2015年ハロウィン
「リオネちゃ~ん?この世界地図はなんなのかなぁ?」
「あ、アルデ……ご、ごめんなさ……っ」
「あたしは何かなぁ?って聞いてるだけだよリオネちゃん」
ピコピコと黒い猫耳を動かしながら、ぺしぺしと黒い手足でリオネの目の前の布団を叩く。
ふわふわの栗毛の少年――リオネ――はしょんもりとしながら寝間着の端を握って項垂れていた。
齢6才。この幼い少年は、見た目にそぐわぬ莫大な魔力を有する『魔法使い』である。
そんな魔法使いリオネににっこりと微笑みながら、世界地図の描かれた布団を叩くのが、リオネに呼ばれた使い魔である黒猫――アルデルビア。まあ、あたしだ。
主な仕事はこの幼い魔法使いの世話を焼くこと。
本来なら魔法関連の仕事を手伝うのが使い魔の仕事なのだが、何せリオネはまだ幼い。
しかも身内があたし以外居ないときた。
魔法使いと使い魔は一心同体。
呼び出した魔法使いの為に尽くすのが使い魔の仕事。
そう言い聞かせてこの幼い魔法使いに従っていたら、見事に絆され早2年。
――おむつも取れた筈なのに未だにおねしょをしてしまう主人をたしなめるのもあたしの仕事だ。
「お手洗いに行きたいならあたしを起こしてくれればいいっていつも言ってるじゃない」
「でもボクもう6才なのに……それにアルデに格好悪いとこ見せたくないんだもん」
「御託はいいんのぉ。リオネはまだまだ子供なんだから甘えていいのよ?」
「……そういうことじゃないもん」
「意味がわからないわ」
むぅ、と唇を尖らせて拗ねてしまったらしいご主人サマに苦笑して、とある言葉を口にした。
「もう。むくれてないであたしに魔法を見せて。ご主人サマ」
「……アルデ、ボクの魔法みたいの?」
「見たい見たい」
うんうんと頷けば、リオネは今まで拗ねていたのが嘘のように嬉しそうに笑って、紅葉のような小さな掌を世界地図の描かれた布団に翳すと呪文を唱える。
「風の精霊と契約せしリオネが命じる。そよ風のように凪いて布団を乾かせ」
リオネを中心とした魔法陣が広がると、ぶわっと風が部屋の中で巻き上がった。
「乾いたね。さすがリオネ」
「えへへ」
リオネは照れたように顔を赤らめると、くしゃくしゃとふわふわの栗毛の髪を掻きまぜる。
照れた時のリオネの癖だ。
こういうところも可愛いのよねぇ、あたしのご主人サマは。と思いながらふかふかになった布団を撫でる。
「さあリオネ。ご飯作るからあたしを元の姿に」
「うん。……今日はなにつくるの?」
「夜はハロウィンで忙しいだろうから、ベーコンエッグかなぁ。リオネにはそれでお腹いっぱいでしょ?」
「うん」
こくり、と頷いたリオネにふふ、と笑ってじゃあお願いねと伝えれば、リオネあたしの小さな猫の額に口を付けた。
瞬間、ぼふんという音と共にあたしは本来のヒト型の姿に戻った。
長い黒髪にぴょこぴょこと猫耳を動かしながらリオネに服を寝間着から着替えるように言いつければ、「はぁい」と気の抜けたような声を出すリオネ。
ふかふかになった布団に戻ってしまわないか心配しながら、背を向けてキッチンに向かう。
起きていたとしてもたもたと着替えるだろうご主人サマを思い浮かべながら、クスクスと笑って食材を冷蔵庫から出し準備する。
さあ、今日は忙しくなるからしっかり食べてしっかり働いて貰わないとね。
まだ幼いとはいえもう立派な魔法使い。
仕事嫌いな魔王様とて今日ばかりは浮かれ立つ。
子供も大人も楽しい日。
