LOVE RIOT ※
「やだ!! こっちこないで」
なんだよそれ、ヒドイなぁ。
部屋に逃げ込んだドンヘを追いかけてきたら、悲鳴みたいな声を出された。
俺は困って、ボブのかたちに揃えられた黒髪をちょっと引っ張る。
本来の髪じゃない。
俺が『女装』をすると、だいたいこうだった。
ただの変装なら平気なのに。
「面白いじゃん。なんでそんな嫌なの」
空港にいるあいだもこの調子。
できるだけ俺と目が合わないように、メンバー誰かを盾にしてばっかり。
「はやく化粧落としてよー!!」
やっと腕を捕まえたら、文句を言う。
確かに化粧はしっかりしてる。
真っ赤に塗られてる唇を尖らせた。
「お姉さん悲しいわ」
ふざけて裏声を出してみる。
からかってくれたら楽しいのに。
シウォンにどれだけ絡まれても、口紅をつけてる間は助けにきてくれない。
「だって・・・・」
俯いたまんまのドンヘがつぶやく。
「ヒョクチェ女の子じゃないじゃん」
「・・・そりゃ、そうだよ」
なにを言ってるの。
しかもそんな大真面目に。
「だから、悲しくなっちゃうんだもん」
・・・・よく、わかんない。
ドンヘの言葉は抽象的で、解読するのが難しい。
それでも俺はみんなよりはわかるほうなんだけど、今日は無理だった。
じっと見つめられて、その表情に思わずドキっとする。
そんな雰囲気でもないじゃん。
自分に突っ込んでみたりして。
「やめてくんないなら、しちゃうから」
「・・・・・なにを?」
綺麗なかたちの目をちょっとだけ細めて。
ドンヘが言うこと。
予測がつかなくてぽかんと口を開けてしまった。
「女の子、あつかい」
ドンヘはごく柔らかい仕草で、俺の髪を梳く。
ぞくっと、してしまった。
ニセモノの髪なのに。
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