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ねこのからだ ※






「こらー!! ドンヘー!!!」

ニット帽を深くかぶって、俺はドンヘの部屋に乗り込んだ。

「・・・んー?」

布団のカタマリからうなり声が聞こえる。
すっぽりかぶってしまってて、足の先くらいしか見えない。

「ドンヘ!! 起きろ!!」

ぼふぼふ、背中のあたりかなと思うところを叩く。
でも、もういっかい眠たそうな声が漏れただけ。

「もー!! 起きろってば!!」

チカラ任せに布団を剥ぎ取った。
ちょうど押さえてなかったみたいであっさり成功。

でも・・・

現れたドンヘの姿に、俺は一瞬固まった。

「んんー? ひょくー?」

まぶしそうに目を擦るドンヘの頭の上。
ぴくぴくとちいさく揺れてる、見覚えのある耳。

「お前もかよおおお!!」

思わずガックリ、ドンヘの横に突っ伏した。
その拍子に外れるニット帽。

猫にそっくりな耳が、困りきって垂れた。







                   *





「かーわーいーいー!!!!」

でっかい目をキラキラさせるドンヘ。
起き抜けとは打って変わって、すっごい元気になった。

「るっさい!! 騒ぐなよ!!」

落ち着かなそうにしてる膝を押さえる。
でも、ドンヘの気分が有頂天なのがよくわかる。

だって、その後ろでばったばたシッポが揺れてるんだもん。

「またネコちゃんヒョクが見れるなんてぇぇぇ」

俺の腰のあたりにタックルしてきた。
そんなコトを言ってる自分はワンちゃんのくせに。

朝起きたらこうなっていた。
身に覚えのあるネコ耳とシッポ。
俺はあの時とは髪の色が変わってるんだけど、なぜかちゃんとお揃いの色になってる。

寝ぼけて危うく、鏡見ないままリビングに出るトコだった。
ギリギリで気がついてよかったけど。

「またなんか、余計なお願いごとしたんだろ?」
「えー、ちがうよ。俺なんもしてないもん」
「ホントだろうな。嘘ついたら知らないからな」
「ホントだよー。またなったらいいなとは思ってたけどー」

やっぱり思ってんじゃん!!
でも、さすがにドンヘがそう思っただけでこうなっちゃうなんてことはないだろう。

しかもドンヘが原因なら、ドンヘまで犬になってる理由がつかない。
どうやら俺だけなったらいいと思ってるらしいから。

「じゃあなんで?」
「なんだろうね。なんか風邪みたいなもんなのかな」
「そんなコトあってたまるか!!」
「だってわかんないもんー」

演技をしてるとも思えない。
ドンヘがなんかしたんじゃないのは確かみたいだ。

「お前、今日仕事は?」
「ラジオの手伝いと打ち合わせ。撮影とかないからだいじょぶだよ」
「そう・・・。俺もバラエティーだから、なんとかごまかせる」
「そっか、よかったー」

にこにこしてるドンヘ。
今日だけで済むかわかんないし、とりあえずの安心なんだけど・・・
屈託のないその顔を見ていたら、まあなんとかなるかなーなんて。

ドンヘの能天気は見事なくらい俺に伝染った。



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