Dear Drop

セックスはすれば気持ちイイ。
けれどもそれだけだ。
俺にとってはそれだけで、誰かひとりの女の子に固執する気は更々なかった。
――なのに、なんでこんなことになっているんだろうね?

「なーな。……七緒。そんな恰好してたら風邪引くよ」

「アンタ知ってる?馬鹿は風邪を引かないのよ」

「学年首位がナニ言ってんの」

「そんなの数字だけでしょ」

そんなことより邪魔しないで。
そう言いながらノートに何かを書いている七緒に俺はひとつ溜め息を吐いて、そうしてドライヤーを片手に彼女を抱きかかえた。

「邪魔」

「髪、乾かしてあげる」

「押しつけがましい」

一瞬険しい顔をした七緒は、それでも抵抗することの方が面倒くさいのだと言うように身体を弛緩させた。
長い天然茶髪をドライヤーで乾かしていけば、なんとなく悪戯心が働いてそのうなじにキスをひとつ落とした。

「……っ、ちょっと」

「んー、なぁに?」

抵抗を見せた七緒を羽交い絞めにして、彼女の首筋にキスマークを付けていく。
ビクビクと反応する七緒が可愛くて、段々止まらなくなってきた自分が居ることに気がついた。

「かわいーね、なな」

「っ、さっきシたでしょ!?」

「んー、ヤりたい盛りのオトコノコなんで」

「……嘘つき」

「ふふ、ノートばっか見てるななが悪いんだよ」

そんなもの放り出して、俺だけを見て。
他の男の為にそんなことしなくてもいいでしょ。

(七緒、お前の心は――どこにあるんだろうね?)

隠して、騙して、無かったフリをして。
そんな七緒の心は、一体どこにあるのだろうね。

「俺にしとけばいーのにね」

抱き潰して眠っている七緒の頬に触れながら、ポツリと呟いた。
誰かひとりに絞るだなんて馬鹿げていると思っていたのに。
こんなに俺の心を掻き乱すなら、ねえ?

「責任取ってよ」

そんな言葉を落として、彼女の額にひとつ口付けた。
俺と彼女の関係性は、ただのセフレだった筈なのにね?
一体いつからこんな情を抱いてしまったんだか。
それでも仕方ない。好きになってしまったんだから、仕方ない。
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