いつかの夕焼けはまた赤くなる【長編】
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「……」
母さんから目を逸らし、皆の方を向く。
皆も私を見ていて、それぞれ頷いた。
嬉しそうな表情の人、申し訳なさそうな表情の人……ホントにそれぞれだった。
「でも、私一人暮らし始めたばっかだし……」
「言っとくけど……アンタの、家……あそこ戻っても……なんに、もな、いわよ」
「うん、ごめん先に食べてからでいいよ」
器用なことに母さんは飲み込むのも話すのも同時にこなしていた。
まあ、案の定聞き取りにくかった為、私は先にチーズケーキを食べ終わることにしたんだけど。
「……それで?」
食べ終わり、再度母さんに向き直って話を促す。
母さんは優雅に珈琲を飲みながら全員の顔を見渡した。
「知られてないと思ってるかもしれないけど、あんたが東京に行きたがってるのは知ってるわ」
「……話した記憶無いんだけど」
「わざわざ家から出て都会で仕事始めたのは仕事のしやすさからでしょ? それに」
「それに?」
「一緒に行かないで新メンバーなんて無理でしょ」
「それはっ……!」
思わず声を上げた。
でも母さんが言うそれは、私がずっと思い悩んでいたことだったから私はそのまま口を閉ざした。
静かな時間は、何時間にも感じられた。
しばらくして、母さんはしびれを切らしたかのように続けた。
「私たちはずっと、貴方は家を出たら本州に行くもんだと思ってたのよ? なのにあんたは北海道に残っちゃって……」
「……だって……」
「許してくれないと思ったとかほざくんじゃないよ」
「…………」
「怖かったんでしょ?」
「あ……」
母さんは見透かしたように私を見つめてそう言った。
そう、怖かった。
人気者になった皆と会っても、受け入れられる気がしなくて怖かった。
だから、自分から東京に行くのは諦めていた。
「行きたいかなんて今更聞かないわ。行きなさい」
「母さん……」
屈託のない笑みを浮かべた母さんは、私に封筒を手渡してきた。
中には、明日の日付の空港券が一枚と……
「通帳……?」
「あんたが今まで貯めた貯金と、私たちに送ってきたお金」
中を開くと、そこには高校時代のバイト貯金と一緒に母さん達に送っていた給料の何割かが全部入っていた。
つもりにつもったその額は実に60万……。
「なんで使ってないの」
「……」
「小夏……」
モトキが心配そうに私の名前を呼んだ。
その時初めて私は自分が泣いてることに気がついた。
母さんから目を逸らし、皆の方を向く。
皆も私を見ていて、それぞれ頷いた。
嬉しそうな表情の人、申し訳なさそうな表情の人……ホントにそれぞれだった。
「でも、私一人暮らし始めたばっかだし……」
「言っとくけど……アンタの、家……あそこ戻っても……なんに、もな、いわよ」
「うん、ごめん先に食べてからでいいよ」
器用なことに母さんは飲み込むのも話すのも同時にこなしていた。
まあ、案の定聞き取りにくかった為、私は先にチーズケーキを食べ終わることにしたんだけど。
「……それで?」
食べ終わり、再度母さんに向き直って話を促す。
母さんは優雅に珈琲を飲みながら全員の顔を見渡した。
「知られてないと思ってるかもしれないけど、あんたが東京に行きたがってるのは知ってるわ」
「……話した記憶無いんだけど」
「わざわざ家から出て都会で仕事始めたのは仕事のしやすさからでしょ? それに」
「それに?」
「一緒に行かないで新メンバーなんて無理でしょ」
「それはっ……!」
思わず声を上げた。
でも母さんが言うそれは、私がずっと思い悩んでいたことだったから私はそのまま口を閉ざした。
静かな時間は、何時間にも感じられた。
しばらくして、母さんはしびれを切らしたかのように続けた。
「私たちはずっと、貴方は家を出たら本州に行くもんだと思ってたのよ? なのにあんたは北海道に残っちゃって……」
「……だって……」
「許してくれないと思ったとかほざくんじゃないよ」
「…………」
「怖かったんでしょ?」
「あ……」
母さんは見透かしたように私を見つめてそう言った。
そう、怖かった。
人気者になった皆と会っても、受け入れられる気がしなくて怖かった。
だから、自分から東京に行くのは諦めていた。
「行きたいかなんて今更聞かないわ。行きなさい」
「母さん……」
屈託のない笑みを浮かべた母さんは、私に封筒を手渡してきた。
中には、明日の日付の空港券が一枚と……
「通帳……?」
「あんたが今まで貯めた貯金と、私たちに送ってきたお金」
中を開くと、そこには高校時代のバイト貯金と一緒に母さん達に送っていた給料の何割かが全部入っていた。
つもりにつもったその額は実に60万……。
「なんで使ってないの」
「……」
「小夏……」
モトキが心配そうに私の名前を呼んだ。
その時初めて私は自分が泣いてることに気がついた。