――さあ、ハロウィンはこれからだ。
「あ、アルデ……ご、ごめんなさ……っ」
「あたしは何かなぁ?って聞いてるだけだよリオネちゃん」
ピコピコと黒い猫耳を動かしながら、ぺしぺしと黒い手足でリオネの目の前の布団を叩く。
ふわふわの栗毛の少年――リオネ――はしょんもりとしながら寝間着の端を握って項垂れていた。
齢6才。この幼い少年は、見た目にそぐわぬ莫大な魔力を有する『魔法使い』である。
そんな魔法使いリオネににっこりと微笑みながら、世界地図の描かれた布団を叩くのが、リオネに呼ばれた使い魔である黒猫――アルデルビア。まあ、あたしだ。
主な仕事はこの幼い魔法使いの世話を焼くこと。
本来なら魔法関連の仕事を手伝うのが使い魔の仕事なのだが、何せリオネはまだ幼い。
しかも身内があたし以外居ないときた。
魔法使いと使い魔は一心同体。
呼び出した魔法使いの為に尽くすのが使い魔の仕事。
そう言い聞かせてこの幼い魔法使いに従っていたら、見事に絆され早2年。
――おむつも取れた筈なのに未だにおねしょをしてしまう主人をたしなめるのもあたしの仕事だ。
「お手洗いに行きたいならあたしを起こしてくれればいいっていつも言ってるじゃない」
「でもボクもう6才なのに……それにアルデに格好悪いとこ見せたくないんだもん」
「御託はいいんのぉ。リオネはまだまだ子供なんだから甘えていいのよ?」
「……そういうことじゃないもん」
「意味がわからないわ」
むぅ、と唇を尖らせて拗ねてしまったらしいご主人サマに苦笑して、とある言葉を口にした。
「もう。むくれてないであたしに魔法を見せて。ご主人サマ」
「……アルデ、ボクの魔法みたいの?」
「見たい見たい」
うんうんと頷けば、リオネは今まで拗ねていたのが嘘のように嬉しそうに笑って、紅葉のような小さな掌を世界地図の描かれた布団に翳すと呪文を唱える。
「風の精霊と契約せしリオネが命じる。そよ風のように凪いて布団を乾かせ」
リオネを中心とした魔法陣が広がると、ぶわっと風が部屋の中で巻き上がった。
「乾いたね。さすがリオネ」
「えへへ」
リオネは照れたように顔を赤らめると、くしゃくしゃとふわふわの栗毛の髪を掻きまぜる。
照れた時のリオネの癖だ。
こういうところも可愛いのよねぇ、あたしのご主人サマは。と思いながらふかふかになった布団を撫でる。
「さあリオネ。ご飯作るからあたしを元の姿に」
「うん。……今日はなにつくるの?」
「夜はハロウィンで忙しいだろうから、ベーコンエッグかなぁ。リオネにはそれでお腹いっぱいでしょ?」
「うん」
こくり、と頷いたリオネにふふ、と笑ってじゃあお願いねと伝えれば、リオネあたしの小さな猫の額に口を付けた。
瞬間、ぼふんという音と共にあたしは本来のヒト型の姿に戻った。
長い黒髪にぴょこぴょこと猫耳を動かしながらリオネに服を寝間着から着替えるように言いつければ、「はぁい」と気の抜けたような声を出すリオネ。
ふかふかになった布団に戻ってしまわないか心配しながら、背を向けてキッチンに向かう。
起きていたとしてもたもたと着替えるだろうご主人サマを思い浮かべながら、クスクスと笑って食材を冷蔵庫から出し準備する。
さあ、今日は忙しくなるからしっかり食べてしっかり働いて貰わないとね。
まだ幼いとはいえもう立派な魔法使い。
仕事嫌いな魔王様とて今日ばかりは浮かれ立つ。
子供も大人も楽しい日。
――さあ、ハロウィンはこれからだ。