攻めの体制で
「す、好きです!!」
「……」
呼び出しを受けて行った場所で、テンプレのように告白された。
息を一度吸い込み、そのまま吐き捨てるように言った。
「俺のこと好きなんですか。へー、趣味が悪いねー。俺はこれっぽっちも冴島さんのこと好きじゃないよー?」
あくまでも気だるそうに。それでも笑顔で。
彼女、冴島さんにそう言えば、冴島さんは頭を抱えて蹲った。
普通なら此処で流石に言い過ぎたか?くらいは思うだろう。
小刻みに震える肩を見れば、傷付けてしまったことは明白だ。
だが俺は冴島さんを見下ろすだけで、何か言葉を掛けるわけでもなければ立ち去るわけでもない。
何故なら、
「ふわあああああ!!さっすが香坂くん!中々落ちないですねこんちくしょー!!」
「逆に聞くけど、苛められて仕方なく告白してるって分かってて、冴島さんからの告白を本気で受けると思う?」
だからさ?
と、ニッコリと微笑んで。
「こうやって何度も付き合ってあげてるだけ、いいと思わない?」
「……それは、……ごもっともです。でもこっちも止めるわけにはいかないと言いますか、」
「そんなの知らないよー。まあ、少しくらいは付き合ってあげてもいいけどね?」
「……あ、アリガトウゴザイマス」
「本当にそう思ってるの?」
「いえ、その。香坂くんの言葉には裏がありそうで……」
「明日から来るの止めようかなー」
「そ、それだけはご勘弁を!!」
「……あのさ、そんなに嫌なら何かしら行動したらどうなの?」
冴島さんはなんやかんやと言いつつも、苛められることを容認している節がある。
親切心からそう言えば、冴島さんはそうっと目を逸らした。が、膝を折って冴島さんと目線を同じにすると、頬を両手で掴んで無理矢理俺の方に向かせる。
すると、恐る恐るというように口を開いた。
「だ、だって。言ったところでどうにかなるとは思っていないと言うか。私、グズだしとろいし。苛められてもしょうがないかなとは思ったりしますし、それに痛いのにはなれてますから、大丈夫かな、と思いまして」
段々と小さくなっていく冴島さんの声に溜め息を吐く。
大丈夫かなって、そんな泣きそうな顔で言われてもね。
「別に俺は冴島さんが苛められて精神崩壊を起こそうが、学校に来れなくなろうが構わないんだけど」
「こ、香坂くんの悪魔ぁぁぁぁ!」
「わざわざ付き合ってあげてるんだよ?」
むしろ天使でしょー?
にこりと微笑みを浮かべれば、冴島さんの身体がビクリと跳ねた。
俺は笑いそうになるのを堪えつつ、続きを口にする。
「まあ、とにかく冴島さん」
「はい、」
「明日も頑張ろっか」
「…………はい、」
肩を落として項垂れる冴島さんは、もう帰るらしく背中を向けた。
ひらひらと手を振って見送ってやり、後ろ姿が見えなくなった所で俺はスウッと目を細めた。
そのままの顔で振り返って足を校舎に向けようとすれば、風紀の腕章を身に付けたクラスメートが道を通せんぼするように立っていた。
「おや?覗き見?趣味わるいねー」
「香坂」
クラスメート(名前は忘れたから風紀くんとでも呼ぼうか?)は俺の言葉を無視して口を開く。
「冴島が苛めを受けているというのは本当か?」
「あれー?今頃?」
というか呼び捨て。と思いながらも疑問はやはり今更な内容な方に行く。
冴島さんが一応不良だなんてやっていて学校ではわりと怖がられている俺に告白する。なんてことを強要させれ始めてから既に1ヶ月。
苛めを受け始めたのはもっと前からだ。
何故知っているのかなんてことは、今はどうでもいいとして。
憮然とする風紀くんに笑いながら嫌味を言う。
「案外仕事遅いんだねー。風紀委員って」
「お前と違って暇じゃないからな」
おや?嫌味を嫌味で返してきた。
流石面倒くさい風紀委員長の下に付いているだけはあるなー、と感心する。
「暇なわけないじゃん。俺これから大忙しよ?」
「冴島を苛めている女共でも締め上げに行く気か?」
「……あは。人が悪いなー。知ってたんじゃん」
「知らないとは言っていない」
「そりゃそうだけど……まあ、いいや。なんでそう思ったの?」
俺が冴島さんの為に何かするなんてあり得ないでしょ?
