流されてしまったので

規則正しい寝息を立てている千帆の髪を撫でながらクスリと笑う。


愛しい愛しい俺だけの千帆は、憎しみすら沸きそうなほど鈍い。
そこもまたかわいーんだけどさ。


喧嘩だって負けたことないし、女にだって不自由したことがない。
そんな俺が唯一負けっぱなしの、そしてそんな状況ですら愛しいと思えてしまえるほど大切な女。
なのに当の本人はその自覚が無いときた。


「ねぇ千帆ちゃん?俺、ガキなんて好きじゃないんだよ」


むしろウザイし煩いしで大嫌い。
なのにどうして心結を産むように促したか分かる?


「千帆ちゃんは俺の愛の重さをまだまだ理解してないねぇ」


まあ、しなくたっていいんだけどさ。
ガキなんて嫌いで、きっと千帆以外が孕んだなら迷わず堕ろせって言っていたけれど。
千帆が孕んだって聞いても嫌じゃなかった。
むしろ前々からずぅっと
千帆を手に入れたかった俺にとって、ソレは好都合すぎて笑えたよ。
それに俺と千帆の子供だと思えば愛しすぎて、他の男の目に触れさせたくないくらい。
お嫁に行くなんて考えたら間違えなく相手を殺してる自信があるくらい。
大切な子になったんだ。
てかさ。


「あんなにセフレが居て、孕んだのが千帆ちゃんだけなんてあり得ないでしょ?普通はさ」


ふふ。と千帆と心結には決して見せない笑みを浮かべて、眠る千帆の額にそっと唇を落とした。
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