金と灰の右目2

元はといえば私が手を貸した事でこんな面倒な事になったから。
責任を感じていないわけではない。
だから手伝いと精神の保護の為に頻繁に冥界に向かうのだ。


(まあもっとも。あの二人はもうどうにもならないんだろうけど)


引くことも、戻ることも、諦めることも、向かうことも、向き合うことも。
手を取り合って並ぶ未来すべて。
冥界の夫婦には二度と訪れない。
魂が幾度連鎖しても二度と交わることはない。
そういう運命を歩むことを決めてしまった。
その背中を押したのが私で。だったら見守るのも私の務め。
もうどうにもならない平行線を辿り続けるのは分かりきっているけれど。
それでもあの不器用な友人を見守り続けるのがせめてもの償いだ。


(そのせいでギドを不安にしちゃうのもどうかと思うんだけどねー)


大好きな大好きな私の悪魔。
私の為に確かにあった幸せを全部捨ててまで愛してくれると言ってくれた。
私の大切なヒト。


「そんなに大切に思っているなら放浪癖もやめて、冥界にも行かずにギドに飼われてろ」なんて腐れ縁からは言われたけど。
それはそれ。
ギドを嫌ってるの?なんて見当違いな言葉も言われたことがあるけれど。


「好きだよギド。だから怒らないで?」

「……怒っているわけじゃない。ただ、心配しただけだ」

「うん、ごめんね?」

「フィナがそういう奴だと知っていて結婚を申し込んだのは俺だ」


それに、


「フィナを愛しているから待っていられる」


そう言って、また一つ唇に口付けしてきたギド。
口付けと言葉だけで簡単に喜んでしまうのは、私がギドを大好きだからだろう。
ギドにあげてしまったからもう私の中の何処にもない筈の心臓が、高鳴るような気さえした。




私達の関係に対して沢山の人から色々と言われるけれど。


魔女の中でもひねくれてる私の愛情はギドくらいしか理解できなくて。
悪魔の中でも異質なギドの愛情をきちんと分かるのも私だけ。
こう言ったら、私達が如何にお互いに惚れているのか分かるかしらね?


「すごい音、」

「んー?」

「フィナの心臓が凄い音で動いてる」

「ああ、やっぱりー?」

「……心地好いな」

「ふふ。それは何より」
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