なのにどうしてそう思ったのかなー?
「分からないわけがない」
香坂。お前、殺気が駄々漏れだぞ?
今から人でも殴りに行くと宣言しているようなものだ。
「そこまでして冴島の為に動く理由はなんだ?」
呆れたようにカチャリと眼鏡を中指で押し上げる風紀くんの観察眼に思わず舌を巻く。
普通なら気付かないだろうレベルの殺気だっただろうに、良く気がついたなー。
こりゃまた厄介な人に捕まっちゃった。
早くしないと、逃げちゃうじゃん。
「別にさ。理由なんて特にないんだけどー」
ただ、
「いい加減ムカついてきてはいるんだよね」
人のモノに手を出したらいけません。ってお母さんに教わらなかったのかなってね?
「冴島はお前のものじゃないだろう。第一、そんな独占欲を見せるくらいなら告白を受ければいいだけの話だろう」
「ヤダよ」
「律儀に毎回呼び出しに応じて居るのだから嫌いということはないだろう?」
ああ、まあ、そうだよね。
普通はそう思うし、普通は気付くよね。
「俺が冴島さんの告白を受けたとして、冴島さんは俺を好きで告白してるわけじゃないでしょ?」
だけど冴島さんは気付かない。
何故なら俺の事なんて好きでもなんでもないから。
だからちゃんと好きになって貰ってから。
せめて意識されるようになってからじゃないと。
まだ攻めるだなんてあのにぶちんには到底出来ないよ。
「……」
呼び出しを受けて行った場所で、テンプレのように告白された。
息を一度吸い込み、そのまま吐き捨てるように言った。
「俺のこと好きなんですか。へー、趣味が悪いねー。俺はこれっぽっちも冴島さんのこと好きじゃないよー?」
あくまでも気だるそうに。それでも笑顔で。
彼女、冴島さんにそう言えば、冴島さんは頭を抱えて蹲った。
普通なら此処で流石に言い過ぎたか?くらいは思うだろう。
小刻みに震える肩を見れば、傷付けてしまったことは明白だ。
だが俺は冴島さんを見下ろすだけで、何か言葉を掛けるわけでもなければ立ち去るわけでもない。
何故なら、
「ふわあああああ!!さっすが香坂くん!中々落ちないですねこんちくしょー!!」
「逆に聞くけど、苛められて仕方なく告白してるって分かってて、冴島さんからの告白を本気で受けると思う?」
だからさ?
と、ニッコリと微笑んで。
「こうやって何度も付き合ってあげてるだけ、いいと思わない?」
「……それは、……ごもっともです。でもこっちも止めるわけにはいかないと言いますか、」
「そんなの知らないよー。まあ、少しくらいは付き合ってあげてもいいけどね?」
「……あ、アリガトウゴザイマス」
「本当にそう思ってるの?」
「いえ、その。香坂くんの言葉には裏がありそうで……」
「明日から来るの止めようかなー」
「そ、それだけはご勘弁を!!」
「……あのさ、そんなに嫌なら何かしら行動したらどうなの?」
冴島さんはなんやかんやと言いつつも、苛められることを容認している節がある。
親切心からそう言えば、冴島さんはそうっと目を逸らした。が、膝を折って冴島さんと目線を同じにすると、頬を両手で掴んで無理矢理俺の方に向かせる。
すると、恐る恐るというように口を開いた。
「だ、だって。言ったところでどうにかなるとは思っていないと言うか。私、グズだしとろいし。苛められてもしょうがないかなとは思ったりしますし、それに痛いのにはなれてますから、大丈夫かな、と思いまして」
段々と小さくなっていく冴島さんの声に溜め息を吐く。
大丈夫かなって、そんな泣きそうな顔で言われてもね。
「別に俺は冴島さんが苛められて精神崩壊を起こそうが、学校に来れなくなろうが構わないんだけど」
「こ、香坂くんの悪魔ぁぁぁぁ!」
「わざわざ付き合ってあげてるんだよ?」
むしろ天使でしょー?
