攻めの体制で

「香坂くん!!どういうことか苛めがなくなったんですがっ!というか私を苛めてた女子生徒達が学校に来てないのですがっ!?」

「へー、それは良かったね」

「いやいやいや!良くないですし!香坂くんがやったんでしょう?」

「えー?俺が冴島さんを助ける必要性とかないんだけどー」

「……っう、いやまあそうなんですけど……。じゃあ私の勘違い、なのですかね」


勘違い?ふざけんなよ気付けよ。と言いそうになるのを必死に抑えながら、ふーっと息を吐く。


確かに助ける気なんて無かったよ?
冴島さんが怪我なんてしてるの見なきゃ、今だって俺に告白しなきゃいけない冴島さんの状況を楽しんでいただろうから。
人が悪い?上等だよ。
好きな子から例え嘘でも告白されて、嬉しくないわけないからね。
それが俺を到底好きになってくれないような子だったら、特に。


「で?苛めがなくなったんだから告白もしなくて良くなったでしょ?なんで俺、また呼び出し受けてんの?」

「あ、ああ。香坂くんには大変ご迷惑をお掛けしてしまいましたし、その、何かお返しが出来ればと思って……」

「ふぅん。なんでも?」

「私が出来る範囲なら」

「……じゃあさ。アド教えて?」

「……は?え?な、何に使うんですか…?」


明らかに動揺する冴島さんを見て、ああ、と呟いて、


「別に変なことしないから安心しなよ。ただお返しが決まるまでパシリになって貰おうと思っただけだから」

「パシリっ?」

「ナニ?嫌なの?」

「……イエ。滅相もゴザイマセン。香坂くんのパシリ、ウレシイナー」

「そうでしょ?だからアド教えてよ?」


はい、携帯貸して?と手を差し出せば、渋々というように携帯を差し出す。


「……ねぇ?これ誰?」

「ひゃっ!ひ、人の携帯の中身を勝手に見ないで下さいよっ!?」

「うんごめんねー。で?誰」

「……誰っていうか、香坂くんのクラスに居る風紀委員知ってますか?」

「ああ、うん」

「彼です。幼馴染みなので」

「……へぇー」


だからあんなに俺が気に入らないっていう雰囲気バリバリだったのね。
苦笑を浮かべながらもどこか値踏みするような雰囲気を見せた風紀くんを思い出して納得する。
けれどそれとこれとは別。
電話帳にある風紀くんの名前をジッと見ていると、なんとなくイライラしたので削除する。
ああ…!っと悲鳴に近い声が響いたけれど気にしない。
俺以外の男の名前が俺より前にあるのは気に食わないから。


「そんな顔しなくても幼馴染みならまた教えて貰えばいいでしょ?」

「……それは、そうですけど……」

「はい。携帯。じゃあ連絡するから、ちゃんと返すんだよ?」


にこりと笑えば、冴島さんは顔を蒼くしながらコクコクと頷いた。





攻められない。なんて言ったけど、冴島さんは待ってるだけじゃ落ちてくれそうにないからさ。
これからは攻めの体制でいくことにしたから。
だからもう、受け身なんて取ってあげないからね?


「冴島さん」

「は、はいっ」

「覚悟しててね?」

「え……、パ、パシリのことですか?」

「さー、なんのことでしょーか」

「ええ……っ」
3/3ページ