practice ※
「ヒョクチェ・・・ヒョクチェ・・・」
「・・・んー?」
なんだか名前を連呼されてる。
今日は仕事の後ジムにも行ったから疲れたんだよ。
まだちゃんと寝る支度してないけどさ、もう少し微睡みたいの。
「ねえってば、ほっとかないでよ」
「うんうん」
誰だかもわかんないまま生返事。
どうせドンヘあたりでしょ。
「俺をほっとくなら、イタズラしちゃうかんね」
・・・・・・あれ?
ドンヘじゃないな。
ってか・・・・この声って・・・
「あー起きたぁ! もー退屈させないでよ」
鏡?
瞼を薄く開けたら、見えたのは俺の顔。
でも、俺は喋ってないのに向こうはずっと口が動いてる。
え・・・・?
なにこれ・・・どういうコト?
「ヒョクチェ、遊ぼ?」
そう言って首を傾げるのは間違いなく俺。
ただ違うのは髪の色だけ。
俺は今金髪にしてるけど、あっちは俺がちょっと前にしてたような赤髪だ。
双子がいるなんてきいたコトないけど?!
「え、え? 誰?!」
「ヒョクチェだよ」
「はあ?!」
「俺はヒョクチェ。お前もヒョクチェ」
夢かな。
もしくは疲れすぎて幻覚を見てる?
「はは、一緒だね」
乾いた笑いがすり抜けるけど、『彼』は嬉しそうな顔をした。
「ヒョクチェがね、いつも素直じゃないからね、今日は練習にきたんだよ?」
「・・・練習?」
「そう、練習。プラクティス。ん?トレーニングか?」
英語訳なんていいから、とりあえず俺の顔をしてるのをやめてほしい。
「ま、いいや。んじゃ、するよー」
「え?・・・んぅッ!!」
なんの前触れもなく唇を塞がれた。
そのまま素早く滑り込んでくる薄い舌先。
「ん、ん・・・」
「んんーッ!! ふぁ、んッ」
同じ声を出されて混乱する。
ちょっとぽってりした唇は柔らかくて、なんだかすぐに変なきもちにさせられた。
「ふ、あ・・きもちいね、ヒョクチェのキス」
「・・・う、・・?」
「でも、ほらもっと舌使ってよ。俺の真似して?」
「んぅぅぅ」
奥まで誘い込まれると、絡み合ってもつれそうになる。
なんだか必死に、言われるまま真似をしていた。
「そ、いい子だね。次はここ・・・ね?」
「ひゃ!・・やだッ」
するりと下半身へ降りていった手のひらに、そこを撫で上げられる。
「いいでしょ? こーやって、擦られるの」
「や、やッ・・ああ!」
強すぎなくて弱すぎない。
一番俺が溺れやすい触り方をされて、震える。
「ヒョクチェ、俺にも同じことして?」
「・・おなじ・・こと?」
赤い俺はそう言って、ふたりいっしょにころんと横になった。
「そう。ご奉仕の練習しなきゃ」
「・・・俺が、するの?」
「ドンヘにいつもいっぱいしてもらってるでしょ? ヒョクチェもお返しするんだよ」
ほら、と俺の手がそんな部分に導かれる。
「ん、あッ・・・」
もう反応していた場所に触れたら、その体は即座に反応を返した。
怖くなって手を引っ込めようとすると、素早くつかまえられる。
「やめないでよ、ヒョクチェ・・・」
上目遣いでそんな風につぶやかれた。
わ、そんな顔しないでよ!
なんか胸がざわざわしてくる。
「ヒョクチェがされてきもちいよーに、俺にもして?」
魔法にでもかけられた気分。
「・・・うん・・・」
ふわふわしたきもちで、なぜか頷いてしまった。
「じゃあ、脱ぐから・・・ちゃんと触ってね」
「ぬ、脱ぐの?」
「だって、邪魔でしょ?」
ニコっと無邪気なくらい、可愛らしく笑って彼は言う。
見た目が同じでも俺とはだいぶ違うんだ。
俺は自分で脱いだりなんて、したことないもん。
ドンヘの前で、こんな風に・・・してみたいな・・・
ふと、そんな考えがよぎってびっくりした。
そうなの? 俺そんなこと思ってんの?
