My Faithful Dog ※



「あ!バカ、そこじゃないって」
「え?ここ?」
「ダメだってば! 動かないで!」
「そんなん無理! あ!・・・・」
「・・・・・あーあ・・・」

コントローラーを握り締めたドンヘがガックリ肩を落とす。
できないなら俺のセーブデータでやるなよ!
恨みを込めてばしばし背中を叩いてやる。

「ヒョク聞いて! 俺これの1はちょー得意だったんだよ?!」
「もう3だもん。難易度上がってるし」
「でもさー、できるって思うじゃん・・・」
まだぶつぶつ言ってる。

仕事がいつもより早く終わって、みんなは食事に出かけてったけど俺はなんだか騒がしいとこにいたくなかった。
トゥギヒョンに宿舎に帰ると言ったら、ドンヘもなぜかついてきて。
宿舎全部使えるというのに、結局俺の部屋に篭もってゲーム三昧だ。

「ヒョクにカッコイイとこ見せたかったのにー」
「・・・・・ゲームでカッコイイとこって・・・」
またさらっとちょっとだけ嬉しいことを・・・
でも素直には言えない俺。
イヤ、ホントに、ゲームでカッコイイとか意味不明だしさ!!

「もー! やめた!!」
「こら、投げんな」
「おとうふくんゴメンねー」
「ぶふッ」
コントローラーをぶつけたぬいぐるみに、謝りながら撫でたりするから笑ってしまった。

「ついでにヒョクも撫でたげるねー」
「な、んでだよ」
整った顔をくしゃっとして微笑むその表情に、実は俺は超弱い。
しかも、思い上がりじゃなければ、その顔・・・俺専用だったりする?
でも、なんだかくすぐったすぎて、いつもはぐらかしてしまう。

「ゲ、ゲームやめんなら、なにする?」
うう、ちょっと動揺してしまったかも。
「・・・・なに、しようか・・・?」
・・・・あ、ドンヘを纏う雰囲気が変わった。
髪を撫でる動きがゆっくりになって、俺を見る目が・・・なんというか、色っぽいというか。

「え、えと・・・」
「ヒョク」
「な、に?」
「キスしていい?」
「い、いちいち聞くなよ」

また言いよどんじゃった俺にふと目を細めて、ドンヘはゆっくりと唇を重ねてきた。
触れる瞬間はまだ震える。
「ん、・・・ふ」
滑り込んできた舌にどんどん惑わされる。

そのまま座っていたベッドに押し倒された。
ドンヘの重みなんて、昔からよくじゃれてて知ってるけど、この状況だとなんか・・・
心臓がバクバクいってる。
この空気が醸し出す予感に。
キスに酔いながらも内心戸惑いまくっていた。




                    *


ドンヘの部屋で気持ちを伝え合ったあの夜。
同室のトゥギヒョンが帰ってきていたから、ただ抱き合って眠っただけだった。
それでも、頭がぼーっとしちゃうほど幸せだった。
今まで以上に愛しそうに見つめてくれる眼差しが嬉しかったし。

でも、やっぱり恋人同士になったわけじゃん。
ステップってものが・・・あるじゃん。

階段を上がりたそうなドンヘと、気恥ずかしいし自信もなくて足踏みしてる俺。
当然足並みは揃わない。
ことあるごとにしかけてくるドンヘを、必死でごまかす日々だった。
キスだけで留まれてるのは・・・俺の頑張りか・・・ドンヘの優しさか。

そんな日常ももうすぐ一ヶ月。
お互いの個々の仕事もあったから、すれ違いの時期だったのもある。
それも最近ではまたみんなでの活動が始まって・・・

限界っぽい顔をされて、切ない想いをしてる。
でも、分かってるけど、踏み出せない。

死ぬほど女のコにモテるドンヘが、俺なんかでホントにいいのかな。
やせっぽちで柔らかいトコがない体。
前にキュヒョナに抱き心地がよくないって冗談で言われたのを、実は気にしてる。
心ばっかり女々しくてイヤになるよ・・・

