ご主人と吸血鬼
「お嬢様ぁぁぁぁぁ!」
「なっ!」
「白菜と豚肉のミルフィーユ鍋美味しそうですねぇ」
冬は日が昇っている時間が少ないから好きだ。
昔からこの季節は好きだったけれど、ご主人と出会ってからはもっと好きになった。
ご主人とお出かけする時間がどの季節よりも早くなる。
一緒に外に居られる時間が長くなる。
冬は大好きだ。
今もご主人と一緒にお夕飯の買い出しをしに行こうと用意をしていた。
心持ち的にはデートだデート。そして今夜はトマト鍋だ。色味的に大好き。でも白菜も良いなぁ。安かったらミルフィーユ鍋にしよう!
二百歳を超えてようが、好きな人と一緒に出かけられるのは嬉しい。はしゃぎたくもなる。
そんな訳ではしゃぎすぎた私の額をご主人が小突いた時だった。
『それ』が現れたのは。
「お、お嬢様に何してくれとんじゃワレェ!」
「誰だか知らんが人の家の窓を突き破ったお前が何してくれてんだ。あ?」
「ご主人」
「ん?」
「買い物に行きましょう!お鍋の材料買いに行かなきゃ!」
「……お前はどうしてそうマイペースなんだ」
「え、まあ。アレは私が生まれた時からの知り合いですので。でもそんなことよりご主人とのお買い物デートより重要なことはありませんし」
「お前……本当にどんだけマイペースなんだよ……」
「お嬢様!鍋だろうがなんだろうがわたくしが作って差し上げますから!どうか、どうか私を認識してくださいませ!どうせならお兄様方と同じくらいの立ち位置に!」
「……兄?」
「兄なんて居ませんよー?やだなぁ、ご主人ったらぁ」
にへら、と笑ったたら怪訝な顔をされた。
ああ、もう誤魔化せないみたいですね。
というか何というタイミングなんでしょう。
デートをしたあとに楽しくお鍋を囲む計画が台無しです。
「……この男はただのロリコン執事ですよ」
「ロリコンと仰いますがお嬢様。私はお嬢様を性的にお慕いするというよりはただお嬢様に心酔しているだけです」
「お前実は何げに良いとこのお嬢なのか?」
「吸血鬼は長生きですからね。そこそこ家も大きくなります。その家の、家督を継がなくてもいい位置にいる感じですかね?」
「ああ、だから気楽に俺なんか襲ったわけな」
「やだもー、ご主人ったら!……それは忘れてください」
「無理だろ。嫁との出会いを忘れる旦那が何処にいる」
「これがデレ期ってやつですか!なんなんですか?大丈夫ですかご主人!」
「うるさい黙れ」
「あいたっ」
ぺしん、と頭を軽く叩かれる。
全然痛くないし、照れ隠しだと分かっているから全くもって構わないんだけれど、構いたいヒトがそう言えば居ましたね。
「~~っ!?」
あ、怒りで声も出ないみたい。
うるさくなくて良かったですねぇ。
「今のうちに行きましょー」
「いいのか?」
「はいー。あんなのとはいつでも会えますが、ご主人との時間は有限ですからね!」
「……そうだな」
ご主人が大切だから。
だから、言った言葉なのに。
どうしてだかご主人は悲しそうに笑っていた。
その笑みの理由が分からなくて、私は首を傾げる。
けれどご主人が何もなかったかのように「買い物に行くぞ」と言ったので、私は「待ってくださいー」と涙を流しながら喚く執事は放って。
玄関に向かうご主人の腕に腕を絡めて、鍋の材料を買う為にスーパーに向かったのであった。
「なっ!」
「白菜と豚肉のミルフィーユ鍋美味しそうですねぇ」
冬は日が昇っている時間が少ないから好きだ。
昔からこの季節は好きだったけれど、ご主人と出会ってからはもっと好きになった。
ご主人とお出かけする時間がどの季節よりも早くなる。
一緒に外に居られる時間が長くなる。
冬は大好きだ。
今もご主人と一緒にお夕飯の買い出しをしに行こうと用意をしていた。
心持ち的にはデートだデート。そして今夜はトマト鍋だ。色味的に大好き。でも白菜も良いなぁ。安かったらミルフィーユ鍋にしよう!
二百歳を超えてようが、好きな人と一緒に出かけられるのは嬉しい。はしゃぎたくもなる。
そんな訳ではしゃぎすぎた私の額をご主人が小突いた時だった。
『それ』が現れたのは。
「お、お嬢様に何してくれとんじゃワレェ!」
「誰だか知らんが人の家の窓を突き破ったお前が何してくれてんだ。あ?」
「ご主人」
「ん?」
「買い物に行きましょう!お鍋の材料買いに行かなきゃ!」
「……お前はどうしてそうマイペースなんだ」
「え、まあ。アレは私が生まれた時からの知り合いですので。でもそんなことよりご主人とのお買い物デートより重要なことはありませんし」
「お前……本当にどんだけマイペースなんだよ……」
「お嬢様!鍋だろうがなんだろうがわたくしが作って差し上げますから!どうか、どうか私を認識してくださいませ!どうせならお兄様方と同じくらいの立ち位置に!」
「……兄?」
「兄なんて居ませんよー?やだなぁ、ご主人ったらぁ」
にへら、と笑ったたら怪訝な顔をされた。
ああ、もう誤魔化せないみたいですね。
というか何というタイミングなんでしょう。
デートをしたあとに楽しくお鍋を囲む計画が台無しです。
「……この男はただのロリコン執事ですよ」
「ロリコンと仰いますがお嬢様。私はお嬢様を性的にお慕いするというよりはただお嬢様に心酔しているだけです」
「お前実は何げに良いとこのお嬢なのか?」
「吸血鬼は長生きですからね。そこそこ家も大きくなります。その家の、家督を継がなくてもいい位置にいる感じですかね?」
「ああ、だから気楽に俺なんか襲ったわけな」
「やだもー、ご主人ったら!……それは忘れてください」
「無理だろ。嫁との出会いを忘れる旦那が何処にいる」
「これがデレ期ってやつですか!なんなんですか?大丈夫ですかご主人!」
「うるさい黙れ」
「あいたっ」
ぺしん、と頭を軽く叩かれる。
全然痛くないし、照れ隠しだと分かっているから全くもって構わないんだけれど、構いたいヒトがそう言えば居ましたね。
「~~っ!?」
あ、怒りで声も出ないみたい。
うるさくなくて良かったですねぇ。
「今のうちに行きましょー」
「いいのか?」
「はいー。あんなのとはいつでも会えますが、ご主人との時間は有限ですからね!」
「……そうだな」
ご主人が大切だから。
だから、言った言葉なのに。
どうしてだかご主人は悲しそうに笑っていた。
その笑みの理由が分からなくて、私は首を傾げる。
けれどご主人が何もなかったかのように「買い物に行くぞ」と言ったので、私は「待ってくださいー」と涙を流しながら喚く執事は放って。
玄関に向かうご主人の腕に腕を絡めて、鍋の材料を買う為にスーパーに向かったのであった。