にこりと微笑みを浮かべれば、冴島さんの身体がビクリと跳ねた。
俺は笑いそうになるのを堪えつつ、続きを口にする。
「まあ、とにかく冴島さん」
「はい、」
「明日も頑張ろっか」
「…………はい、」
肩を落として項垂れる冴島さんは、もう帰るらしく背中を向けた。
ひらひらと手を振って見送ってやり、後ろ姿が見えなくなった所で俺はスウッと目を細めた。
そのままの顔で振り返って足を校舎に向けようとすれば、風紀の腕章を身に付けたクラスメートが道を通せんぼするように立っていた。
「おや?覗き見?趣味わるいねー」
「香坂」
クラスメート(名前は忘れたから風紀くんとでも呼ぼうか?)は俺の言葉を無視して口を開く。
「冴島が苛めを受けているというのは本当か?」
「あれー?今頃?」
というか呼び捨て。と思いながらも疑問はやはり今更な内容な方に行く。
冴島さんが一応不良だなんてやっていて学校ではわりと怖がられている俺に告白する。なんてことを強要させれ始めてから既に1ヶ月。
苛めを受け始めたのはもっと前からだ。
何故知っているのかなんてことは、今はどうでもいいとして。
憮然とする風紀くんに笑いながら嫌味を言う。
「案外仕事遅いんだねー。風紀委員って」
「お前と違って暇じゃないからな」
おや?嫌味を嫌味で返してきた。
流石面倒くさい風紀委員長の下に付いているだけはあるなー、と感心する。
「暇なわけないじゃん。俺これから大忙しよ?」
「冴島を苛めている女共でも締め上げに行く気か?」
「……あは。人が悪いなー。知ってたんじゃん」
「知らないとは言っていない」
「そりゃそうだけど……まあ、いいや。なんでそう思ったの?」
俺が冴島さんの為に何かするなんてあり得ないでしょ?
なのにどうしてそう思ったのかなー?
「分からないわけがない」
香坂。お前、殺気が駄々漏れだぞ?
今から人でも殴りに行くと宣言しているようなものだ。
「そこまでして冴島の為に動く理由はなんだ?」
呆れたようにカチャリと眼鏡を中指で押し上げる風紀くんの観察眼に思わず舌を巻く。
普通なら気付かないだろうレベルの殺気だっただろうに、良く気がついたなー。
こりゃまた厄介な人に捕まっちゃった。
早くしないと、逃げちゃうじゃん。
「別にさ。理由なんて特にないんだけどー」
ただ、
「いい加減ムカついてきてはいるんだよね」
人のモノに手を出したらいけません。ってお母さんに教わらなかったのかなってね?
「冴島はお前のものじゃないだろう。第一、そんな独占欲を見せるくらいなら告白を受ければいいだけの話だろう」
「ヤダよ」
「律儀に毎回呼び出しに応じて居るのだから嫌いということはないだろう?」
ああ、まあ、そうだよね。
普通はそう思うし、普通は気付くよね。
「俺が冴島さんの告白を受けたとして、冴島さんは俺を好きで告白してるわけじゃないでしょ?」
だけど冴島さんは気付かない。
何故なら俺の事なんて好きでもなんでもないから。
だからちゃんと好きになって貰ってから。
せめて意識されるようになってからじゃないと。
まだ攻めるだなんてあのにぶちんには到底出来ないよ。