2014年クリスマス
(どうしてこうなった……)
目の前で頬をだらしなく緩めながら何故かミニスカサンタ服を掲げている恋人に頭を抱えたくなった。
ああ、何故こうなったのか。なんて、そんなのただ単にこの目の前の恋人が重度の変態だから、としか言い様がないか。
ご丁寧に白いニーハイまで用意されている。
ああ、この空間から早く逃げ出したい。
意識を遠く遠くに追いやりたい気持ちを何とか留め、恋人を見やる。
うん、まあ、本当に嬉しそうな顔だね。
私はさぞかし絶望に塗れた顔をしているだろうに。
「レイちゃん」
「……着ないわよ」
「なんで!?」
「いや、何でが何で?どうして私がそんなものを着なくてはいけないの?」
言わんとしていることが分かり先回りして告げれば、恋人はこの世の終わりのような顔をしながら叫ぶ。
だけれどもそんなことを気にしていてはこの男の恋人なんて務まらない。
ので、当たり前のように無視をする。
「あのね、クリスマスだからって浮かれないで。いや、アンタはいつもそうだけど浮かれないで」
「今日くらい、いいじゃん!?ミニスカサンタコスとか燃えるんだけど!?」
「アンタを燃えさせて何かいいことが今まであったかしらね」
「めちゃくちゃ気持ち良くさせてあげるよ?」
「何でそんな話しかできないのかなアンタは。逸そ尊敬できるよ?」
「そんな、レイちゃんに尊敬されるだなんて……嬉しいな」
「一ミリも褒めてない」
はあ、と溜め息を吐いて額に掌を宛てる。
どうして幼馴染だったからってこんなのと付き合ってしまったのか。
むしろ幼馴染としてこのバカの変態性を誰よりも理解していたというのに、どうして好きになったのか。
本当にこれは、永遠の疑問だと思う。
断られてもまだ期待に満ちた顔をしている変態にもう一度溜め息を吐いてから、べしっと変態の頭を叩く。
「そんなもん着ないとアンタは私に燃えないのかしら?」
「そんなことあるわけないでしょっ!?何言ってるの!?」
挑発するようにそう言えば、変態はあっさりとその手にしていたミニスカサンタ服を床に捨て去った。
そうして怒ったように顔を歪める。
「そんなこと言うなら怒るよ」
「もう怒ってる人間が何言ってんのよ」
「レイちゃんがそんなこと言うからデショ?俺は純粋に可愛いレイちゃんの写真を様々な角度から撮って俺の脳裏にしっかりじっくり焼き付けて、ついでにえっちなことが出来たらいいなぁって思っただけなのに」
「……ホントさ、いっつも思うけどアンタ少しは自重を覚えなさい」
「なんで?俺これでも自重してるつもりだよ?」
「……一応、これのどこが自重しているのか訊いてあげる」
「だって、本当は俺の部屋に閉じ込めて二人きりの世界で誰にも邪魔されることなく『誰にでも優しいレイちゃん』じゃなくて『俺だけのレイちゃん』と過ごしたいんだもん」
それを抑えてる俺って凄く我慢してると思うんだよね。まあ、レイちゃんはそもそも俺だけのレイちゃんなんだけど。
そんな事を平然とした顔で言う変態に、意識が軽く遠退きかけた。
変態だとは重々知っていたけれど、これはもしかしなくても危険な思考も持ち合わせているのではなかろうか。
なんという二重苦。これで顔だけは良いのだから世の中は可笑しい。
神様とやらがこの変態を作るときの配分を間違えたとしか思えない。
今日何度目とも知れない溜め息を吐いて変態の頭を更に叩く。今度は少し強めになったような気もしないが、まあ、不可抗力だ。
「ひどぉい」
「アンタの思考の方が酷いわよ」
「俺は普通のことを言ってるだけなんだけど」
「その普通が異常なのだと、その無駄に良い頭で何故理解できないのか意味が分からないわ」
「あはっ。レイちゃんに褒められちゃった」
「凄いやこの人。全然話しが通じない。あ、いつもだったわね」
十数年の付き合いで意見が噛み合ったことが果たして何度合っただろうか。
それも思い出す過程で色んなアレやソレやも思い出しそうなので無理やり思考を現実に縫い留めるけれど。
私の何処が好きで何処が好くてどうしたいのかを語り始めてしまった変態と、床に投げ捨てられているミニスカサンタ服。
いい加減食べられることを待っているのだと告げてきそうなケーキの存在を言った方がいいのではないかとも一瞬思ったけれど、ケーキプレイとか何とか言われた去年のクリスマスを思い出すと何とも言えない。
そんなことをされたのにどうして今年も律儀に用意したかって?
