瘡蓋 ※






「・・・ふ・・ッあ!!・・ッ」

生ぬるい風に乗る途切れた呼吸。
苦しいのかなヒョクチェ。

「へいき?・・ねぇ・・」
「あ!!・・深く・・なっちゃ・・うッ、ダメ・・・ッ」

後ろからぐっと身を乗り出して問いかけたら、そんな風に言われた。
深いののどこが駄目なの。
ヒョクのなかだって悦んでる。
またきゅっきゅってしてるもん。

「すっごい・・きもちい、ヒョク・・・」
「ひぁッ!!・・ダメだってッ・・声、でちゃ・・うぅ」

声?
ああ、そういえばそうだった。
ヒョクチェの腰を掴んだまま、俺は夜景を見下ろした。

湿気をはらんだ空気は、紛れもなく外気。
高層階だし、誰かに覗かれるってことはないだろうけど。
ホテルのバルコニーは、声を聞かれるって可能性は高いかもね。

「今日隣の部屋、誰だっけ?」
「・・キュヒョナ・・だよッ・・・、あいつ耳いいんだか・・らッ」

ああ、そっか。
それはキケン。
一番弱み握られたくないのがマンネってのも、おかしな話だけど。

「じゃあ、ガマンしないと・・ね?・・ヒョク」
「ムリ・・ッ、部屋はいろ・・よぉッ」

せっかくこんな奥までヒョクのなかに埋まってるのに。
一瞬でも離れるなんて勿体無い。

「えー、頑張ってよ」
「ドンヘが・・ッ、緩め・・ろよッ」
「それこそムリだよ。良すぎる・・もん」
「あ・・ッ待って・・てばッ」

大きくグラインドしたら、ヒョクの脊椎が震えた。
ホントに限界そう。

あ、だったら・・・こうしよっか?

「噛んで、いいよ」
「ん、ぅッ」

俺は左手をヒョクの口内に押し込んだ。
噛み付けるものがあれば、ちょっとは抑えられるでしょ?

「じゃあ、いっかいイクね?」
「ん、んぅぅ~ッ!!」
「う・・、ひょくぅ・・」
「ッ、・・・ッ・・くッ・・ふ・・・ッ」

そうしておいて、右手でヒョクの腰を引き寄せる。

ぐっぐっと押し込むたびに、閉じ込められる悲鳴。
おんなじリズムで、ヒョクの犬歯が俺の手の甲に食い込んでいく。

痛い。
痛いけど、それがヒョクの応えのような気がして。
別にMじゃないのに、そんな痛覚がさらに俺を焚きつける。

「もっと・・噛んで? あ、イク・・よ・・ッ」
「んッ・・んんぅ~~~ッ!!!」

ヒョクの声を閉じ込めときながら、思わず俺が叫んじゃいそうだった。
目が回るような快感に飲み込まれる。
俺は迷いもせずにヒョクのなかにぜんぶを注ぎ込んだ。

ギリギリ、音がしそうなほど左手に噛み付かれながら。



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