銀と黒と紅の
わたくしは吸血を主に生きる糧にする種族だ。
人間からは吸血鬼なんて呼び名で呼ばれ、恐れられている。
人間にとっての命の源である血液を、肌に犬歯を突き立てて啜り飲むことがわたくしにとっての普通であった。
いえ、ジルに出会うまでの、と言いましょうか。
人間はただの餌で。生きる糧として喰らうだけ。
それ以外に感情なんて抱ける訳がなかった。
食事に対して情など持ったら最後。食事が出来ずに飢えて死んでしまうから。
けれどジルと出会ってから、吸血鬼である本能すらも抑え込む程にジルを愛してしまった。
ただの食事の筈だったのに。
それ以上の気持ちを持ってしまったら、もう駄目だった。
それからはせめてジルが老いて死ぬまでは側に居たい。
その一心で飢えを凌いだ。
そんなわたくしの気持ちを見抜いたジルが、人間をやめて自分と同じ種族になってくれると言ったことには驚いたけれど。
早々に婚儀を挙げてしまったのは、ジルを手に入れたいと願った魔物としての本能か。
「――わたくしはジルの為ならば毎時間でも愛を告げますわ」
「それは嬉しいな。じゃあ僕は目が合ったときにはキスを贈ろうかな」
「まあ。……ふふ。嬉しいですわ」
コツンと額を合わせてクスクスと笑い合う。
その何と幸せな時間か。
ギドとセレフィナの夫婦の形に理解がないわけではないけれど。
やはり愛しい存在とはずっと共に居たいと思うから。
大体。連絡が取れないくらいであたふたとするならばさっさと捕えてしまえばいいものを。
悪魔も魔女も、中々素直にはなれないらしい。
そんな2人を友人に持った身にもなって欲しいものですわ。
(まあ友人だと言っても、ジルに殺気を向けたことは許しませんが)
緩く弧を描いたシルフィの怒りを露にした顔を見たものは、幸か不幸か居なかった。
吸血鬼は愛情深い。故に盲目だ。
だから夫に殺気を向けた悪魔にはセレフィナが帰ってきた暁に、嫌がらせでもしようかと画策する。
そんな事をシルフィが考えていた頃。
悪魔が盛大にくしゃみをしたかは、また秘密。
人間からは吸血鬼なんて呼び名で呼ばれ、恐れられている。
人間にとっての命の源である血液を、肌に犬歯を突き立てて啜り飲むことがわたくしにとっての普通であった。
いえ、ジルに出会うまでの、と言いましょうか。
人間はただの餌で。生きる糧として喰らうだけ。
それ以外に感情なんて抱ける訳がなかった。
食事に対して情など持ったら最後。食事が出来ずに飢えて死んでしまうから。
けれどジルと出会ってから、吸血鬼である本能すらも抑え込む程にジルを愛してしまった。
ただの食事の筈だったのに。
それ以上の気持ちを持ってしまったら、もう駄目だった。
それからはせめてジルが老いて死ぬまでは側に居たい。
その一心で飢えを凌いだ。
そんなわたくしの気持ちを見抜いたジルが、人間をやめて自分と同じ種族になってくれると言ったことには驚いたけれど。
早々に婚儀を挙げてしまったのは、ジルを手に入れたいと願った魔物としての本能か。
「――わたくしはジルの為ならば毎時間でも愛を告げますわ」
「それは嬉しいな。じゃあ僕は目が合ったときにはキスを贈ろうかな」
「まあ。……ふふ。嬉しいですわ」
コツンと額を合わせてクスクスと笑い合う。
その何と幸せな時間か。
ギドとセレフィナの夫婦の形に理解がないわけではないけれど。
やはり愛しい存在とはずっと共に居たいと思うから。
大体。連絡が取れないくらいであたふたとするならばさっさと捕えてしまえばいいものを。
悪魔も魔女も、中々素直にはなれないらしい。
そんな2人を友人に持った身にもなって欲しいものですわ。
(まあ友人だと言っても、ジルに殺気を向けたことは許しませんが)
緩く弧を描いたシルフィの怒りを露にした顔を見たものは、幸か不幸か居なかった。
吸血鬼は愛情深い。故に盲目だ。
だから夫に殺気を向けた悪魔にはセレフィナが帰ってきた暁に、嫌がらせでもしようかと画策する。
そんな事をシルフィが考えていた頃。
悪魔が盛大にくしゃみをしたかは、また秘密。