practice ※
「あ、あ、あッ・・・」
「・・ん・・、こら・・・ちゃんと、してッ」
先端をくるくる舐め回されて、同じリズムで声が漏れる。
彼への刺激ができなくなって叱られた。
互い違いになって、俺は彼のを彼は俺のを咥えてる。
同じ姿どうしで同じことをするから、すべてが重なって倍になる。
「んんー!!・・あ!・・・もぅ・・・ダメ!!」
耐えられない・・・
あっというまに駆け上る階段。
もう頂上には、すぐ手が届く。
「もう・・・ヒョクチェはしょーがないなぁ・・・一回イカせたげるよ」
「うん、お願い・・・ッ!!・・ああ、あ!!」
ため息ついたと思ったら、赤いヒョクチェは急に俺を奥まで飲み込んだ。
与えられた快感が強烈で、目の前がちかちかする。
「ん、う・・・んッ」
「やーッ!! イく・・出ちゃうぅぅッ」
喉の粘膜に締め上げられて、あっけなく俺は弾けた。
「く、ふッ・・・けほッ」
「・・・は、あ、あ・・・ごめッ」
どろどろの粘液を口内に受けた彼が咳き込む。
ごめんなさい。
ドンヘにもすぐイっちゃうと言われるけど、それにしたってなんでこんな・・・
「・・口の中も、唇もね・・・、性感帯だからさ」
「・・・え?」
息を整えながらの、ひとりごとみたいなつぶやき。
「ご奉仕すると、自分も良くなれるんだよ」
なんで考えてるコトわかんの?
何も聞いてないのに答えをくれる。
「うん・・・なんか、すごいよかった・・」
彼の太ももに擦り寄って甘えてみたら、くすくす笑い声が聞こえた。
「そういう素直なヒョクチェ、可愛いよ?」
「・・・うう・・」
「ドンヘにも見せてあげるんだよ?」
「ぅわ!・・あ、待ってッ」
またそこをぺろぺろと舐められる。
「待てないよ、俺まだ・・なんだよ?」
「・・・そ、・・だよね・・」
「そだよ。今度は一緒にイこ・・ね?」
「・・・うん」
頷いて俺は意を決した。
解放されたがってふるふるしてる彼のを、さっき教わったやり方で飲み込む。
「んんッ、く・・ふ・・・」
「・・ヒョクチェぇ・・あッ!・・あああ!」
ちょっとふわふわした彼の髪が、俺の足の付け根あたりで震えてる。
俺の拙い舌遣いで感じてくれてるかと思うと、嬉しい。
「ふぁ・・んんッ」
「くぅ・・ッ・・ん、ん、んーッ」
お互い必死に呼吸をしながら。
もうひとつになっちゃったみたいにおなじ快感を追いかける。
「・・・ッ!!」
「ふ、・・ッ」
言葉がつくれないのに、なぜか相手が達する瞬間がハッキリ分かる。
口内に熱い液体を感じるのと同時に、俺は同じ温度の精を吐き出した。
自分と彼の境界線が、もうよくわかんない。
触れ合った体温も汗の匂いも、全部がおんなじで。
遠くなってく意識の中で、彼の呼吸に合わせて息をした。
*
「・・・ん・・」
「あ、おはよヒョクチェ!!」
「うん・・おはよ」
目を擦り擦りリビングに出たら、笑顔のソンミナヒョンに迎えられた。
俺はなんだか頭がぽわぽわしてる。
「ご飯ないからシリアルだよ。食べる?」
「んー」
身支度を済ませてくるとそう言ってくれたので、ありがたく食卓についた。
「このミルク、なんかいいヤツらしいよ」
「そうなんだ。・・・うーん、言われてみれば味が濃いような・・・」
「トゥギヒョンが番組でもらってきたの」
もぐもぐ、食べてる俺の前でヒョンは楽しそうに話してる。
「それでさ・・・、あ・・」
言葉の途中でヒョンは視線を一点に集めた。
俺の顔・・・じゃない。
肩?
