アンタの居ないこの世界に

『貴方は世界に絶望したことがある?』



そんな言葉を突然言われて、意味が分からなかった。
それに気付いたのか、端から俺の言葉だなんて必要としてなかったのか。
俺の言葉を聞く前に目の前に座る彼女はふふっと目尻を下げた。


『ごめんなさい。変なことを言っちゃったわね』

『いえ、』

『良いのよ。……私は昔から言いたい事を上手く伝えられないの』


眉を下げて悲しそうに笑った彼女に少しばかり目を見開く。
いつもは儚く、この世の全てを諦めてしまったかのように笑う癖に。
そんな顔は、見たことがない。


『いつだって、気付いた時には手遅れで』


そこで言葉を切ってしまった彼女に、どうして俺はこの時、続きを促さなかったのだろうか?
彼女の様子が可笑しい事に、俺は気付いていたというのに。


どうして。


(今にも消えてしまいそうなアンタに何も言えなかったのだろう)


何か言葉を紡いでいれば、何かが変わっていたのかも知れないのに。
知っていたなら、俺は絶対アンタを助けてやったのに。
誰に背いても、何を捨てても。
それがアンタの望みじゃなくても。


あの時聞いていたなら、



『…っ、どうしてこんなことを!?』

『……ごめんなさい。でも、守りたかったの』



こんな最悪な出来事は、起きなかったかも知れないのに。
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