そんなの絶賛クリスマスデート中の母親に言って欲しい。
両親は順当にクリスマスデートをしているというのに私達ときたら、一体この差は何なのか。
変態か。変態成分の差なのか。
「まあ、いいか」
普通のデートも、プレゼント交換も、ただいちゃつくだけなのも。
そんな『普通』何て、私達には到底似合いそうもないのだから。
「どうしたの?レイちゃん何か嬉しそう」
「べっつに?何でもないわよ」
ふふ、と口元を緩めて不思議そうな顔をしている変態に微笑んだ。
目の前で頬をだらしなく緩めながら何故かミニスカサンタ服を掲げている恋人に頭を抱えたくなった。
ああ、何故こうなったのか。なんて、そんなのただ単にこの目の前の恋人が重度の変態だから、としか言い様がないか。
ご丁寧に白いニーハイまで用意されている。
ああ、この空間から早く逃げ出したい。
意識を遠く遠くに追いやりたい気持ちを何とか留め、恋人を見やる。
うん、まあ、本当に嬉しそうな顔だね。
私はさぞかし絶望に塗れた顔をしているだろうに。
「レイちゃん」
「……着ないわよ」
「なんで!?」
「いや、何でが何で?どうして私がそんなものを着なくてはいけないの?」
言わんとしていることが分かり先回りして告げれば、恋人はこの世の終わりのような顔をしながら叫ぶ。
だけれどもそんなことを気にしていてはこの男の恋人なんて務まらない。
ので、当たり前のように無視をする。
「あのね、クリスマスだからって浮かれないで。いや、アンタはいつもそうだけど浮かれないで」
「今日くらい、いいじゃん!?ミニスカサンタコスとか燃えるんだけど!?」
「アンタを燃えさせて何かいいことが今まであったかしらね」
「めちゃくちゃ気持ち良くさせてあげるよ?」
「何でそんな話しかできないのかなアンタは。逸そ尊敬できるよ?」
「そんな、レイちゃんに尊敬されるだなんて……嬉しいな」
「一ミリも褒めてない」
はあ、と溜め息を吐いて額に掌を宛てる。
どうして幼馴染だったからってこんなのと付き合ってしまったのか。
むしろ幼馴染としてこのバカの変態性を誰よりも理解していたというのに、どうして好きになったのか。
本当にこれは、永遠の疑問だと思う。
断られてもまだ期待に満ちた顔をしている変態にもう一度溜め息を吐いてから、べしっと変態の頭を叩く。
「そんなもん着ないとアンタは私に燃えないのかしら?」
「そんなことあるわけないでしょっ!?何言ってるの!?」
挑発するようにそう言えば、変態はあっさりとその手にしていたミニスカサンタ服を床に捨て去った。
そうして怒ったように顔を歪める。
「そんなこと言うなら怒るよ」
「もう怒ってる人間が何言ってんのよ」
「レイちゃんがそんなこと言うからデショ?俺は純粋に可愛いレイちゃんの写真を様々な角度から撮って俺の脳裏にしっかりじっくり焼き付けて、ついでにえっちなことが出来たらいいなぁって思っただけなのに」
「……ホントさ、いっつも思うけどアンタ少しは自重を覚えなさい」
「なんで?俺これでも自重してるつもりだよ?」
「……一応、これのどこが自重しているのか訊いてあげる」
「だって、本当は俺の部屋に閉じ込めて二人きりの世界で誰にも邪魔されることなく『誰にでも優しいレイちゃん』じゃなくて『俺だけのレイちゃん』と過ごしたいんだもん」
それを抑えてる俺って凄く我慢してると思うんだよね。まあ、レイちゃんはそもそも俺だけのレイちゃんなんだけど。
そんな事を平然とした顔で言う変態に、意識が軽く遠退きかけた。
変態だとは重々知っていたけれど、これはもしかしなくても危険な思考も持ち合わせているのではなかろうか。
なんという二重苦。これで顔だけは良いのだから世の中は可笑しい。
神様とやらがこの変態を作るときの配分を間違えたとしか思えない。
今日何度目とも知れない溜め息を吐いて変態の頭を更に叩く。今度は少し強めになったような気もしないが、まあ、不可抗力だ。
「ひどぉい」
「アンタの思考の方が酷いわよ」
「俺は普通のことを言ってるだけなんだけど」
「その普通が異常なのだと、その無駄に良い頭で何故理解できないのか意味が分からないわ」
「あはっ。レイちゃんに褒められちゃった」
「凄いやこの人。全然話しが通じない。あ、いつもだったわね」
十数年の付き合いで意見が噛み合ったことが果たして何度合っただろうか。
それも思い出す過程で色んなアレやソレやも思い出しそうなので無理やり思考を現実に縫い留めるけれど。
私の何処が好きで何処が好くてどうしたいのかを語り始めてしまった変態と、床に投げ捨てられているミニスカサンタ服。
いい加減食べられることを待っているのだと告げてきそうなケーキの存在を言った方がいいのではないかとも一瞬思ったけれど、ケーキプレイとか何とか言われた去年のクリスマスを思い出すと何とも言えない。
そんなことをされたのにどうして今年も律儀に用意したかって?
そんなの絶賛クリスマスデート中の母親に言って欲しい。
両親は順当にクリスマスデートをしているというのに私達ときたら、一体この差は何なのか。
変態か。変態成分の差なのか。
「まあ、いいか」
普通のデートも、プレゼント交換も、ただいちゃつくだけなのも。
そんな『普通』何て、私達には到底似合いそうもないのだから。
「どうしたの?レイちゃん何か嬉しそう」
「べっつに?何でもないわよ」
ふふ、と口元を緩めて不思議そうな顔をしている変態に微笑んだ。