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聞くよ、君を。 ※





「・・・・・・あのさ」
「はい、なんですかヒョクチェさん」
「おかしくない?」
「なにが?」

ヒョクチェはちょっと不服そうな顔をしている。
シャツのボタンをプチプチと外しながら。

「風邪ひいてる人がなんで、医者役なワケ?」
「ヒョクが俺のこと診てくれんなら逆でもいいよ」
「うー、なんか・・・それもイヤなんだけど」
「じゃあいいじゃん。ね? こないだはちゃんと出来なかったしー」

キュヒョナがなぜか代わりに注文してくれた、真新しい聴診器。
でもってついでに伊達メガネ。

俺はもうお医者さんになる準備はできてるよ。
患者役のヒョクはまだ、全然イ・ヒョクチェのまま。

まあ、患者さんだから、別に素でもいいんだけど。
ドンヘ先生が、優しく診察してあげるからね。

「なんだか・・・腑に落ちない気がするんだけどな・・・」

ボタンを外し終わったシャツの裾をつまんだり離したり。
ヒョクは落ち着かない感じでぶつぶつ言ってる。

腑に落ちないなら、落としてあげる。
ヒョクならきっと、こういうのすぐ夢中になってくれるから。

「はい。心音聞きますから、胸あけてください」
「・・・え・・、あ・・の・・・」

トーンをすこし下げて喋ってみた。
まだイマイチついてこれないヒョクが、戸惑いそのままの声を出す。

「ほらヒョク、患者さんでしょ。先生にみせないと」
「うー・・・」

耳元に説得の言葉を吹き込んでみる。
そしたら伏し目がちに視線を逃がしながらでも、ヒョクはシャツの合わせを寛げた。
俺は内心嬉々として、聴診器を耳に差し込む。

「はーい、じゃあ心音聞きますねー」
「・・・は、はい。・・・ッ」

ペタリと胸に押し当てたら、返ってくる冷たかったような反応。
でもさ、それってよく似てる。
俺に触られて気持ちよくなっちゃう時と。

「随分早いですねぇ」
「・・・ッ、ぁ・・・」
「どくどくいってますよ、ヒョクチェさん」
「ちょ・・・、なんか、違うッ」

ふつふつ湧いてきた悪戯心に突き動かされる。
聴診器を移動させるたび、かすかに乳首を擦ってみたりして。

「どうしました?」
「ちゃんと・・・しろよッ!! ドンヘ!!」
「診てますよ。しっかり、ね?」
「うそ・・つけッ!! んんぅッ、や!!」

体温に馴染んできた銀色のパッドを、すこし強く押し付ける。
聴診器を通って増幅して俺の耳に届く、音。

「爆発しちゃいそう・・・心臓」
「ん・・、ふ・・あッ」

耳に響いてくる鼓動は、こっちが引っ張られそうになるほど大きくて早い。
俺が触ってることでこうなってるかと思うと、それだけで感動するのに。
抑えきれないらしい声が、甘く響いて脳を直撃する。

まだ段階としては序盤だっていうのに、頭がくらくらしてきちゃった。
なんとかしなくっちゃ。

「触診も、必要ですね」
「必要・・な、いッ!! ばか!!」
「遊んでくれるって言ったじゃん、ヒョク」
「あ・・、う・・・」

忘れてたって顔をしてヒョクは俺を見る。
ヒョクもたいがい抜けてるよね。
言ったら怒るだろうから言わないけど。

「ね? ヒョクチェさん、触診も受けますよね?」
「・・・・・・ッ、ん、ん・・」

ちょっとだけ後悔してる目をして、ヒョクはものすごいちっちゃく頷く。
こういうのが照れくさくって気が進まないだけで、ホンキでイヤじゃないのはわかってる。

溺れちゃえばもう、そんなの飛んでっちゃうんだから。
そこまで早く連れて行ってあげるね。


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