『私を女子として接したことある人この中にいないじゃん』

小夏の言葉は、シルクにとってどこか悲しげに聞こえた。
本心ではないとでも言うかのような声に、シルクはつい、

『俺もアイツらもお前のこと女として好きだよ』

なんて、小さな声で呟いてしまった。
しかし、昔の小夏は女扱いをトコトン嫌っていた。
そんな昔のことから、シルクは聞き返す小夏に再度いうことなくリビングへ戻った。

「シールクー」
「うおっ！？おいおい……ぺけたん、飲みすぎてんじゃねぇの？」
「飲みすぎてないよ〜。ってこの裏切り者！」
「はぁ？何のことだよ」

床に寝そべり、空のビール缶をシルクに投げるぺけたんに、シルクは笑いながら応戦した。
そんなシルクにぺけたんは、頬を膨らませると

「小夏にあーんしてもらってたじゃん」

と、言ってシルクの肩を叩いた。
小夏、という単語が出ると、シルクは一瞬体を強ばらせた。
それでも、すぐに戻り

「ばーか、手で食ったわ」

と、ぺけたんにでこぴんを食らわせた。
そのタイミングで小夏はツマミを持ってきた。

「わーい、小夏の手料理〜！」
「ちょちょちょ！？ぺけたん酔ってんのか！？」
「小夏、俺にもあーんして」
「へいへい」

そんなぺけたんの様子に、他のメンバーも小夏に群がり、食べさせろと迫った。
小夏も楽しそうに笑いながらそれぞれの口にほおり投げていった。

「…………」

シルクだけは、そんな光景を横目にビールを飲んでいた。
ベリショだった髪は肩まで伸ばして耳にかけて、スッピンだった顔はほんのり赤く色づいている。
ただの仲間だったはずなのに、いつの間にか女子として成長していた小夏を意識しなかった時は再会してから１度もない。
前と同じようにと意識すればするほど、体はこわばり顔に熱が集まる。

（……どうすれば俺だけのものになんだろうな）

シルクは自分の中の独占欲に驚きつつも、その思いは強くなる一方だった。
それでも、Fischer'sとしての関係を壊したくないのか行動に移すつもりは毛頭なかったようだ。