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瘡蓋 ※







こくん。
舌に広がる味に目を細める。
仕事で先に出かけたヒョクが、残してったいちごミルク。

バランスがヒョクそっくり。
甘いのに酸っぱいなんてさ。

そんなコトを考えながらゆっくりゆっくり舐めていたら。

「おはようございます、ドンヘヒョン」

コーヒーの香りをさせて、キュヒョナが正面の椅子に腰掛けた。

「おー。オハヨー」
「あ・・・ちょっと、よくなったみたいですね」
「? なにが?」
「怪我ですよ。左手」

まだ熱そうなカップの中身を啜りながら、キュヒョナは指先だけでちょこんと触れた。

へえ、なんか意外。
気にしてたんだお前、俺の怪我のこと。

ちょっと失礼なことを考えて、ぐーぱーぐーぱー握ったり開いたりしてみる。

「そうみたい・・・」
「・・・・・・・嬉しくないんですか?」
「うん、残念。治りたくないなぁ」
「なんですかそれ」

あれから一週間もしたから、さすがに腫れも引いてきた。
触ってもほとんど痛くもない。

あーあ、なんで人間の治癒能力ってこんなに優れてるの。
一ヶ月くらい、ずっと治んなくたってよかったのに。

「きっかけっていうかさ、そういうのってあるじゃん」
「はい」
「そういうのだったの」
「はあ・・・」

キュヒョナの頭の上にハテナマークが出てる。
説明してもいいんだけど、あんなエロくて可愛いヒョクを言葉にできるかな。

ああ、思い出したらヤバイ。
微かに残る瘡蓋を眺めていたら、表情筋が緩んできた。

「その話、しないほうがいいよキュヒョナ」

ふいに、高くて響く声。
朝食を乗せたプレートを抱えて、リョウクがこっちを見てる。
見覚えがある気がする冷ややかなその視線。

「ドンヘヒョン、お顔が乱れてますよ」
「そお?」
「早くご飯食べて上に帰ってください」
「食べるけど、話し相手してよ」
「イヤです」

リョウクはにっこり笑って小首を傾げて。
可愛らしい仕草なのにバッサリ言い切った。

・・・この子冷たい。
こないだからやけに俺にだけ。

「リョウガー」
「口は食べるために使ってくださいね」

呼びかけてもかぶせ気味にピシャリと言われた。
こういう空気に負けないコトは出来るけど、今は行使しないほうがよさそうだ。

もさもさご飯を食べながら、俺は珍しく黙ってみる。
心なしか、さっきよりいちごミルクが酸っぱい気がした。





End....
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