金と灰の右目2
「ぎーどー……」
「嫌だ」
「ギ「嫌だ」……ハァ」
久し振りに家に帰ってきた(正確には帰ってこれた)私に待っていたのは夫からの熱いを通り越した抱擁だった。
いや、抱擁なんて生易しい表現じゃ足りないくらいの息苦しさを感じるけれども。
「ねえ、離さなくていいからちょっと力緩めてくれない?」
さすがに息苦しい。
このままだと絞め殺される気がする。
そんな思いからぽんぽんと胸の前にあるギドの腕を軽く叩く。
ギドは何も言わずに力を緩めた。
まあ、息苦しいのは変わらないけれど、絞め殺される心配はなくなった。
ふう、と一息ついて。ギドの背中を見る。
背後から抱き締められている形なのでギドの表情は分からないけれど。多分、情けない顔をしているのだろうな。
そう思うと腹の底から笑いが込み上げてきた。
身体がピタリと引っ付いているから、それが伝わったのだろう。
ギドは不機嫌を隠さずに言葉を紡ぐ。
「なんだよ」
「ギドが、かっわいいなぁーって思ったんだよー」
「……嬉しくも何ともない」
「知ってるー。でも可愛い」
「可愛いのはフィナの方だろ」
「あは。知ってるー」
息苦しさを感じていた擬音で表すならギュウゥゥゥ!だった抱擁は、今はぎゅうぎゅうという程度に変化した。
表すなら、今までは絶対に何処にも行かせない。隙間なんて作ってやるかー!って意地になって込められていた力が、今は拗ねて抱き付いてる程度の。
少し抵抗すれば離れられる程度の拘束だ。
「ふはっ。自分で言うか?」
うりうりと私の頬に自分の頬を擦り寄せてくるギド。多少は機嫌が良くなってきたらしい。
まあ最も。最初から機嫌が悪かった訳ではないのだろうけれど。
「…ったく。普通何年も旦那を置いてくか?」
「私がこういう性格だって知ってて結婚したのはギドでしょー?そ・れ・に。私だってギドがこぉんなに甘えただとは思わなかったよ?」
「……別に、誰にでもこうなわけじゃねぇよ」
「ふふ。誰にでもこうだったら相手を呪殺しちゃうかもー」
「……そうか」
ああ。本当に。
嬉しそうな顔しちゃって。
会話だけ聞いてれば私が危ない思考を持った女だと思われそうだなー。
でも。
ギドの執着心や独占欲、いっそ私を食らってしまいたいとすら思ってる思考に付いていけるのは私だけで。
私の放浪癖には良い顔はしないけど、私の嫉妬深さを分かりやすく喜ぶのはギドだけで。
私たちはこう見えてちゃんと、お似合いな夫婦なんだよね。
そんなことを思ってるなんてギドが知ったら多分当分ベッドの住人になりそうだから言わないけれど。(言わなくてもなるんだろうけど)
少しだけ首を動かしてギドの方に顔を向ければすかさず降ってきた口付け。
もしかしたら心を読めるようにでもなったのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。
「現金だねー。もう機嫌直ったの?」
「フィナが傍に居れば俺はいつでも機嫌はいい」
「あは。シルフィーのところに行った時はかなり機嫌悪かったみたいだけどねー?」
「あれはっ。お前が俺とのコンタクトを拒んだからだろう」
「うん。ごめんね。アレは流石に反省してる」
コンタクト――簡単に言ってしまえば彼の種族だけが使えるテレパシーの様なものだ――を拒んだのは他でもない。
冥界に居た時に散々からかっていた知人を刺激しない為と。単純に自分のお妃様の行方が心配で使い物にならない王様の手伝いをしていたら、そんな余裕がなくなっちゃっただけ。
「嫌だ」
「ギ「嫌だ」……ハァ」
久し振りに家に帰ってきた(正確には帰ってこれた)私に待っていたのは夫からの熱いを通り越した抱擁だった。
いや、抱擁なんて生易しい表現じゃ足りないくらいの息苦しさを感じるけれども。
「ねえ、離さなくていいからちょっと力緩めてくれない?」
さすがに息苦しい。
このままだと絞め殺される気がする。
そんな思いからぽんぽんと胸の前にあるギドの腕を軽く叩く。
ギドは何も言わずに力を緩めた。
まあ、息苦しいのは変わらないけれど、絞め殺される心配はなくなった。
ふう、と一息ついて。ギドの背中を見る。
背後から抱き締められている形なのでギドの表情は分からないけれど。多分、情けない顔をしているのだろうな。
そう思うと腹の底から笑いが込み上げてきた。
身体がピタリと引っ付いているから、それが伝わったのだろう。
ギドは不機嫌を隠さずに言葉を紡ぐ。
「なんだよ」
「ギドが、かっわいいなぁーって思ったんだよー」
「……嬉しくも何ともない」
「知ってるー。でも可愛い」
「可愛いのはフィナの方だろ」
「あは。知ってるー」
息苦しさを感じていた擬音で表すならギュウゥゥゥ!だった抱擁は、今はぎゅうぎゅうという程度に変化した。
表すなら、今までは絶対に何処にも行かせない。隙間なんて作ってやるかー!って意地になって込められていた力が、今は拗ねて抱き付いてる程度の。
少し抵抗すれば離れられる程度の拘束だ。
「ふはっ。自分で言うか?」
うりうりと私の頬に自分の頬を擦り寄せてくるギド。多少は機嫌が良くなってきたらしい。
まあ最も。最初から機嫌が悪かった訳ではないのだろうけれど。
「…ったく。普通何年も旦那を置いてくか?」
「私がこういう性格だって知ってて結婚したのはギドでしょー?そ・れ・に。私だってギドがこぉんなに甘えただとは思わなかったよ?」
「……別に、誰にでもこうなわけじゃねぇよ」
「ふふ。誰にでもこうだったら相手を呪殺しちゃうかもー」
「……そうか」
ああ。本当に。
嬉しそうな顔しちゃって。
会話だけ聞いてれば私が危ない思考を持った女だと思われそうだなー。
でも。
ギドの執着心や独占欲、いっそ私を食らってしまいたいとすら思ってる思考に付いていけるのは私だけで。
私の放浪癖には良い顔はしないけど、私の嫉妬深さを分かりやすく喜ぶのはギドだけで。
私たちはこう見えてちゃんと、お似合いな夫婦なんだよね。
そんなことを思ってるなんてギドが知ったら多分当分ベッドの住人になりそうだから言わないけれど。(言わなくてもなるんだろうけど)
少しだけ首を動かしてギドの方に顔を向ければすかさず降ってきた口付け。
もしかしたら心を読めるようにでもなったのかと思ったけれど、どうやら違うらしい。
「現金だねー。もう機嫌直ったの?」
「フィナが傍に居れば俺はいつでも機嫌はいい」
「あは。シルフィーのところに行った時はかなり機嫌悪かったみたいだけどねー?」
「あれはっ。お前が俺とのコンタクトを拒んだからだろう」
「うん。ごめんね。アレは流石に反省してる」
コンタクト――簡単に言ってしまえば彼の種族だけが使えるテレパシーの様なものだ――を拒んだのは他でもない。
冥界に居た時に散々からかっていた知人を刺激しない為と。単純に自分のお妃様の行方が心配で使い物にならない王様の手伝いをしていたら、そんな余裕がなくなっちゃっただけ。