「・・・ヒョクチェ。今日襟あいたの着ちゃダメだよ?」
お兄さんの顔になってそんなコトを言う。
「なんで?」
「痕ついてる。・・・噛み痕・・?みたいの」
「え・・・ッ?」
嘘でしょ・・・
おなじ顔で赤い髪をした、ヒョクチェの笑顔が頭をよぎる。
『練習に来たんだよ?』
そう言って首を傾げた後、彼が繰り広げた数々のコト。
思い出すと顔から火が出そうになる。
目を覚ましたらその姿はどこにもなくて。
あまりに非現実的だし、夢だと思うコトにしたのに。
「もう、・・・ドンヘったら見えるトコロは自重して・・・」
ドンヘの名前に俺は思わずビクっとして、
「あれ? ドンヘ・・・今地方行ってていないよね?」
続く言葉にヒョンの顔を見れなくなった。
「・・・ヒョクチェ」
「な、なに・・・?」
「浮気?」
「・・・ッ!!」
ちがうよ!!
ちがうけど・・・
なんて言っていいのかわからない。
「・・・ばれたら殺されるよお前」
「あ、えと・・・なんていうか」
「いや、ヒョクチェを殺して俺も死ぬ!!かな」
「ヒョン・・・そうじゃないの・・・」
壮絶な現場を想像して身震いしてしまうヒョン。
待ってよ、確かにホントに俺が浮気したらそうなりそうだけど・・・
「そうじゃないって?」
「あのね。・・・あ、とりあえず俺まともだからね。それ前提で聞いて欲しいんだけど」
「なあにー? ずいぶんもったいぶるなぁ」
苦笑するヒョンに苦笑でかえして。
ふやけていくシリアルをかき混ぜながら、俺は赤髪のヒョクチェのことをソンミナヒョンに打ち明けた。
「・・・んーと、多分さ・・・」
俺の話をしっかり話しやすいように聞いてくれたヒョンは、ちょっと考えこんでから顔を上げた。
「夢みたいだけど、夢じゃないと思う」
「そう思う?」
「うん。実際これだけはっきり痕が残ってるんだし」
・・・どんだけの痕なんだろう。
ぼーっとして鏡見てなかったから知らないんだけど。
「・・・願望・・・とか?」
「え?」
ポツリ零れたヒョンの言葉。
「案外、実はヒョクチェの願望がそれで、その想いが具現化して現れた・・・的な?」
「ち、ちがうよ絶対!! そんなこと思ってない!!」
慌てて否定してもヒョンはふふっと笑うだけ。
「それがちがうなら、そうしてほしいドンヘの切望かな」
「・・・・・・う、・・」
そしてそう言われたらグウの音も出なくなる。
切望?
俺に決して無理をさせないドンヘが、実はそんな風に思ってる?
「してみれば?」
「えッ? ドンヘに?!」
「そりゃそうでしょ。今日こっち帰って来るし」
「う、うう・・・」
さらっと言われて口ごもってしまう。
「それとも僕とも練習する?」
「うわあ!!」
するっと顎を取られて唇を寄せられて、焦る。
イヤ、ヒョンのことは大好きだけど!!
でもそれは・・・俺がキュヒョナに殺されるし!!
「ふふ、冗談だよ」
「もうッ」
固まっていたら、ちょんちょんほっぺをつつかれた。
・・・ヒョン、俺で遊んでるでしょ?
「万が一失敗したら僕が慰めてあげるから。行っといで?」
だけど。
髪を撫でてくれる手のひらは、赤いヒョクチェと同じくらい優しかった。
コンコン。
ドンヘの部屋の扉を叩く。
その行為にこれだけ緊張するのは初めてだ。
「はーい、ヒョクチェ?」
ノックしかしてないのに俺だってわかるんだ。
意味のわからないことに感動する。
「・・・うん、俺・・・」
応える声が変にちっちゃい。
しかもドアノブを回すのに戸惑ったりして。
今からこんなんで俺、ホントにだいじょぶなんだろうか。
『・・・ヒョクチェ、ファイティン』
耳元に聞こえた気がする声に振り返るけど誰もいない。
ああ、彼・・・だよね。
うん。
せっかく背中押してくれたんだもんね。
ひとり頷いたところに中から扉がひらく。
「ただいまヒョクチェ」
ふわふわと微笑んだドンヘの姿に心臓がぎゅってなる。
俺も赤いヒョクチェも、ドンヘが大好きだから。
「おかえり、ドンヘ」
後ろ手に扉を閉じる時には、もう迷いはなくなった。
End...
2/2ページ