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背中を押しつけた壁に、俺の温度が移っていく。
立ったまま正面から抱え込むみたいに、体と体に隙間をなくして。
ドンヘは俺をゆっくりと犯していた。

息を殺すために、ドンヘの髪をかき混ぜて気を逸らす。

「ヒョク・・・」

呼ぶなよ、惑わされる。
結構俺、頑張ってるんだから。

ざあざあ、シャワーが立てる音だけを隠れ蓑にして。
それでこれだけのことを耐えるのは大変なんだからな?

「・・・ッ!! んッ・・ぁ・・ッ」

ふわあっと目の前が一瞬白くなる。
さっきから軽くだけど何度もこうして波が来てる。
いつイッてるのか、自分でももうよくわからない。

「あの店の子、お前どー思う?」
「えーなに、お前狙ってんの」

あの人たちはまだそのあたりにいるみたいだ。
汗を流すだけならもう終わっただろうに、入り口のベンチにでも座ってるんだろうか。

お願い、はやくどっか行ってよ。
こんな異常事態、怖くてたまらない。
なのに、怖いと思えば思うほど、体の奥が過敏になる。

「ねえ・・・、・・ッすっごいんだ・・けど・・・」

ドンヘが息だけで呟く。
俺が一番知ってるよ、すごいのは。
差し込まれたドンヘのものを、何度も思いっきり締め付けてる。
それはわかってるんだ。
どうしようもないだけで。

「ん、あッ!!・・・、く・・・ッ」

奥まで突き立てたまま、内壁を擦られる。
閉じ込められないぶんの声が、がまんの隙間を摺り抜けた。

「・・・・なあ、今変な声しなかったか?」

そんな言葉が聞こえて、背中に一気に冷や汗が浮かぶ。
しかもドンヘはほんのすこし腰を引いただけで、律動をやめる気配はない。
ドンヘだって、彼らの声は聞こえてるはずなのに。

「・・・ッ・・ッ!!」

きりきりと後ろの壁に爪をたてて、かろうじて飲み込んだ。
気が遠くなりそう。

「そうか? あっちのベンチプレスの人たちじゃね?」 
「そうかなぁ、なんか近くから聞こえた気がすんだけど」

一瞬訪れた静寂。
自分の鼓動が響いて、聞こえちゃうような気がする。

「気のせいだろ。それより、とりあえず俺腹減ったー」
「俺も。じゃあ、ぼちぼち飯行くかー」

彼らは会話を交わしながらようやく、足音を遠ざける。
通路に続くドアの閉まる音。
安堵がまた、涙を呼ぶ。

「ヒョク・・・、出して・・いい?」
「ん・・、ん・・ッ、はや・・く・・ッ!!」

限界なんてものはとっくに超えてる。
今のうち、今のうちに。
また誰かの鼓膜に怯える前に、終わらせて。
催促する粘膜が、またドンヘの熱を締め付けた。

「あッ、なんか・・だめだ・・・ッ」
「ひッ・・ぁッ・・、・・ッ・・~~~ッ!!」

前触れみたいにふるっとドンヘの体が揺れたあと。
どくどくと俺は打ち抜かれる。

シャワーの温度が上がったかと思った。
ふわふわと白い靄が目の前を覆い尽くして。
そのまま落ちていく意識を、追いかける気力なんて俺にはなかった。


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