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ねこのからだ ※






カシャ、カシャ。

微かな機械の音がする。
なんだろう・・・
まだ全身がだるくて仕方ないのに。

「・・・ん・・」

近くの体温に擦り寄った。
心地いいあったかさに安心して息を吐く。

カシャカシャカシャ。

例の音がさっきより慌ただしくなった。
聞き覚え、あるんだけど・・・
なんの音だっけ?

・・・・・・カメラ?
頭のなかで電球が光る。
きっとそうだ、シャッターの音。

だけど、なんで?

重りがついてるみたいな瞼を、なんとか持ち上げた。

「・・・ん・・、う?」

目前にレンズ。
一眼レフのごっついやつ。

「おはよう、子猫ちゃん」

カメラがひょいっとズレて現れたのは、余計なほど整った顔。

「・・・シウォナ?」
「やっと目が覚めたか」
「・・・ん、おは・・・」

挨拶を返しかけて、思い出した。
今の自分の状況を。
だって、子猫ちゃんって・・・

がばっと耳を押さえる。
もちろん遅すぎるわけだけど。

「うー・・・」

俺が急に動いたせいで、くっついてたドンヘに肘がぶつかる。
唸るドンヘを見て俺はさらに焦る。

「あ、あの・・・えっと・・」

こんな状況を説明できるはずない。
まだ脳みそはうまく回らないんだ。
意味のない言葉だけを並べながら、片手ずつで自分とドンヘの頭を押さえた。

「可愛いな、予想通り」

そんな俺を見てシウォナはおかしそうに笑った。
可愛いとかゆってるけど、どっちかっていうと面白がってないか?

ってか、予想通りってなんだよ。

「どーゆー意味?」
「『願いごと』したのは俺だから」
「・・・?」

よくわかかんない。
いい加減働けよ思考回路。

「ちょっと情報をもらったものだから。うちの末っ子に、ね」
「・・・末っ子?」

キュヒョナか!!
俺たちのこの妙な現象を知ってるのはあいつだけだ。
知ってるというか、バレちゃっただけだけど。

でも、誰にも言うなよって、ゆっといたのに!!

「あっちで有名な教会に行く機会があって。試してみたんだ」

個人活動が一番多いシウォナ。
そういや昨日帰国したばっかだった。
忙しいんだろ?
過密スケジュールなのになにやってんだよ。

「楽しみに帰って来て良かった。いい画が撮れたよ」

カメラを掲げて、パチリとウインクして見せてくる。
星でも飛んできそうな完璧な仕草だけど、そんなことされても困る。

「んー、ひょくぅー」

ドンヘがもぞもぞ動いて俺に密着する。
長いシッポごと絡みつかれて、俺は動けなくなった。

「ちょ・・、ドンヘ・・・おい!!」
「お、いいな。そのままくっついてろよ」

あっちからこっちから、シウォナはやたら立派なカメラを向けてくる。
キュヒョナといいこいつといい、なんでこーなんだよ!!
早く起きあがって、せめてこの耳とシッポを隠したい。

「離せってばドンヘ!! このアホ犬!!」
「うー・・・好きー、ヒョクー」

ふにゃふにゃしながら、ドンヘは結局さらに俺に巻きついた。
聞かれてるんだぞ!!
好きとかゆーな、恥ずかしい!!

「ね、寝ぼけんなよ!!」
「なに怒ってんのー? まだ足りなかったのー?」
「な・・・ッ、・・・んなワケないだろ?!」
「んー、うむー」

このままだときっと、余計なことばっか喋る。
黙らせたくて口を塞いでみた。
それでもドンヘはまだろくに目も開けずに、くすくす喉の奥で笑う。

「そうか。子猫ちゃんは欲張りなんだな」

相変わらずなスピードでシャッターを切りながら、シウォナが呟く。
否定したじゃんか!!
ちゃんと聞けよお前も!!

「もー、やーだー!!!」

俺の叫びは、シウォナのレンズにどんどん吸い込まれていった。




End....
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