lovely day ※
「キュヒョンさん、どうしました?」
ベッドの横に立ったソンミナが、俺を覗き込むようにしている。
すこしだけ高めに作った声。
労わるようなその表情。
ソンミナはあっという間に世界に入り込んだ。
さすが俳優業も好きだと言うだけある。
「最近、寝付けないんです・・・」
ベッドボードに寄りかかって、俺は困ったような声を出してみる。
実際困ってます。
自分で仕掛けておいて、早く触りたくなっちゃって。
「お熱ですかねー。ちょっと測りますねー」
「はい」
こつんとおでこを合わせる。
体温計、使わないんですか?なんて言葉は飲み込んだ。
至近距離すぎる場所で目が合うと、ソンミナはふわっと微笑む。
「大丈夫みたいですね?」
おでこを離してぽんぽんと軽く叩く。
子供を相手にしてるような仕草だけれど、ソンミナにされるとむしろ心地いい。
だけど、だからと言って和んでしまうワケにはいかないですよね。
「熱はないですけど、苦しいんです」
できるだけ眉を下げて見つめる。
ソンミナはつられて泣きそうな顔になった。
「足の経過はいいはずなんですけどねぇ。なんでしょう・・・」
どうやら俺は足を怪我して入院してるコトになってるらしい。
そのあたりはお兄様にお任せしますよ。
「あなたの所為ですよ」
男子にしては柔らかい手のひらが、さりげなく太ももに置かれている。
すこし不安そうにして、ソンミナは俺を見つめた。
「・・・どういう、意味ですか?」
揺れる瞳。
本当に動揺しているみたいだ。
「あなたを見ていると、気持ちが乱れるんです」
実際もそうですけど。
仕事中は目で追うと危ないから、わざと避けているくらいなのに。
でも今はソンミナの、困ったようなその演技が気に入って。
これ以上ないくらい強く、まっすぐに視線を捧げた。
「あの・・・キュヒョンさん・・・」
「どうして患者を惑わせるんですか?」
「惑わせるなんて・・・そんな・・」
「眠れないんですよ、いつも」
距離を詰めるほどに多くなるまばたき。
それでも、手のひらは逃げない。
ああ、本当は期待している感じ、よく出ています。
「責任、取ってください」
耳のすぐ横まで辿りついて、そう囁いた。
ふわっと赤くなる首すじ。
展開が、わかってきたんでしょう?
「責任・・ですか・・・?」
「はい。・・・どうにか、してください」
「どうにかって・・・あ、あの・・・ッ、ん・・ぅ」
手首を掴んでぐっと引き寄せた。
こちらに倒れ込んだところを捕まえて、素早く唇を奪う。
驚いて震えた3秒。
でも、それだけ。
すぐに力が抜けて、甘い舌が絡みついてきた。
これって、反射的にですよね?
演技をしなきゃいけないのに、ダメな人ですね。
「んッ!!・・ふ・・・ッ」
晒されてる素肌の部分を滑って、足の付け根あたりを撫でた。
スカートでしかも丈が短いというのは、便利だ。
やたらと敏感な反応がかえってくる。
舌が結ばってしまいそうなキスをしているからですか?
それとも、患者に犯されるナースの役に溺れているからですか?
どちらにしろ、いやらしいです、相変わらず。
「解放・・してくださいよ」
「・・ん、・・かい・・ほう?」
「あなたのせいで溜まったものを」
「え、・・・あ・・?!」
もう熱を持ちはじめたものを、ソンミナに押し付けた。
騎乗位でもしているような体勢だから、ちょうどイイところに摩擦が起きる。
「あ、あ・・あ・・・ッ」
あなたが楽しんでどうするんですか。
そんなことを思いつつも、早くも溺れていく様子には満足。
「ねえ、その口で・・・してください」
「う・・、は・・い」
マシュマロみたいな唇をつつく。
ソンミナはほとんど目を閉じたまま頷いて。
条件反射かと思うような動きで、俺の下半身に向かって顔を近づける。
するするシャツやら下着やらを寛げて、そのままぱくっとかぶりついた。
「ぅ・・・あ・・」
「ん・・・・・む・・ッ・・ッ」
思わず腰が揺れた。
その動きで喉の粘膜を擦られたソンミナがうめく。
鼻にかかった声が甘えてでもいるようで、脳が痺れる。
「・・・あんまり、強くしないでください・・・」
だって、予想よりはるかに暴発の近くにいる。
そう告げて耳のあたりを撫でると、ソンミナはふっと視線を上げた。
にっこりと、半月型に笑みの形を作る目。
『白衣の天使』が、一瞬で妖艶さだけを纏う。
よくしてあげる。
そう言われたような気がした。
「・・ッ、ふ・・ッ・・ッ」
飲み込んでしまいそうに吸い付かれる。
強くしないでと言ったのに、かえってそれが火をつけてしまったようで。
「あ・・ちょ・・、待ってくださ・・」
シーツを掴んだ俺の指先を見て、ソンミナは再び微笑んだ。
これ以上惑わせないでくださいよ。
もう、知らないですからね。
「ん、ん・・んーッ」
「う、・・・あ、あ・・・」
俺の反応を楽しんでる気がしてちょっと悔しいから。
わざと声をかけないで放ってしまうことにした。
「・・・ッ?!・・ん・・ッ・・ぐッ!!」
解放されたがる体に任せて、なんのブレーキもかけない。
ソンミナの口のなかに、思いっきり流し込む。
注ぎ込まれたソンミナは、一瞬だけ眉をしかめたけれど。
すぐに懸命に嚥下をしはじめる。
「は・・あ、・・・いい子ですね・・」
「ふ・・・、いっぱい・・でした」
端から零れそうになるのを舐めとる赤い舌。
上気した頬が、笑ったことでぷくっと膨らむ。
可愛らしさといやらしさが綯交ぜになって、俺の理性を壊しにかかる。
すぐにでも突っ込みたくなるのを、抑えるのに苦労した。
「・・・でも、足りないです」
「あ、・・キュヒョンさ・・・ッ」
ソンミナの肩を軽く押して、そのままぐんっと体勢を変える。
覆いかぶさるようにしてから、まっすぐに見据えた。
「抱いていいですか?」
普段はお構いなく始めてしまうのに。
こうやってわざわざ聞くのも、悪くないですね。
万が一イヤがられたらどうしようなんて、うっすら考えてみたりして。
「・・・・・・はい」
たっぷり10秒もかけて服の襟をいじったあとに。
ソンミナは観念したように返事をした。