思わず見れば、あ、気付いちゃいましたかーと何とも気の抜けた声を掛けられた。
「お前を呼び出したのは捕まっちゃったんだね」
『うフフフフ』
笑うだけの日本人形に、神山は笑顔で制服のポケットからお札を取り出した。
「ヒトに呼ばれヒトを殺めた霊魂よ。お前にはもう地獄に堕ちる道しかない」
俺を庇うように立ち上った神山は、日本人形に向けてそう言うとお札を投げつけた。
耳障りな、形容し難い悲鳴が辺りに響く。
そうして日本人形はぽとりと床に落ちると、すぅっとこの世から消えるように静かに姿を消した。
「さてさて、今年はそんなにデンジャラスなことが起きないですねぇ」
「……もう十分だよ……」
日本人形の声が耳に張り付いて離れない。
三日は夢に現れそうだ。
「と、言いたいとこですけども、忘れてる存在がひとつありますよねぇ?」
「は」
「西洋人形、何処に消えたんでしょうね?探しにこの異次元空間一周しましょうか」
「い、いやだ」
「まぁまぁそう言わずに。探さないとここから出られませんよー」
「やっぱりクリスマスなんてロクなことがない……」
「私は先輩と居られてHappyですよ」
「無駄に発音良くすんな。むかつくから」
「ふふ。あ、そういえば先輩今日は倒れませんね」
「こんなところで倒れたら洒落にならねぇからな」
「引き摺るのは大変そうなんで、その心意気は有り難いですよー」
さて。では西洋人形狩りに行きましょうか?
にっこりと笑った神山に、おう、と小さく引き攣った顔をしながら返した。
「……ああ、今年も来たのか……」
「なんですかその顔。こぉんな可愛い女の子が傍に居てそんな遣る瀬無さそうな顔しますか普通」
「……この異次元空間で元気溌剌としてられるお前が変なんだよ」
「そうですかね?普通じゃありません?」
「日本人形と西洋人形が刃物持って追っかけてくるのが普通なら、そんな日常とはおさらばしたいわ!」
「先輩。騒ぐと見つかりますよー」
ハッとして口を両手で抑える。
今現在、何故か俺と神山は日本人形と西洋人形に追われるという現象に陥っていた。
「いやぁ、まさかクリスマスにひとりかくれんぼをした生徒の近くに居たせいで、亜種のひとり鬼ごっこに巻き込まれるとは思いませんでしたねー」
「その生徒は目の前で消えたけどな……」
「心霊現象に生半可な気持ちで手を出した報いですよ」
「助けようとは思わねぇの?」
「自業自得なことを?私がですか?」
まさかそんなことをする訳がないだろうと、そう言うように神山は笑った。
神山がそんな風に言うだなんて思わなくて、少し驚く。
神山は俺が何かに巻き込まれたら何も言わずに助けてくれる。
だから、他もそうなのだとばかり思っていた。
けれどどうやら違ったようだ。
「お前は俺だから助けてくれんの?」
訊いたのは無意識。
神山はその大きな黒い瞳を更に大きく見開きながら、口をぽかんと開けていた。
「……そんなことを訊かれるとは思いませんでした」
二体の人形から隠れている状態だから声は小さく。
身を寄せ合った俺たちの距離はとても近い。
「そうですよ」
神山はぽつりと言葉を紡ぐ。
「私は、先輩だから助けるんです」
「神や」
『見ぃツケタ』
「うわっ」
「おやまぁ」
突然目の前に刃物を持った日本人形が現れて、思わず悲鳴をあげる。
神山はしげしげとその日本人形を見ていた。
「赤」
「っへ」
「いえいえーなんでもないですよ」
なんでもない。そう言われても気になるものは気になると言うか、この極限状態だと逃避行動をしたくなるというか。
それが仇となった。
日本人形が着ている赤い着物に、明らかにシミのような黒いものが見えたのだ。
まさか。っと神山を思わず見れば、あ、気付いちゃいましたかーと何とも気の抜けた声を掛けられた。
「お前を呼び出したのは捕まっちゃったんだね」
『うフフフフ』
笑うだけの日本人形に、神山は笑顔で制服のポケットからお札を取り出した。
「ヒトに呼ばれヒトを殺めた霊魂よ。お前にはもう地獄に堕ちる道しかない」
俺を庇うように立ち上った神山は、日本人形に向けてそう言うとお札を投げつけた。
耳障りな、形容し難い悲鳴が辺りに響く。
そうして日本人形はぽとりと床に落ちると、すぅっとこの世から消えるように静かに姿を消した。
「さてさて、今年はそんなにデンジャラスなことが起きないですねぇ」
「……もう十分だよ……」
日本人形の声が耳に張り付いて離れない。
三日は夢に現れそうだ。
「と、言いたいとこですけども、忘れてる存在がひとつありますよねぇ?」
「は」
「西洋人形、何処に消えたんでしょうね?探しにこの異次元空間一周しましょうか」
「い、いやだ」
「まぁまぁそう言わずに。探さないとここから出られませんよー」
「やっぱりクリスマスなんてロクなことがない……」
「私は先輩と居られてHappyですよ」
「無駄に発音良くすんな。むかつくから」
「ふふ。あ、そういえば先輩今日は倒れませんね」
「こんなところで倒れたら洒落にならねぇからな」
「引き摺るのは大変そうなんで、その心意気は有り難いですよー」
さて。では西洋人形狩りに行きましょうか?
にっこりと笑った神山に、おう、と小さく引き攣った顔をしながら返した。