痴漢!ダメ!絶対!

俺と彼女の出会いは人よりちょっと。
……いやかなり状況が“変”だった筈だ。




「……」

「……」

「……うわぉ」

「……」


目の前には制服を着た彼女。
それに向けてコートを広げている俺。(もちろん下は全裸だ)

この誰から見ても痴漢行為を働いている俺の姿を目の前の彼女はたっぷり十秒は凝視してから「うわぉ」と呟いた。
ちなみに表情はぴくりとも動いていない。
痴漢行為を働いているのは俺の筈なのに、何故か俺の方が恥ずかしくなってきた。

溜まりに溜まった日頃のストレスを発散するために、道行く女性にこんな行為を働いては愉悦を味わっている俺にとって、この反応は初めてのことだ。


(普通、叫ぶやら顔色を変えるとかしないか?)


今まで会ったことのないタイプの女子高生は「うわぉ」と発してからも、逃げる事なく、未だに俺のコートの中を凝視している。


「……ねぇ?」

「は、ハイっ?」


不意に女子高生が話し掛けてきた。
初めてのケースに動揺して声が裏返る。
そんな俺の様子なんて一切気にせず、女子高生は淡々と言い放った。


「いつまでもそんな格好をしていたら風邪を引くわよ?それとも風邪を引きたくてそんな格好をしているのかしら?」

「……ぇ」


淡々とした口調で言われた言葉に戸惑うのは、やはり俺。
彼女はそれを気にした様子もなく「ああ」と声を上げて。



「安心してください。私、通報はしませんから。どうぞごゆるりとそのままでいて下さっても構いませんよ」


一体全体。彼女は何がしたいのか?
俺はあまりにも普段と違う行動をする彼女に呆気に取られ、動くことが出来ないで居た。


「どうでも良いけど、私以外に通報されますよ?」


その彼女の言葉にようやく開けていたコートの前を閉めた。
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