WITH ※



翌朝。
ドロドロの体に鞭を打って、意地で起きあがってシャワーもしっかり浴びた。
バスルームに乗りこんできて悪戯しようとするキュヒョナを、かわすのに苦労しながら。
あの子たちにフラフラの姿は見せられない。
兄さんとして体裁を取り繕うには、だいぶ遅すぎるけど・・・

遅刻ギリギリでスタジオにやってきたヒョクチェとドンへ。
ドンへのほうはむしろ元気いっぱいでドンヒに体当たりしたりしてる。

「ヒョクチェ!」
僕に呼ばれたら可哀相なくらい彼は真っ赤になった。
「そ、ソンミナヒョン。お、はよう」
ふふ、どもってる。可愛い。
うろうろする視線を捕まえようと覗き込んでたら、
「メンバーしゅうごー!!」
トゥギヒョンの声に遮られた。
「行こ?」
「あ、う・・ん」
手をつないだら、いつもしてるのにちょっとぴくっとした。

収録の間、僕は隠れて笑ってばかりだった。
僕に肩を組まれては俯き、キュヒョナに絡まれては赤面して、ドンへに耳打ちされては涙目になる。
そんなヒョクチェが可愛すぎて。
ほかのメンバーに気づかれるよ?
リョウクだけは「ひょん熱があるの?」とか言って夕食の献立を考え始めて、気づきそうにないけど。

・・・多分ヒョクチェは、自分たちが一方的に聞いてしまったのか、僕らにも聞こえていたのか気になって仕方ないんだと思う。
それを確認するまでずっとこの調子なのは・・・可愛いけど仕事する上では困るかな。

嘘ついてあげるほど、僕は優しくないよ?
そっちに開き直ってもらわないとね。




一日の仕事が終わって、マネヒョンの車を待ってる控え室の中。
端っこでケータイゲームをしてるヒョクチェの隣に腰掛けた。

「ヒョク」
「あ、・・・な、に?」
呼んだのが僕と分かって身構えてる。
できるだけ近くに寄り添って、内緒話の形をつくった。
「ね、今度は一緒にえっちしよっか?」
「!!」
耳に吹き込まれた言葉に固まって、ケータイを落としそうになる。

「ひょ、ん・・やっぱ聞こえて・・・」
「うん」
にっこり、微笑んで頭を撫でてみる。
「すっごい可愛かった。ドンへが羨ましくなるくらい」
「う・・・」
また真っ赤になって、みるみるうちに涙が溜まってく。
「あ、あのね、からかってるんじゃないんだよ? 僕は嬉しかったの」
泣かせたい訳じゃないから、ちょっと慌てた。
いじめられてると思われたくない。
僕はキュヒョナとは違うもん。

「僕だってさすがに恥ずかしいんだよ? でも、ヒョクチェとだったらそれを共有できて嬉しい」
ね、だから泣かないで?
そう言って頬を撫でても一度ゆるんだ涙腺は止められない。
「ソンミナヒョン・・・」
うわーんと抱きついてきたヒョクチェを受け止める。

「ヒョクこそ、僕のこと見損なったりしてないの?」
僕は僕でそれがすごく怖かったりするんだけど・・・。
すると僕の胸に顔をうずめたままぶんぶんと首を横に振る。
「そんなことあるわけないじゃん。・・・ヒョンも、・・・可愛かった」
聞き取りにくい声でだけどしっかり否定してくれた。
・・・良かった・・・

「ひょくちぇー!!」
抱き合ってる僕たちを見つけてドンヘが駆け寄ってきた。
「来んなバカ!」
耳まで赤くしてヒョクチェはドンヘを蹴ってる。
やっぱり2人とも可愛いな。
僕が笑うと、ヒョクチェもまだ照れくさそうにだけど笑ってくれた。


とりあえずは、安心かな。
弟たちとの非日常で甘い時間は、思い出のひとつとして胸にしまっておいて大丈夫そう。
今度は一緒に・・・っていうのは冗談だけど、意外と悪くないかも知れない・・・なんて。
キュヒョナに話したらすぐ実行しそうだから、まだ黙ってようと決めた。


 
End...
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