2014年バレンタイン

「お菓子会社の陰謀には乗らない」

「突然来たと思ったら第一声がそれですか」

「何か負けた気がするからお菓子会社の陰謀には乗りたくない」

「ええと、じゃあ乗らなきゃいいんじゃないですかね?」

「でも世間では今日は恋人にチョコ若しくはプレゼントを渡す日とされているじゃない?」

「まあ、広く一般的にはそうなんじゃないかな?」

「だから一応恋人である貴方に何かしなければと思ったんですよ」

「え?なに?凄い嫌な予感がする」

「とりあえず今日が終わるまで奉仕してあげる。何がいい?」

「凄い上から目線でビックリだよ。ていうか別にそんなことされたくないし」

「じゃあ何をしろと」

「なんでちょっとキレ気味なんですかね」

「ここ一週間、如何にしてお菓子会社の陰謀に乗らずに恋人の日を満喫するかを考えてたから若干寝不足気味」

「うん。とりあえず寝ろ」

「何の為に一週間を費やしたと思ってるの!今寝たら負けるじゃない!」

「お前は何と戦ってんの!?」

「強いて云うなら己との戦い」

「はいはい。眠いんだね。云ってること可笑しくなってるよ」

「ねむくない」

「寝なさい」

「ねたらまける」

「もう半分寝かけてるじゃん。もー。頑固なんだから。ほら、ちょっとこっちおいで」

「うん」

「はい素直ですねー。じゃあちょっと寄っかかって」

「ん」

「目を瞑って10秒数えましょう」

「んー……」

「…………寝たか?……寝たな。はー……全く」


「口実がないと家に来れないとか……お前ホント可愛すぎて困るわ」


そのせいで寝てたら意味ないのに。ってか恋人とはいえ男の家に来て簡単に寝るとか危機感なさ過ぎだろ。いや、寝かせたの俺だけども。


「頼むから俺以外にそんな無防備になんなよー」


俺だから良いってわけでもないけど。
むしろ俺にこそ危機感持って欲しい所だな。


「……つーか、陰謀に乗って買ったチョコどうすっかなー」


明日渡せば陰謀に乗ったとか云われずに食うかな?
女ばっかの店に買いに行くの結構恥ずかしかったから食ってくれないと困るんだけど。
……まあコイツ甘いもの好きだから食うだろ。

コイツが起きたらとりあえず飯でも食って、イチャイチャしたいらしいコイツの希望に応えて目一杯甘やかしてやろうか。
文句を云いながらも嬉しそうな顔をするだろう素直じゃない性格をした恋人の姿を想像して、ふ、と口端を上げると、安心しきった顔をして眠っている恋人の額に口付けた。
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