ごめんね・・・大好きなのにね・・・



                  *



しかし、困った。
今日はごまかす術が、ないじゃん。

出る前にソンミナヒョンがワイン飲みたいって言ってるの聞こえた。
食事といっても絶対飲み会兼ねてる。
まだまだみんな帰ってこないのは、分かりきってる。

どうしよう・・・
全然心の準備できてない。
メンバーが誰もいない宿舎にふたりっきりなのに、意識してなかった。
ああ、親友期間長いせいかな・・・いや、理由とか今どうでもいいし!
俺が頭をぐるぐる巡らせてる間に、ドンヘの唇が首筋に移動しようとしてた。

「あ、あの・・・ドンヘ・・・」
慌てて声をかける。
「・・・・・・いや?」
ゆっくり見上げてきたドンへの表情にドキっとする。
そんな苦しそうにしないで。

「・・・やじゃない・・・んだけど・・・」
それは前も言った。
いやなわけじゃない。
「出来るとこまでで、いいから・・・・ヒョク、お願い」
ついに、逃げれない時が来たかな。
「・・・う、ん・・・」

「ありがと、ヒョク大好き」
何でも許したくなるような笑顔でドンヘは言った。
うん、出来る限り頑張ってみる・・・

「・・・わ!」
そう思った矢先にびっくりしてしまった。
耳をゆっくりと噛まれたら、一瞬で体が震えたから。

「ひょく・・・」
「んッ・・・」
その位置でドンヘが呼んだりするから、なんか変な声が出そうになった。
まだこんなことしかしてないのに、やだな・・・恥ずかしい。

「怖いことはしないからね?」
もう、いいからそこでしゃべんな!
身じろぎしたら胸で押さえつけられる。
「い、言ってるコトとしてるコト・・・ちがう・・・」
「ちがくないよ。ヒョクがいやって言ったらすぐやめるもん」
俺の意思は尊重してくれるつもりらしい。

「じゃあ、もうやだ」
「うそ」
うん、まあうそだけど。
にやっと見上げたら微笑みで返してくれた。
「せめてもう少し、させて?」
まっすぐ見つめて言うもんだから、うっかり頷いてしまった。

再び塞がれた唇。
滑りこんできた舌が、さっきよりたくさん動きはじめた。
もうキスで俺が弱いトコは知られてる。
俺自身が知らなかったのに。
「く、ふ・・・ッ」
上あごの裏を舐め上げられると肩が跳ねた。

擽るみたいにそこばかり。
いちいち反応してしまう俺は、早くも混乱してきた。

「・・・・ッ!!」
と、甘い痺れが背骨を抜けた。
ドンヘも息を飲んだ気配。
動いた拍子におたがいのものが擦りあわされたから。
身長がほぼ一緒だから、ダイレクトに触れ合っちゃうんだ。

「んッ!! ・・・あ、あ!」
解放された唇から勝手に声が漏れる。
ドンヘったら、もうこんななの?
予想よりも高い熱が、その熱さを俺に移そうとしてる。
俺の肩にちょっと噛み付きながら、ドンヘは少し荒く呼吸する。

ぐりぐりされて俺もおんなじような状態になってきた・・・
下着に押さえつけられて苦しいくらい。
「ヒョク・・・ど、う?」
どうって・・・
き、きもちいい・・・けど・・・
「あ、つい・・・」
とてもじゃないけどそうは言えない。
言葉を変えてごまかした。

「・・・じゃあ、脱ごうか?」
「え?」
聞き返している間にもう下着ごとズボンが太ももまで下ろされてた。
ジャージだから楽なのもあるけど、すごい早業・・・
って感心してる場合じゃない!

ドンヘの視線が下に向かないように、何か言わなくちゃと焦って、
「お前も、脱げば」
・・・・わざわざ煽るようなことを言ってしまった。

「じゃあ、ヒョクが脱がしてよ」
「ええッ?!」
「そんなビックリするコトじゃないでしょ」
・・・・・うん、確かに。
親友期間はよく一緒にシャワー浴びたりしてたんだから。
そう、平気平気!

