鳥籠の中
「私はアナタのお側に居られて、この上なく幸せですよ」
大好きなアナタのお側に居る事が出来て。
これ以上の幸せが何処にあるというのだろうか。
例えこの両の目が、二度とアナタを写す事が出来なくても。
アナタと世界を見ることが叶わなくても。
私は死ぬその瞬間まで、アナタが側に居てくれると確信しているからちっとも怖くはないんです。
不安なんて感じないんです。
アナタが側に居てくれる限り、決して私は不幸にはならないから。
アナタ自身が私にとって世界そのものだから。
この両の目を通さずとも、アナタが側に居てくれればそれだけで充分なのです。
「……そうか」
「はい。それに私はアナタを守る事が出来て本望なのですよ?例えあの場で死んでいたとしても」
「…っ、冗談でもそんなことを言うな」
低く、圧し殺したような声を出すアナタにふわりと微笑みを浮かべる。
「アナタがそう望むのならそう致します」
「…っ」
そう言葉を落とすと、しまったと言わんばかりに零れた小さな音。
私はアナタの“お願い”には決して逆らわない。
夫から与えられた言葉は妻にとっては絶対なのだと幼い頃から教えられていたから。
だからアナタは私に“お願い”をあまりしない。
自分の意思で動いて欲しいと思ってくれているから。
私はどんな些細な事でもアナタの言う事ならなんだって受け入れるのに。
『アナタの為ならば死んでも良かった』
そう言ったのは紛れもない本心だから。
アナタは嫌がるけれど。
私は本当にそう思っているんです。
けれど、
「……頼むから、僕の為に死ぬなんて二度と言わないでくれ……」
結局の所、私はアナタの望みならば何だって叶えて差し上げたいと思うから。
私が傷付くのをアナタが厭うと知っていても、尚。
「アナタがそう望むのなら」
それでもアナタが悲しむのは嫌だから私はアナタの為に死ぬ事は致しません。
だから無茶をしないと、アナタが余程の窮地に立たされない限りはお約束致します。
けれど二度と、という点に付いてはお約束は出来ませんが。
だってアナタの為に何かをするという事は、私にとって呼吸をする事と同じ事なんですもの。
考えるよりも先に自然と身体が動いてしまうんです。
「君は、何も分かってないね」
困ったように眉を寄せるアナタは、私の頬に掌を添わせる。
滑らかな、けれど男性だと分かる骨張った掌。
その掌で頬を包んで、アナタは私の耳元に唇を寄せた。
「僕は君を守りたい。だから、君を閉じ込める事を許しておくれ」
「はい。もちろんですわ」
囁かれた念を押すような言葉に、安心させるように頷いた。
そうすればアナタが微かに笑った気配がした。
目が見えないから本当に笑ったかなんて確認しようがないけれど。
それでもアナタが笑ってくれるのなら。
私は喜んでこの鳥籠の中で生きましょう。
他ならぬ、アナタの為に。
アナタが居なければ何処にもいけない、羽をもがれた鳥になりましょう。
ただ。ただ。
大好きでいとおしい旦那様が幸せなら私はそれで良いのですから。
大好きなアナタのお側に居る事が出来て。
これ以上の幸せが何処にあるというのだろうか。
例えこの両の目が、二度とアナタを写す事が出来なくても。
アナタと世界を見ることが叶わなくても。
私は死ぬその瞬間まで、アナタが側に居てくれると確信しているからちっとも怖くはないんです。
不安なんて感じないんです。
アナタが側に居てくれる限り、決して私は不幸にはならないから。
アナタ自身が私にとって世界そのものだから。
この両の目を通さずとも、アナタが側に居てくれればそれだけで充分なのです。
「……そうか」
「はい。それに私はアナタを守る事が出来て本望なのですよ?例えあの場で死んでいたとしても」
「…っ、冗談でもそんなことを言うな」
低く、圧し殺したような声を出すアナタにふわりと微笑みを浮かべる。
「アナタがそう望むのならそう致します」
「…っ」
そう言葉を落とすと、しまったと言わんばかりに零れた小さな音。
私はアナタの“お願い”には決して逆らわない。
夫から与えられた言葉は妻にとっては絶対なのだと幼い頃から教えられていたから。
だからアナタは私に“お願い”をあまりしない。
自分の意思で動いて欲しいと思ってくれているから。
私はどんな些細な事でもアナタの言う事ならなんだって受け入れるのに。
『アナタの為ならば死んでも良かった』
そう言ったのは紛れもない本心だから。
アナタは嫌がるけれど。
私は本当にそう思っているんです。
けれど、
「……頼むから、僕の為に死ぬなんて二度と言わないでくれ……」
結局の所、私はアナタの望みならば何だって叶えて差し上げたいと思うから。
私が傷付くのをアナタが厭うと知っていても、尚。
「アナタがそう望むのなら」
それでもアナタが悲しむのは嫌だから私はアナタの為に死ぬ事は致しません。
だから無茶をしないと、アナタが余程の窮地に立たされない限りはお約束致します。
けれど二度と、という点に付いてはお約束は出来ませんが。
だってアナタの為に何かをするという事は、私にとって呼吸をする事と同じ事なんですもの。
考えるよりも先に自然と身体が動いてしまうんです。
「君は、何も分かってないね」
困ったように眉を寄せるアナタは、私の頬に掌を添わせる。
滑らかな、けれど男性だと分かる骨張った掌。
その掌で頬を包んで、アナタは私の耳元に唇を寄せた。
「僕は君を守りたい。だから、君を閉じ込める事を許しておくれ」
「はい。もちろんですわ」
囁かれた念を押すような言葉に、安心させるように頷いた。
そうすればアナタが微かに笑った気配がした。
目が見えないから本当に笑ったかなんて確認しようがないけれど。
それでもアナタが笑ってくれるのなら。
私は喜んでこの鳥籠の中で生きましょう。
他ならぬ、アナタの為に。
アナタが居なければ何処にもいけない、羽をもがれた鳥になりましょう。
ただ。ただ。
大好きでいとおしい旦那様が幸せなら私はそれで良いのですから。