「できたよ、おいで?」
「あ、う・・・ん」
半分以上晒された、赤い髪が映える白い体。
思わず見つめてしまって、ちょっとだけ時がとまる。
「・・・えっちでしょ、このカラダ」
視線に気づいた彼は俺の首に腕を回して、腰をくねらせて見せる。
官能的なダンスみたいな動き。
「そ・・だね・・・」
無意識に唇がうごく。
抗えない色気だと思った。
「ヒョクチェだってこうだよ? 自覚しなよ」
「え・・・」
「おんなじなんだから、俺たち」
そう笑って赤い俺が、金の俺のシャツを剥いでいく。
人差し指で示される、鎖骨のラインとほくろの位置。
「ね? だからきもちいトコも一緒なの。思うようにして」
再び連れて行かれた右手が、熱いそれに触れた。
「・・あ!!」
触られたのは俺じゃないのに、その瞬間びりっと電流が駆け抜ける。
「ん、んぅ・・・もっと・・ぎゅってしてヒョクチェ」
「・・・こ、こう?」
「ひゃんッ そう・・・いいよッ」
ぐっと握りこんで滑らせたら、赤い髪が揺れた。
ホントに俺とおんなじだ。
スイッチが入るみたいに呑まれるところも。
「そこ・・・んッ、先のほう・・」
「え、えと・・・」
「にゃあッ・・・いいのぉ・・・あ、あ・・・」
戸惑い気味のまま、なんとなくよさそうな撫でかたをしてみる。
そしたら鳴き声をあげて彼はかじりついてきた。
俺の肩をあむあむ噛んだりしてる。
なんか、なんか、どうしよう。
すっごい変なきもち。
俺がいつもなってるような状況になってる彼は、俺の顔をしてるから。
されてる自分を俯瞰で見てるみたいで。
「ねえ、・・・お口でも・・して?」
耳元にそんな言葉を含んだ息がかけられる。
お口って・・・
あんまりドンヘにもしたことない。
痛くしちゃいそうで、怖いんだ。
「・・・教えてあげるから、だいじょぶだよ」
髪を撫でた手がさりげなく俺をつかまえて、少しずつ導かれる。
なめらかな肌を通って、たどり着いてしまった。
「あつ・・い・・・」
「そ、だよ・・・だから・・・はやくぅ・・ッ」
恐る恐る唇で触れていたら急かされる。
そうだよね、こんな焦らされたらツライ。
「ん・・・む・・」
「ああッ・・んんー!!」
思い切ってくわえ込んだ。
途端にそれは口の中でぴくぴく跳ねる。
でも、それ以降はどうしたらいいの・・・
「ヒョクチェ・・・もっと奥まで、できる?」
「んん・・・んッ」
言われるまま進んでみるけど、いつ傷つけてしまうかと気が気じゃない。
「唇かぶせるみたいに・・・そう・・んあッ・・」
これでいいのかな・・・
いつもされてることを思い出して、上下に動かしたりしてみる。
歯が当たらないようにするにはどうするか、ちょっとずつわかってきたかも。
「じょうず・・だよ?・・・舌も・・・う、んッ・・いいよ・・」
「ん、ふ・・・んんッ」
粘膜同士が摩擦を起こして熱が上がっていく。
うまくできてるかはわかんない。
でも、赤い髪を乱していく姿に、シンクロしてきてるのは確かだった。
「ヒョクチェ・・・ヒョクチェ・・・」
ハチミツみたいな声に呼ばれると、俺が溶けちゃってるかと思うんだ。
腰のあたりに疼きが溜まって、もどかしい。
「・・・ん、・・んんーッ!!」
気がつくと彼の白い足に擦り付けてしまってた。
喉から鼻にぬけていく無意識の声。
「・・・ヒョクチェったら・・・えっち」
「ふあッ・・・だって・・・」
後ろ髪をつかまれて引き抜かれた。
どっちのだかわかんない粘液が、唇から糸を引く。
なんだかもう、どう思われてもいいや。
だって彼も俺なんだもん。
「俺のも・・・して?」
そう告げて見上げたら、もう一人のヒョクチェはスローモーションのように笑って。
「じゃあ、・・・こうしよ?」
目を輝かせながら、枕元のクッションを引っ張り下ろした。
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