【side story】春告げ鳥が哭いた日【完結済】
「感動の再会を果たしているところ悪いんですが、ママ。そろそろ帰りの飛行機の時間ですよ」
「あれ?そんな時間かー。仕方ないねえ」
「ま、待て!この状況で居なくなるか普通!?」
息子と言われた少年は確かに子供の頃の俺に良く似ている。
その少年が俺のことを「パパ」と呼ぶのも悪い気はしない。結構、戸惑ってはいるけれども。
感動の再会、と言われた通り。俺達はようやく結ばれたのではなかったのか?
混乱が混乱を呼び、縋るように春陽を見てしまった。
「そんな顔で見られてもなぁ……あっちで残してきた仕事あるし。それが終わればこっちに戻って来られるけど」
「明日には帰って来い」
「無茶言うなァ」
あはっ、と春陽は楽しそうに笑う。
無茶だと言われながらも本当に成し遂げてきそうな雰囲気だ。
少しだけ安心した俺は掴んでいた春陽の腕を離す。
「冬彦くん。仕事が終わったら改めて紹介するね。息子の春彦くんのこと」
「ああ……待ってる」
「うん。それじゃ!行こうか、春彦くん」
「はい、ママ」
手を繋いでにこやかに二人並んで歩いて、扉へと手をかける春陽は「あ、そうだ」と呟いた。
「忘れ物」
「忘れ物?何も持ってきてなかっただろ」
「ふふん。正真正銘忘れ物だよ」
そう言って、春陽は近付いてくると俺の瞳をジッと覗き込んでグイッとネクタイを引っ張る。
バランスを崩した俺は前のめりになり、そこに触れたのは――悲しくなるほど忘れられなかったぬくもりだった。
「は、るひ……」
「うん。これで頑張れそうだよ」
じゃあね!と春陽は笑って今度こそ去って行った。
「台風のような方ですわね」
「菜月……お前が連れてきたんじゃなかったのか」
「ええ、わたくしが連れてきましたわ。それはもう……散々世界中を探し回らせましたの。褒めてくださっても構わないんですのよ?」
「っふ。ありがとう……菜月」
「……っ。わ、わたくし。冬彦さんのこと、本当にお慕いしておりました。この事実に変わりはありませんわ。けれども、もう大丈夫ですの」
「……菜月」
「春陽さんが見つかった時、わたくしの心の中では決着がついておりますから。冬彦さんなんかよりも凄くすごーく!素敵な方を見付けるんですの」
「ああ、……ありがとう」
今にも泣き出しそうな菜月の顔は、けれども何処か晴れやかだった。
愛した女を失ったあの日から、止まってしまった時は。
また愛した女が動かしてくれた。
必ず戻ってくる。今度は、何処にも行かない。
そんな確信が、何処かにあった。
「あれ?そんな時間かー。仕方ないねえ」
「ま、待て!この状況で居なくなるか普通!?」
息子と言われた少年は確かに子供の頃の俺に良く似ている。
その少年が俺のことを「パパ」と呼ぶのも悪い気はしない。結構、戸惑ってはいるけれども。
感動の再会、と言われた通り。俺達はようやく結ばれたのではなかったのか?
混乱が混乱を呼び、縋るように春陽を見てしまった。
「そんな顔で見られてもなぁ……あっちで残してきた仕事あるし。それが終わればこっちに戻って来られるけど」
「明日には帰って来い」
「無茶言うなァ」
あはっ、と春陽は楽しそうに笑う。
無茶だと言われながらも本当に成し遂げてきそうな雰囲気だ。
少しだけ安心した俺は掴んでいた春陽の腕を離す。
「冬彦くん。仕事が終わったら改めて紹介するね。息子の春彦くんのこと」
「ああ……待ってる」
「うん。それじゃ!行こうか、春彦くん」
「はい、ママ」
手を繋いでにこやかに二人並んで歩いて、扉へと手をかける春陽は「あ、そうだ」と呟いた。
「忘れ物」
「忘れ物?何も持ってきてなかっただろ」
「ふふん。正真正銘忘れ物だよ」
そう言って、春陽は近付いてくると俺の瞳をジッと覗き込んでグイッとネクタイを引っ張る。
バランスを崩した俺は前のめりになり、そこに触れたのは――悲しくなるほど忘れられなかったぬくもりだった。
「は、るひ……」
「うん。これで頑張れそうだよ」
じゃあね!と春陽は笑って今度こそ去って行った。
「台風のような方ですわね」
「菜月……お前が連れてきたんじゃなかったのか」
「ええ、わたくしが連れてきましたわ。それはもう……散々世界中を探し回らせましたの。褒めてくださっても構わないんですのよ?」
「っふ。ありがとう……菜月」
「……っ。わ、わたくし。冬彦さんのこと、本当にお慕いしておりました。この事実に変わりはありませんわ。けれども、もう大丈夫ですの」
「……菜月」
「春陽さんが見つかった時、わたくしの心の中では決着がついておりますから。冬彦さんなんかよりも凄くすごーく!素敵な方を見付けるんですの」
「ああ、……ありがとう」
今にも泣き出しそうな菜月の顔は、けれども何処か晴れやかだった。
愛した女を失ったあの日から、止まってしまった時は。
また愛した女が動かしてくれた。
必ず戻ってくる。今度は、何処にも行かない。
そんな確信が、何処かにあった。