「お久しぶりですな」
「だな」

私は目の前に立つマサイを見上げて、眩しそうに目を細めた。
それに気づいたらしい他のメンバーは、だいぶ少なくなったファンの子に別れを告げてこちらへ向かってきた。

「久しぶりだな、ハコナ！」
「んおー、たらこ唇ってば、相変わらず元気そうだね！」
「誰がたらこ唇だ！」

Fischer'sリーダー、シルクロードもといシルク。
引っ越しの別れを言いに行ったあの日、私の様子がおかしいことに最初に気づいてくれた。

「なんか、背のびた？」
「かも？って他に変わったとこないんかい」
「ごめん、久々だから何言えばいいか分からなくて」

そう笑いながら言ったのはモトキ。
なにを隠そう彼とは幼稚園からの幼馴染。
とはいえ、モトキは私にとってお兄ちゃんみたいな存在だったりする。

「北海道って美味しい物多いよね？」
「まずは再会した仲間に何か言ってほしいっす。ちなみに食べたいものは？」
「ジンギスカンが気になる」

食い意地をはるのは皆さんおなじみンダホくん。
ほわほわしてて可愛い……私にとっての癒しそのもの。
……なんか、別れた時より丸くなったけど。

「あ、おれも食べたい」
「それ以外は？行きたいとことか」
「予定はシルクに任せてるからなぁ……知らね」

マサイまで笑いながらそう言った。
君ら、北海道といえばジンギスカンしかないんですか？
と、心で突っ込むのは後にして、と。

「北海道ってジンギスカン以外ないのかよ」
「いや、お前がいうんかーい」
「あ？」

何でもないです。と言いながらダーマ様から目をそらした。
ダーマとは昔からよく喧嘩をしてた。
あまりに怪我するものだから、モトキから喧嘩はゲームでしろって注意受けたっけ。

「俺はあそこ行きたい」
「どこ？」
「どこだっけ」

いや、おい。
ぺけたんはいつもこんな感じ。
あれそれこれどれ……っておばあちゃんかってツッコミ入れて、それ以来おばあちゃんって呼んでたりしてる。

「小夏って今なんの仕事してるの？」

いい質問をしてくれたのは、もう一人の幼馴染ザカオくんですぞ。
まあ、ザカオとは小学校からの付き合いなんだけど。

「イラストレーター」
「かっくいー！」

ンダホは目をキラキラさせながら言った。
遮られたけど、それだけじゃないよー？

「兼YouTuber」

コンマ何秒。
そのくらいだけど明らかに全員が硬直した。