「ん、じゃ・・・やる」
半分言い聞かせながらドンヘのパンツに手をかけた。
時間をかけたくなくて一気に下ろそうとしたら、途中で引っかかる。
「う、・・・あ」
ドンヘが低く呻く。
何に引っかかったかは明白な訳で、呻きの意味は俺を赤面させる。

「ごめ・・・」
「慌てないで、だいじょぶだから」
優しく言われてひと呼吸。
今度は気をつけて下ろした。
ドンヘみたいにすんなりできないのがちょっと悔しい。

「ヒョク、そのまま・・・さわって?」
「う・・・ん」
失敗してしまったのが恥ずかしくて、なんかイキオイがついてる。
手を伸ばしてドンヘを握ってみる。

「あ!・・・う」
途端に漏れたドンヘの声にビクっとなってしまった。
こんなあついものだっけ?
手のなかで跳ねる感触が怖くて動かせない。
「ひょ、くぅ・・・」
甘い声でドンヘが俺を呼ぶ。
刺激してあげなきゃって分かってるけど、固まった右手は怖気づいたまま。

「うあッ?!・・・あ!」
焦れたのかドンヘが急に俺のをぎゅっとした。
ビックリして声が裏返る。
そのままゆっくり上下に動かされると、自分でするより何倍もの快感が走り抜けた。

「擦りっこ、しようか・・・?」
「うんッ、あ、あう・・・ッ」
ドンヘは低くて色っぽい声を出すのに、なんで俺はひっくり返った高い声になるの?
不安だし不満だけど、止められない。

戸惑っている間に、優しいけど確実な動きは俺を勝手に追い詰めてく。
ドンヘ、俺のことそーゆー風に触るのホントに初めて?
的確すぎて怖い。
上下する動きにたまに混じる、先端を撫でるような刺激がたまらない。

「ひゃ、あ!・・あ、あ、あッ!!」
どうしよう、こんな女のコみたいに声を上げて。
かろうじて手を離してはいないけど、ドンヘのをしてあげる余裕がない。

「ひょく・・・無理? 動かせないの?」
聞かれてうんうん頷く。
虚勢を張れる状況じゃないもの。
いっそ両手を口を塞ぐために使いたい。

「ん、じゃあ・・・こうしたげる」
「!! んんッ」
コロンと俺ごと横に転がったドンヘは、自分のと俺のを一緒に握りこんだ。
直接触れ合うとさらに熱くて、俺のは驚いたように跳ねた。

「や!・・・ああッ、擦んない、でッ」
一緒くたに刷り上げられるとホントにヤバイ。
腰のあたりがすごいムズムズしてきた。
ああ、早いとは分かってるけど・・・出してしまいたい。

「あッ、ひょく、待って・・・一緒に、いこ?」
「ふ、あ!」
そんなコト言ったって、そう言ってるドンへの声にも反応しちゃうんだけど・・・
どうしたら待てるのかわかんないよ。
とりあえず目の前のドンヘのシャツに噛み付いてみる。
意味あんのかな・・・

ちゅくちゅく、なんか水っぽい音が響いてる。
どんな状態なのか確認するのが怖い。
でも、その水気のせいでどんどん滑りがよくなってくのは明らか。
どっちがそれを出してるのかわかんない、この状況に頭がついていかない。

「も、だめ・・・ッ」
「待ってって、ば・・・あ、あ!」
腰に溜まった鈍い疼きが今にも爆発しそうで・・・
俺だって一緒にいきたい、けど・・・限界が近すぎる。

でもドンヘも追っかけてきてはくれてるみたい。
どくどく脈うつのさえ、触れ合ってるからわかる。

「う、・・・ひょく・・も、いいよ?」
許可を出されたからそのあとの大きなスライドに身を任せた。
「んあ!!・・あ、あああ!!」
ドンヘの首にかじりついてそれを迎えた。
「うあ、あッ!」
一瞬遅れてドンヘも白濁を吐き出す。
おなかのあたりまで熱い液で濡れてくのがわかった。

しばらくお互いの呼吸だけを聞いていたら、
「は、はぁ・・・ヒョク、ありがと」
まだ荒い息に混ざって聞こえるドンヘの言葉。
・・・・・俺、結局なんにもしてあげれてないのに・・・

そう言いたいけど、久々の強い快感の反動で瞼が重たくて仕方ない。
「・・・ご、めん」
ほんの少し唇を動かして、そう言うのがやっとだった。


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