平凡ライフ?

「それは、つまり…」

「私は、久遠くんとは正反対の人が好きなの」


だから、ごめんなさい。
そう言って頭を下げたら、久遠くんは今にも泣きそうな顔をしながら、膝から崩れ落ちた。
こんな地味な奴に振られるとは思っていなかったんだろうなぁ。
可哀想とか1ミリも思わないけど。
だって外見も中身も地味で平凡な私には同じく平凡な人がお似合いだと思うのは当然だし。まあ、それにぽっちゃりしてる事がプラスされるけど、そんなのは些細な事だと思うんだよね。


「だから久遠くんも早く立ち直って次の恋に向かっていった方がいいと、私は思うんだ」

「……諦めきれないって言ったら、迷惑ですか?」

「うーん。まあ、ハッキリ言うなら迷惑かな」


応えられない気持ちほど重いものはないし。


「……そ、ですか…」

「うん」


ああ、これで諦めてくれるかな?
そんな私の願望を、どうやら彼は破りたいらしい。


「でも諦められないです。想うだけは自由ですよね?芳野先輩には迷惑は掛けません。だから、好きで居させてくれませんか…?」



うーん。正直、ここまで言われて断りきれる人間って居るのかな?
いや、私は断りきれる側の人間だけどさ。だけど、さ?
久遠くんの表情が、捨てられた子犬並みに哀愁が漂っていて、そういうのに弱い私には大ダメージな訳で。
つまりはね?


「……まあ、私に迷惑が掛からないなら、いいんじゃないかな。多分」

「本当ですか!」

「うん、まあ、うん」

「オレ芳野先輩を好きで居ていいんですね!一生好きで居続ける自信ありますよ!?」

「まあ、君の気持ちが続くまではいいんじゃないかな?」


一生は流石に有り得ないと思うし、今までの会話の流れ的に、一生好きで居続けるって言葉は一生片想いで居続けるって宣言してるようなものなんじゃないかな。
いや、久遠くんがそれでいいならいいんだけどね。


「芳野先輩」

「何かな?」

「好きです」

「そうかそうか。私は好きでも嫌いでもないよ」

「じゃあ好きにしてみせますね!」

「……まあ、好きにしたらどうかな」


凄い自信なところ悪いけど、そうそう好みのタイプが変わるとは思えないから、久遠くんの一人相撲になること間違いなしだけど。
久遠くんの言った通り、想うだけなら自由だから。
私がアレコレ言っていい事ではないから。
だから私はその件に関しては何も言わない事に決めた。
これによって私に女子からの虐めフラグが立った気がしないでもないけれど、まあ、起きたら起きた時に考えよう。


「じゃあ!明日の昼飯一緒にしませんか!」

「お昼…?まあ、いいよ」


いつも昼食は1人で摂るから誰かに断りを入れる必要もないしそう言えば、久遠くんは本当に嬉しいのだと言わんばかりの笑みを浮かべた。


(残念だな)


その顔に1ミリでもときめければ、きっと久遠くんはこんな無駄な事をしなくて済むのにね。


(まあ、早めに諦めて欲しいな)


そんな事を思いながら、1人浮かれている久遠くんを若干呆れた目差しで見やっていた。
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