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聞くよ、君を。 ※




「うわぁ!! ヒョク、だいじょぶ?」
「うー、濡れたあー」

俺のマンションにやってきたヒョクチェ。
突然降り出した雨に打たれて、びしょびしょになっちゃってる。

「だから車だすってゆったのにー」
「だって近かったから、散歩がてらと思って・・・、あ、こら!! 抱きつくな!!」

シャツが張り付いて細い体の線が浮き彫りになってる。
可哀想になって、なにも考えずに抱きしめた。

「冷たい・・・」
「あーあ、ドンヘまで濡れたじゃん」

うん、そうだけど。
いいよそんなの。

ヒョクチェとおんなじでいたいんだもん、いつだって。

「ドンヘ・・・、離れろってば」
「やだ。ヒョクに体温分けたげるの」
「風邪、ひくよ」
「一緒にひいちゃおうよ」
「そんなの、ダメだって・・、ッん」

下がった温度のぶんを上げたくて、できるだけ密着したまんまで。
ちょっとだけ青くなりかけてる唇に吸い付いてみる。
ふわんって、血色がよくなった気がして、俺は気をよくした。








                    *






「・・・・・・37.5℃」
「それって高いの?」

ピピピって電子音がなった体温計をヒョクが読み上げる。
言われた数値にピンとこない。

「お前平熱いくつ?」
「ヘイネツ? 知んない」
「・・・それじゃハッキリわかんないけど、まあ・・・微熱ってとこかな」
「そうなんだ。なんか酔っ払ったみたいな感じしかしないんだけど」

ヒョクはちょっと怒ったみたいな顔になる。
いささか乱暴におでこに手を当てられた。
すこしひんやりしてて、気持ちいい。

「ばか、なんでお前が風邪ひくわけ」
「ヒョクの代わりに引き受けたと思えば嬉しいよ」
「俺はどうしたらいいんだよ、そんなの」
「どうもしなくっていいよ、そばにいてくれれば。ね?」

当てられてた手を取って、その甲のところにキスをする。
ぱたぱた忙しなくまばたきをして、それからヒョクはうつむいた。
照れてるのかな、可愛い。

「そばにっていうか・・・、明日もこっからのほうが近いし・・・」
「うん。泊まっていくよね」

そんなごにょごにょ言い訳しなくたって、いつでも来ていいのに。
いっそ住んだっていいし・・・、いや住んでるみたいなもんか。
そのために買った場所なんだからね。

こくん、ちいさく頷いてヒョクは俺の手を握り返した。

ヒョクチェと今夜も一緒にいられる。
だったら風邪なんてきっと吹っ飛んじゃうよ。

・・・・・・あ、でも待って。
にっこりと口角を上げかけたところで、ふと俺は思いついた。

「ねえ、ヒョク」
「なに?・・う、わ」

ぐんっと力を込めて引き寄せる。
ヒョクはバランスを崩して俺のベッドに倒れ込んだ。

「俺が元気になるように、俺と遊んでくれる?」
「遊ぶ? ・・・別に、いいけど」
「ほんと? 約束だからね」
「え、う・・うん・・・」

約束ってコトバにすこしだけ戸惑ったように。
ヒョクはまたまばたきを繰り返したけれど、確かに首を縦に振った。


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