lovely day ※
ぺたぺた。
銀色のパッドが俺の体を行ったり来たりする。
「楽しいですか?」
「うん、楽しい」
やわらかな部屋着を纏ったソンミナが頷く。
ナース服は散々に汚れてしまったから、すでにごみ箱のなか。
流石に洗濯に出したら、寮母さんの心臓に悪いだろう。
おおいに、もったいないですけどね。
「よく聞こえます?」
「うん、体に反響してるみたい」
聴診器を手に、ソンミナはなにやら一生懸命俺のあちこちにそれを当てている。
こうして見ると、後悔します。
ナース姿だった時に、オプションにしてもらえばよかったって。
お互い限界まで絞り出して、気だるさにまかせて微睡んでいたら。
ソンミナが棚からはみ出したそれを発見した。
ドンヘヒョンが返してきた聴診器。
探して注文してあげたっていうのに、あっという間に俺の手元に戻ってきたんだった。
おおかた、ヒョクチェヒョンになにかしら言われたんでしょうけど。
俺が存在を忘れていたそれを、ソンミナは嬉々として摘みだして。
さっきから飽きずに遊んでいる。
「・・・お腹とか鳴ったら恥ずかしいんですけど」
「あはは、そうかもね」
「朝ごはん食べましょうよ」
「んー、もうちょっとだけー」
そんなに面白いものですか?
名残惜しそうにしている様子を見てそんな風に思う。
「・・・ヒョンってば」
「うー、じゃあ少しだけ・・・さ・・・」
「なんですか?」
せめてコーヒーくらい飲みたい。
急かすように呼びかけると、ソンミナは何度か視線をうろうろさせてから。
「歌って?」
上目遣いでポツリとこぼした。
その目に俺が抗えないのを、きっと知り尽くしているでしょう?
ため息が出るような、だけどふわっと胸があったかくなるような。
不思議な気持ちになって、何秒か間抜けな顔をしてしまったかもしれない。
「・・・・・・1曲だけ・・ですよ」
仕方がないなって表情を作りながら答えたけれど。
思考回路はもう、歌う曲を必死にサーチしている。
「うん」
幸せそうに微笑んだソンミナを見て、俺は決める。
反響したらきっと綺麗な、一曲を。
End....
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