これが俺の愛のカタチ

「千香、泣かないで。頼むから別れるなんて言うなよ。俺は千香が誰よりも好きなんだよ」
「……っ、洋平のそういう所が嫌いよ!」


腕に抱き込んで、千香の細い身体を抱き締める。
千香は抱き返してはくれない。
ただ嫌い。と吐き出すように呟いて、嗚咽を漏らしていた。


二年間。俺と千香は付き合った。
そしてそれは俺が浮気を止めなかった年数でもある。

それだけの間、千香は耐えていた。
俺に色々言いたいだろうに、千香はさっき別れを切り出すまで耐え続けて。
気丈に振る舞っていただけで、本当は俺の見ていない所で泣いていたんだろうな、と思う。


本当は。
俺はここで手を離してやるべきなんだと思う。
別れてあげるべきなんだと、思う。


千香は美人な上に器量も良いし。
俺みたいな男よりもずっと似合う男が必ず居る。


だけど。
ズルくて自分勝手な俺にはそんな事出来なくて。


今、千香を手放してしまったらきっと俺は死んでしまう。
たとえ生きていても、千香が側に居ないなら死んだのと同じ事だから。
それくらい俺は千香に惚れている。


「千香、好きだよ。俺が浮気をするのが嫌なら。俺と結婚しよう?そうしたらもう二度と浮気はしない。約束する」


ピクリと千香の肩が跳ねた。
俺が浮気をしないと言った事に驚いたのか。
縛られることが嫌いな俺が、結婚しよう何て言った事に驚いたのか分からないけれど。


でもね?俺は千香になら縛られても良いってずっと思っていたんだ。
嫉妬をぶつけられても、がんじ絡めになるまで縛られても。
千香にされるのなら何だって嬉しい。
むしろ千香に妬かれる何て、嬉しすぎてそれこそ死んでしまいそうだ。


好きなんて軽く感じる。
愛なんかじゃ現しきれない。
それくらい千香が大切。


「千香?返事、くれないの?」
「……っ、ばかぁ」
「酷いなぁ」


笑いながら千香を抱き締める腕に力を込める。
今度は抱き返してくれた。


「好きだよ千香。大好き。ねぇ千香は?」
「……好きじゃなきゃ、アンタみたいな浮気男と付き合ったりしないっ」


その言葉にホッとして。
無意識に口角が上がり、千香のオデコにリップ音を鳴らした。


「愛してる」


多分俺はこれから先、浮気はしない。
そんな事をする意味が無くなったからと云うのもあるけれど。
一番の理由は、千香がずっと側に居てくれるから。
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